建物で管理するゼンリン独自の「ZID」
地図情報の調査・製作・販売を行うゼンリンは、地図情報会社として日本国内最大手。自社で調査した情報を基にしてサービスを展開している。
「我々の地図っていうのは、実際に人が歩いたり車で通って道路や標識を確認したりしているので、そのぶん正確な情報を掲載しているというところに強みがあります」と、ゼンリン IoT企画部 IoTサービス企画二課 課長の椛 賢史氏は特徴を語る。
もともと地図情報というものは紙に印刷されており、それを人が見て利用するものだったが、近年はその傾向に変化がある。
椛氏は、「我々は長年地図の製作に取り組んできていますが、地図情報を絵的に人が見て使うというよりも、データ処理のために機械が読んで使うという利用へと大きく変わってきています。地図情報を下地として、そこにいろいろな情報を紐づけて活用していく。そのハブ的な役割をゼンリンが担っていけるように、データベースを整備する必要がありました」と説明する。
ゼンリンが提供する「ZENRIN Maps API」は、業務システムやウェブアプリケーションに地図を活用した機能を実装する開発者向けツール。各業界・業務と連携し、事業活動の効率化と新たな価値の創出を支援する。
そして、その最大の特徴は、「ZID」という同社独自の管理情報にある。ZIDは住所や地番ではなく、日本国内約3800万棟の建物などに紐づいたユニークなIDだ。たとえば住所は町村合併や区画整理、あるいは建物の建て替えによって、同じ場所でも変わってしまうとが多々ある。
「住所は建物に対してユニークなものではなく、異なる建物でも同じ住所を利用するケースが多く存在するのが日本の住所の難しさです。そのため、住所による建物管理では限界があります。座標での管理もありますが、表示させる背景地図自体が地殻変動や高精度化による位置補正によってずれが生じるケースが発生します。これらの課題に対して建物自体にIDを振って管理していけば、正確に建物単位で情報管理が可能であり、住所が変わっても変換が可能です」と椛氏はそのメリットを語る。
老舗ならではのきめ細やかなサービス
ZENRIN Maps APIが提供するのは、地図の描画・操作に関する「マップ」、各種エリア・ポイントを検索する「サーチ」、多彩なルート探索やナビゲーションを提供する「ルート」、位置情報を高度化する「データコーディング」の4つが基本となる。この中でも、地図の製作に70年以上取り組んできた同社ならではの”かゆいところに手が届く”サービスが、データコーディングの「住所クレンジング」だ。
「皆さんが管理なさっている住所情報は、正しい情報になっていない場合があります。たとえば昔登録した住所が町村合併で変わってしまうことは多々あります。また、『丸の内」なのに『丸no内』といった打ち間違いもあるでしょう。うっかり『茨城県宇都宮市』(本来は、栃木県宇都宮市)と入力してしまうこともあるかもしれません。我々のAPIを使うと、こうした間違いをクレンジングして、正しいものに置き換えることもできます」と椛氏は説明する。
さらに、ZENRIN Maps APIを使えば、住所情報に緯度経度情報や建物名称を付与したり、ZIDに基づいて住所の変化に対応したりといったことも可能だ。
「我々のZIDが位置情報のベースとなることで、各企業様でのDX化の推進や業界間の情報流通の支援、促進につながる取り組みを進めていきます」と、椛氏は今後への期待を語る。
2022.12.6、イチBizアワード開催
内閣官房は地理空間情報を活用したビジネスアイデアコンテスト「イチBizアワード」を今年から開催しており(応募はすでに終了)、2022年12月6日~7日に開催される「G空間EXPO2022」にて発表・表彰する予定だ。
さまざまなアイデアを実現するためには、ZENRIN Maps APIのような仕組みが不可欠だろう。こうした最先端のAPIを利用して、どんなサービスを構築できるのか。イチBizアワードの発表にも注目したい。
(提供:ゼンリン)