東北大学などの国際研究チームは、138億年前の宇宙誕生から現在に至るまでの、天の川銀河が形成される様子のシミュレーションを実行。鉄より重い貴金属元素に富んだ星の多くが100億年以上前に、天の川銀河のもとになった小さい銀河で形成されたことを明らかにした。
東北大学などの国際研究チームは、138億年前の宇宙誕生から現在に至るまでの、天の川銀河が形成される様子のシミュレーションを実行。鉄より重い貴金属元素に富んだ星の多くが100億年以上前に、天の川銀河のもとになった小さい銀河で形成されたことを明らかにした。 研究チームは、宇宙初期の密度のムラからダークマターとガスが重力によって集まり、星が形成されていく様子を、天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイⅡ」と独自開発の数値計算コードを用いることで、従来の10倍程度高い解像度で計算。世界最高解像度での天の川銀河生成シミュレーションに成功した。 その結果、鉄より重い元素に富んだ9割以上の星が、宇宙誕生から40億年以内に、形成途中の小さい銀河で誕生したことがわかった。小さい銀河ではガスの量が少ないため、貴金属合成現象が一度でも起これば、その銀河における鉄より重い元素の割合が、銀河全体における割合より高くなるためだという。 研究チームはさらに、すばる望遠鏡などで観測した天の川銀河の星の貴金属量と、シミュレーションで予測された貴金属元素の1つであるユーロピウム(Eu)の量が、よく似た分布をしていることを示した。これらのことから、天の川銀河に見られる鉄より重い元素に富む星の多くは、100億歳以上の年齢を持ち、宇宙初期の天の川銀河の形成史を今に伝える星々であると述べている。 研究論文は、王立天文学会月報(Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)に、2022年11月14日付けでオンライン公開された。(中條)