この記事は、内閣官房による地理空間情報を活用したビジネスアイデアコンテスト「イチBizアワード」に掲載されている記事の転載です。
LiDARを用いて匿名化された人流データを収集
情報・電機部門の技術商社である岡谷エレクトロニクスが取り組むのは、LiDARセンサーを利用した人流・交通量の観測だ。自動車の運転サポートでも導入されているLiDARセンサーは、レーザー光を使って離れたところにある物体を検知する技術。物体の位置や距離を3次元で正確に把握できるといったメリットがある。
岡谷エレクトロニクス ビジネス推進部 新規開拓グループ 公共・交通チームの清水直弥氏は、「人流の把握という分野ではカメラを使ったソリューションが多いのですが、点群を測定するLiDARセンサーには歩行者の顔といった個人情報とは無関係であるという強みがあります。またLiDARであれば1つのセンサーで50mくらいの範囲を把握できるので、センサー同士を連携して広範な人流データを取れるというメリットもあります」とLiDARセンサーの有効性を語る。
岡谷エレクトロニクスでは、過去に東海大学と共同で小田急線本厚木駅北口で人流観測集計の実証実験を実施している。同社が計測機器やシステムを提供して都市計画に明るい東海大学の専門家がそのデータを分析する。これにより、駅から街に抜ける人流がきれいにわかり、使われていない部分にベンチを置いたり仮店舗を設置したりした場合のシミュレーションをして、いかに土地を有効に活用すべきかが見えてくるという。
また人流の観測という面では携帯キャリア各社が積極に取り組んでいるが、GPSでは“どこにベンチを置くか”といったレベルの精緻なデータが得られない。その点、LiDARセンサーは数センチ単位で空間情報を把握できるので、シミュレーションには最適だ。
「シミュレーションの結果は厚木市にも提出してあります。この技術は設備さえ置けば時間を掛けることもなく、すぐに人流をデータ化することができます。電源や設置場所の許可が下りればすぐに始められるサービスなんです。ショッピングモールであったり、ほかの地方自治体であったり、この技術の有用性をアピールしていきたいと考えています」とは、清水氏。
空間を有効的にプロデュースするための判断材料として、匿名化された人流データは大いに役立つだろう。
空間情報に環境情報を掛け合わせたサービスの提供
さらに、岡谷エレクトロニクスが描くのは「+α」の部分だ。
「お客様やその土地が抱える課題を解決するにあたり、要因となるパラメーターの仮説を立て、どこで何を観測するかを決めることが最も重要になってきます。その場合、LiDARで取得できるデータだけでは不十分で、AIカメラやイベント駆動型センサー、レーダーといったさまざまなセンサーを組み合わせ、適材適所で使いこなす応用技術が必要となります。そこで、当社の親会社である岡谷鋼機のグローバル・ネットワークを通じて、米国のシリコンバレーやイスラエルを中心としたテクノロジー・ベンダーとコンタクトし、それら最先端テクノロジーが日本の社会課題の解決に役に立てられないかと、日々、チーム内での検討・評価を重ねています」と、岡谷エレクトロニクス ビジネス推進部 部長の住田克也氏は説明する。
岡谷エレクトロニクスでは、LiDARを使った地理空間情報ビジネスのほかに、社会課題になっている土砂災害の用地保全に対して、DXで解決するという取り組みをメーカーと実証実験を進めているという。同様に、トンネルや橋といった社会インフラの老朽化検知についても取り組みを進めているという。
アイデアを実現するために専門商社がサポート
内閣官房は地理空間情報を活用したビジネスアイデアコンテスト「イチBizアワード」を今年から開催しており(応募はすでに終了)、2022年12月6日~7日に開催される「G空間EXPO2022」にて発表・表彰する予定だ。
同社ビジネス推進部 新規開拓グループ グループ長の堀江良一氏は、「イチBizアワードへの参加には、新規のビジネスを開拓したいという思いがありました。地理空間情報の分野でビジネスの種になるようなものを始めた経緯もありますが、ただその活用というのがまだまだ発展の余地があると考えています。今あるビジネスに捕らわれず、もう少し広い視野でアイデアを集めたい。そして、そのアイデアを出してくださった方が具現化するにあたって協力させていただきたいです。我々は商社なので、イチBizアワードで出て来たアイデアと我々の持っているリソースを組み合わせるなど、そういったことができればと思っています」と語る。
LiDARセンサーと組み合わせて思わぬ効果を生み出すアイデアは現れるのか。G空間EXPO2022の発表に注目が集まる。
(提供:岡谷エレクトロニクス)