理化学研究所や大阪大学などの国際共同研究チームは、連星を成す2つの中性子星の合体に対し、一般相対性理論に基づいた数値シミュレーションを実行。合体後に放出される重力波の波形から、1立方センチメートル当たり1兆キログラムを超える超高密度物質の性質が詳細に読み取れることを示した。
理化学研究所や大阪大学などの国際共同研究チームは、連星を成す2つの中性子星の合体に対し、一般相対性理論に基づいた数値シミュレーションを実行。合体後に放出される重力波の波形から、1立方センチメートル当たり1兆キログラムを超える超高密度物質の性質が詳細に読み取れることを示した。 研究チームは、中性子星の中心部のような超高圧下では、中性子や陽子からなるハドロン物質が徐々に融解することで、素粒子からなる新物質(クォーク物質)が連続的に現れるとする「ハドロン-クォーク連続性」という理論予想に着目。同チームの原子核専門のメンバーが同予想に基づいて構築した状態方程式(物質の圧力と密度の関係を表す式)の数値テーブルを用いて、天体物理学専門のメンバーが連星中性子星合体の一般相対論に基づく数値シミュレーションを実行した。 その結果、合体後の超高圧状態が、(1)ハドロン物質のままとどまる、(3)ハドロン物質が一次相転移を経てクォーク物質が突然現れる、(3)ハドロン物質が徐々にクォーク物質に変化する、という3パターンのシミュレーションにおいて、合体後に高速回転する中性子星から放出される重力波の周波数に明らかな違いが出ることを突き止めた。 2017年8月17日、米国の重力波干渉計「ライゴ(LIGO)」が、連星中性子星が合体する過程を重力波によって観測することに初めて成功し、合体した二つの中性子星それぞれの質量や半径、中性子星内部の密度・圧力構造に関する情報が報告された。しかし、二つの中性子星が合体した後、どうなったのかは分からなかった。 今回の研究論文は、科学雑誌フィジカル・レビュー・レターズ(Physical Review Letters)オンライン版に2022年10月26日付けで掲載された。(中條)