この記事は、内閣官房による地理空間情報を活用したビジネスアイデアコンテスト「イチBizアワード」に掲載されている記事の転載です。
わざわざ撮影しなくても済む高精細航空写真データ
高精細な航空写真データはさまざまな用途に利用されている。地理空間データを総合的に扱うパスコは昨年、航空機用デジタルカメラ大手の米ベクセル・イメージング社と提携して「Vexcel Data Program」(VDP)の日本国内の都市部での整備・販売を担う契約を結び、着々と国内の高精細航空写真データの撮影を進めている。VDPは、ベクセル・イメージング社が提供する高精度航空写真と数値表層モデル(DSM)をはじめとした地理空間情報のデータライブラリーだ。
「弊社でも、もともと注文があった地域の高精細航空写真データを撮影していたのですが、ベクセル・イメージング社と協業したことによって、弊社でどんどん撮影していって必要なところだけを買ってくださいというようにビジネスモデルを変えていきたい」と、パスコ 事業統括本部 事業推進部 VDP推進課 課長の乾 達雄氏は語る。
冒頭で書いた通り、高精細航空写真データの用途はさまざまだ。特に官公庁系では航空写真が必要になっても予算の確保や入札で時間が掛かるうえ、それらをクリアしてから撮影・分析という工程をたどる。その点VDPでは既製品を購入する感覚で、わざわざそのために航空機を飛ばさなくても航空写真が得られるといったメリットがある。また突然災害が起こった際に、過去の高精細な航空写真データが既存製品としてあり、現在のデータと比較できる価値は大きい。
計画では、地域によって2年半もしくは5年でデータを更新していくという。ウェブ上ではさまざまな無料の航空写真閲覧サービスが使用できるが、その多くは撮影時期や品質等が明確に示されていないなど、利活用に障壁が少なくない。
高精細な定点観測データを提供
VDPのメリットは、高精細なデータが定期的に更新されていくというところにある。「7.5/8cmという地上解像度で人口カバー率7割、5万2000k㎡を整備するっていうのは今までなかったと思います」とは、乾氏。7.5cmの地上解像度とは、地上の7.5㎠を画像の1ピクセルとして記録するということだ。この解像度になると、地表の自動車はもちろん、横断歩道や道路標示のかすれ具合といったことも画像から判断できる。
「今、国や地方公共団体では太陽光パネルなどの設置を促進する取り組みが進められていますが、設置にはさまざまな法令などの基準に適合させることや、持続的な運用のためその安全管理なども求められます。VDPが提供する航空写真では、建物の上部や人工林の中に設置されたソーラーパネルの設置状況を時期と位置の情報も加え把握することができます」と乾氏はメリットを語る。
また、VDPのカメラは前後左右に加えて、垂直方向への5眼+近赤外線センサーで構成されている。そのため、撮影データを合成して斜めから見た「オブリーク画像」、真上から見た「トゥルーオルソ画像」、DSMなどを生成できることが特徴だ。建物の側面が高精細な画像として見られると、建物壁面の傷み具合といったことも画像から判断できる。なお、オブリーク画像と近赤外線センサーは、今後の提供開始に向け準備中とのことだ。
イチBizアワードを通じて新たな取り組みを模索
内閣官房は地理空間情報を活用したビジネスアイデアコンテスト「イチBizアワード」を今年から開催しており(応募はすでに終了)、2022年12月6日~7日に開催される「G空間EXPO2022」にて発表・表彰する予定だ。
協力協賛企業として参加するパスコの乾氏は、「地理空間情報ビジネスのパイオニアとして、地理空間情報を利用したさまざまなビジネスの裾野を広げるために、パスコが『斬新なアイデア・新たなビジネスモデル』の事業化・成長の取組への支援ができないかと考えて、イチBizアワードへの参加を決めました」と語る。
イチBizアワードの開催は本年が初めて。地理空間情報の老舗であるパスコの目にかなうアイデアが登場するのかにも注目したい。
(提供:パスコ)