理化学研究所などの共同研究チームは、ガラスと水の電気的相互作用を利用し、圧力で水を流すことで電力を発生する圧力駆動型の小型発電機を開発した。人間の歩行などのゆっくりした動きを用いた環境発電に利用でき、身の回りの電子機器の電源として役立つことが期待される。
理化学研究所などの共同研究チームは、ガラスと水の電気的相互作用を利用し、圧力で水を流すことで電力を発生する圧力駆動型の小型発電機を開発した。人間の歩行などのゆっくりした動きを用いた環境発電に利用でき、身の回りの電子機器の電源として役立つことが期待される。 研究チームは、水(H2O)が自発的に水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)に解離していることと、ガラスは、水中で表面のH+が解離し、負に帯電する性質があることから発電機の着想を得た。ガラスで微細流路を作製して圧力で水を流せば、H+は流路に入りやすいがOH-は入りにくいため、イオンの分離が発生する。そこで、流路の入口と出口をワイヤーで接続すると、出口では水素ガス(H2)、入口では酸素ガス(O2)が生じ、電流が流れる仕組みである。生じる水素ガスはごくわずかで、残った水は再び一定割合でイオンの電離が生じるため、水を流路に戻せば繰り返し発電できる。 同チームは、圧力をかけても壊れにくく、かつ大きな電力を得られるように、多数の流路が集積する微細ガラスフィルターを作製し、発生した電力でLEDの点灯やファンの回転、通信などができることを実証。さらに同機構を用いて開発した足踏み型の発電機の性能を、圧電素子を用いたものと比較したところ、電力や発電効率は同程度だが、圧電素子の持続時間が0.1秒以下なのに対し、足踏み型の発電機は1秒以上と長く、ゆっくりした振動で、持続的な発電が可能になることがわかった。 IoTの普及に伴う膨大な数の情報端末やセンサーへの給電手段として、熱や光、圧力などから電力を得る環境発電技術が注目されている。圧力は比較的大きな電力を生み出せるが、歩行のようなゆっくりした繰り返し圧力(振動)に対しては発電効率がやや悪いという課題があった。 研究成果は、科学雑誌サイエンティフィック・レポーツ(Scientific Reports)オンライン版に10月20日付けで掲載された。理研は今回の機構を、「発電デバイスおよび発電方法」として特許を出願している。(中條)