Vol6 車いすユーザーの電車移動ってどんな感じ?(はじめての電車移動編)
この記事は、国土交通省による歩行空間データの活用を推進する「バリアフリー・ナビプロジェクト」に掲載されている記事の転載です。
どうもアカザーです! 2000年にスノーボードで脊髄を損傷して以来、車いすユーザーを22年ほどやっています。この22年間、主な交通手段は手動運転装置を付けた車でというのが多いのですが、東京は電車の路線が発達しているので、たま~に電車も使ったりします。というわけで今回は車いすユーザーの電車移動について書いていこうかと。
車いすユーザーになって初めての電車移動
オレが車いすになる前、健常者の頃の都内の移動手段は皆さんと同じようにほぼ電車でした。山手線なんか2~3分に1台ペースのダイヤでめっちゃ便利ですよね~。でも、車いすユーザーになると電車移動はなかなかに厳しいんですヨ。
オレの車いすでの電車移動初体験は22年前。リハビリ病院の最寄駅である西武新宿線航空公園駅から新宿駅まででした。約40分の乗り換え無しの電車移動。健常者なら座席に座ってウトウトしたり、今ならスマホをポチポチしたりの有意義な自分時間を過ごしたりする感じでしょうか?
でも20年前、車いすになったばかりのオレは超ドキドキ。駅員さんに行き先を告げて、電車に乗る際にはトランスボードをかけてもらって乗車。今では駅でちょくちょく見かけるこの光景も、見るのもやるのもこの時が初めてでした。つまりぶつっけ本番!
当時は今のように車いすスペースが設けられた車両がほとんどなかったので、車いすで乗る車両といえばホーム階段から遠く離れた、いちばん先頭か最後方の比較的空いている車両というのが定番でした。
ホームでの移動は多くなりますが、個人的にはこれはありがたい感じでした。車内に車いすスペースがないということは、車いすの居場所はドアの前あたり。でも、ご存じのようにここはいちばん人の出入りが多い場所。しかし、先頭や後方の車両だと運転席側が壁になっているおかげで、ここが車いす安住の地になるんです!
その場所はスペースが広く、中央部分だと車いすが居ても左右ドアからの人の出入りの邪魔にならない感じ。それでも人の出入りが多い場合は、閉まっているドア側に移動して対応したりしました。
あと、電車が動いている時に車いすに座っているというのは、座席に座っているよりもぜんぜん不安定なんです。接地面が4つのタイヤのいわば“点”なので当然といえば当然なんですけど。なので壁際とかに車いすを寄せ近くの手すりを持って、少しでも身体を安定させようとしていました。というか今でもそんな感じです。
到着先の西武新宿駅では駅員さんが待っていてくれて、ホームへのトランスボードをかけてくれたり、行きたい出口まで案内してくれたりしました。それら駅員さんのヘルプには今でも大感謝です! 大感謝した上で、当時(今もですが)のオレの感想は「いろいろな意味で、昔みたいにこれを毎日やるのはキツイな~」でした。
車いすでラッシュ時の電車がオススメできない理由
以前、友人と飲んだ後に終電を利用することがありました。
皆さんのご想像どおり、車いすでラッシュ時の電車に乗るのはやめておいたほうがいいです! 車いすで乗ると、立っている乗客目線の高さにはじゅうぶんなスペースがあるように見えるせいで、前後左右からめちゃめちゃ押されます。前後左右の人ではなく、俺の存在が見えないその向こうから。
ていうか、前後左右の方は俺を押しつぶさないようにがんばってくれるんですが、車いすがあるせいで身体がめっちゃ斜めって俺よりキツそうでした…その節は申し訳ありませんでした。
以来、自分のためにも周りの方のためにも、朝夕の通勤・通学や終電などラッシュ時の電車には極力車いすでは乗らず、他の交通手段を選択するよう心がけています。ラッシュ時の車いすでの電車利用は今でもキツイものがあるとは思いますが、それ以外はこの20年でかなり良くなった気がします。
車いすユーザーでも使いやすくなった駅
怪我をした22年前は東西線の沿線に住んでいたのですが、当時はエレベーターのない駅があったり、上り線から下り線のホームへの移動が、階段を降りて線路の下をくぐり階段を上ってやっと向こう側のホームに到着できるなんて駅もありました。その時は駅員さんが4人がかりで車いすを持ち上げて階段を運んでくれたのですが、アレは本当に申し訳なかったです。
その経験から、階段しかない駅で下り線に乗り換えたい場合は、とりあえず上り方向の電車に乗車し、ホームの左右に上りと下りの路線がある駅まで移動。それから下り線の電車に乗り換える。みたいな感じで利用していました。
遠回りしているようで実はこのほうが時間もかからず、自分も駅員さんも幸せになるんですヨ(笑)。以来、東西線では数年間この方法を使っていましたが、東京オリパラのおかげもあってか今では(東京は)ほとんどの駅にエレベーターが付き、こういう技を使うケースはほぼなくなりました。
オレは車いすユーザーになってほどなくして、東西線沿線から大江戸線沿線に引っ越しています。その理由は、20年以上前でも大江戸線には車いすスペースがあり、ホームと車両の段差もほとんどなく、キャスター上げ(車いすでのウイリー)さえできれば、駅員さんにお世話にならなくても、健常者の時のようにひとりでの乗降が可能だったからです。コレが本当にうれしかったんですヨ!
車いすユーザーになった2001年ごろにはじめて利用した都営地下鉄大江戸線。当時はバリアがある路線が多かったので、ホームとの段差のなさや、車いすスペースのある車両に感動しました。
グーグルマップでトイレ検索⁉
あと車いすユーザーにとっていろいろと便利なパラダイスが、駅にあるバリアフリートイレです。車いすユーザーになったばかりの頃は車いす対応トイレの場所探しに一苦労していました。しかし、「デカイ駅にはだいたいバリアフリートイレがあるな!」ということに気付いてからは、トイレ探しに無駄な時間を使うことはなくなりました。ていうか電車移動で駅を使うより、駅をトイレとして利用しているほうが多いまである気がします(笑)。
ちなみに現在はグーグルマップで「バリアフリートイレ」と検索すると、最寄りの多目的トイレが表示されるのをご存じでしょうか? 写真で入口の段座の具合やスロープの角度、トイレ内の手すりの配置なども確認できるし、そのままルート検索に移行できるのでめっちゃ便利です。
そしてさらに、グーグルマップにはバリアフリートイレを検索するのと同じくらい、車いすユーザーの電車移動時に便利な機能があるんですヨ! その機能「経路オプション」については次週の後編で~!
アカザー(赤澤賢一郎)
週刊アスキーの編集者を経て、現在は車いすのフリー編集者・ライターをやっています。2000年にスノーボード中の事故で脊髄を損傷(Th12-L1)。車椅子ユーザーになって21年です。2018年に札医大で再生医療の治験を受け、2020年に20年ぶりに歩行!!!