業務を変えるkintoneユーザー事例 第156回
現場の課題を拾うのも、パートナーとの情報共有もkintone
アプリ開発に重要な「取り込みデータの3S」とは?
2022年09月22日 09時00分更新
kintoneを導入する際、パートナーと協力してアプリ開発を進めていく企業と、社内でアプリ開発を進めていく企業とに大きくわかれる。どちらが正解ということはなく、自社にあったアプローチを選ぶことが大切だ。
kintone hive 2022 sendaiで成果を発表した多田木工製作所は、パートナーと協力してkintone導入を成功させた企業のひとつだ。課題管理アプリなどパートナーとの情報共有にもkintoneをうまく活用した様子を、「やってみようから進化! 効率化・対話会話ができる社内業務ツール作成へ挑戦」から見てみよう。
kintoneを武器に、ウェルフェア部の課題解決に乗り出した
「住環境改善企業」を謳う多田木工製作所には、大きく2つの事業がある。ひとつは特注家具の提案から設計、組み立て、現地での施工までを行なう特販部、もうひとつが福祉用具の貸与や販売、住宅改善、リフォームを行なうウェルフェア部だ。
かつてはいずれの事業部にも、課題が山積していた。その課題を解決する武器として選ばれたのが、サイボウズオフィシャルパートナーであるブルーパシフィックソフトウェアから紹介されたkintoneだった。
多田木工製作所 管理室 企画担当 高橋慎太郎氏は、「特販部では、案件管理の共有化や提案力の向上、工程管理の共有化と効率化、管理書類やデータの集約、見える化が課題として挙げられていました。しかしこれらの課題は複雑すぎるので、まずはウェルフェア部の課題解決から挑戦することにしました」と語る。
ウェルフェア部には、福祉用具専門相談員という資格を持ったスタッフがいる。要介護認定を受けた利用者が、介護保険制度を活用して福祉サービスを利用する際のサポートをする専門職だ。ケアマネージャーが立てたケアプランに沿った適切な福祉用具の選定、安全な住環境の整備などを担っている。担当する業務は福祉用具のレンタル契約、書類作成、モニタリング、選定、納品など多種多様だ。福祉用具専門相談員の業務効率化と負担削減が、ウェルフェア部の課題として挙げられていた。ほかには保守修了が近い既存システムへの対応、顧客管理と訪問管理の一元化なども課題となっていた。
高橋氏らはウェルフェア部が抱える課題をさらに整理し、アフターサービス、モニタリング、経過記録をkintoneにまとめることから着手するという方針を立てた。また当時は予定表をグループウェアで共有しつつ、作業日報は事務所に戻ってから基幹システムに入力していたので、これもkintoneに集約したいと考えた。
「しかし当時、kintoneの『キ』も知らない、時間がない、アプリも作れないし、説明もできない状況でした。切羽詰まった私はパートナーであるブルーパシフィックソフトウェアにお願いして、2時間のレクチャーを5回、合計10時間の指導を受けました」(多田木工製作所 企画室 システム担当 村山 暁氏)
レクチャーを受けながら実際に動作するデモアプリを作った村山氏。カレンダーPlusプラグインを使ったデモアプリは、予想よりも簡単に完成したという。
課題管理アプリを使ってパートナーと情報共有しながら進めたアプリ開発
自分でアプリを作り、「これなら説明できる」と自信もついて社内説明会を開いたのだが、すんなり受け入れてはもらえなかった。気をつけるべきポイントを示しながら操作説明を行なったにもかかわらず、問い合わせの電話が殺到して大変なことになったのだ。まずは使い慣れてもらうことが重要だと考えた村山氏は、なんでも良いのでスレッドに書き込んでほしいと社内に訴えた。
「なんでも良いので書き込んでもらい、読んだら『いいね!』を押す文化を根付かせたいと思いました。最初のうちはなかなか書き込んでもらえず、電話での問い合わせ内容を私が代わりに入力したりもしました」(村山氏)
スレッドに新たなコメントが書き込まれるたびに、村山氏は「いいね!」を押し続けた。その甲斐もあり、社内の仲間もスレッドに書き込んでくれるようになり、kintoneを使うことに慣れていった。その一方で村山氏や高橋氏らは、ブルーパシフィックソフトウェアをパートナーとしてアプリを開発するサイクルを作っていった。ブルーパシフィックソフトウェアとの情報共有にも、kintoneが使われている。
「スレッドに記入してもらった現場の課題を整理して、担当者を割り当てて課題管理アプリに登録します。課題管理アプリを通じてブルーパシフィックソフトウェアさんと課題を共有して、アプリの開発や修正を行ないます。その際、修正依頼や対応の記録も課題管理アプリに登録して残していきました。開発、修正が終わったら、現場に説明してアプリの運用を開始します。この開発サイクルを繰り返して、やっとよくなってきました」(村山氏)
実際に開発されたアプリの一例として、営業日報アプリが紹介された。カレンダーに予定を入力し、実際に行動したらステータスを「予定」から「実績」に切り替える。こうすることで、カレンダーと営業日報に同じ内容を重複入力することなく、自然な流れで経過記録を蓄積できるようになった。重複入力がなくなり手間が減った、チーム内で情報を共有しやすくなった、タブレットを使っていつでもどこでも入力できるようになったといった喜びの声が、現場からも届いている。
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