映画における一番いい音は0点であり、0点満点の世界
イベントでは映画監督・岩井俊二氏のインタビュー映像も流された。
岩井氏は「映画において一番いい音は、気にならない。へんに目立たない」ことだと逆説的に説明。一方で、人間の耳は生き残っていく過程で身に着けたセンサーであり、「その感覚の良さは馬鹿にならない」とした。映画監督は、このデリケートな感覚に対して向き合い、こだわっていくことが重要であり、観客が気にならないナチュラルな音を作ることが必要であるとする。映画における一番いい音は0点の音であり、100点満点ではなく0点満点の世界であるという持論も披露した。
インタビュー映像では、こうした岩井氏の考え方が反映された2020年公開の映画『ラストレター』のシーンを引用しながら、音響制作に対するこだわりや作品内での聴きどころなどを紹介した。岩井氏は「スピーカーの方向性が変わってくれば、作る音楽も変わってくる」としつつ、「正解がない世界なので、なるべく固まらないようにしたい」「次に生まれてくるものは初々しく、みずみずしいものであるに違いない。初めてで新鮮な体験がさせられる作品を作りたい」といいた意欲についても語っていた。
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