ラーメンWalker発!「未来を輝かせるラーメンストーリーズ」第24話
鳥取ご当地麺・牛骨ラーメンと鳥取の魅力を全国に伝えたい! 美味しさの秘訣は熱い思いと牛の歴史にあり
2022年09月06日 12時00分更新
ラーメンWalkerがテーマを決めて名店店主とともに新たなラーメンをお届けする企画。8月24日~29日は、鳥取から『牛骨ラーメン たかうな』が出店した。今回のテーマは、豚でもない、鶏でもない、鳥取の「牛骨」ラーメンを感じろ!
店主・山根武さんは、創業18年のベテラン店主ながら、2021年12月のラーメン★スターオーディションでチャレンジ店主部門に入賞。その目的は、地元で長年愛され続けてきたご当地麺「牛骨ラーメン」を全国に発信し、鳥取の魅力を広めるためだった。
牛骨ラーメン誕生の立役者が、満を持してラーメンWalkerキッチンに登場!
鳥取県には、70年以上の歴史あるご当地麺「牛骨ラーメン」がある。しかし、十数年前は全国的にも知られていない隠れた地元のラーメンだった。この牛骨ラーメンを全国に発信しようと先頭に立って奮闘してきたのが『牛骨ラーメン たかうな』の店主・山根武さんだ。
山根武さんは、鳥取県で生まれ育ち、20歳の時に飲食業の道に進んだ。「父の友達が居酒屋を経営していて、手伝ってくれないかと。20歳で初めて包丁を持ちました。最初から興味があったわけではなく頼まれて入ったんですけど、だんだん面白くなったんですね」と、半年後には、社長が後ろ盾となって、近くのショッピングセンターのフードコートの一角で独立する。「社長が銀行にも話をつけてくれて、知らぬ間に21歳で大借金です(笑)」。
1994年、21歳でスタートした最初の店から10年ほど経った2004年、知人に紹介された100席の大きなテナントへとステップアップ。その時の屋号が『たかうな』だ。「最初は、田舎版のファミレスみたいな感じで、お昼はラーメンもあったけど、うどん、そば、焼きそば、お好み焼きって何でもあって、夜は居酒屋。店名の『たかうな』は筍のことで、『源氏物語』に出てくる唯一無二の言葉で気に入ってつけたんです。草冠に旬で筍なので、当時の店で旬のものを使うという意味もありました」と山根さん。オープンから2年後、2006年にラーメン専門店としてリニューアルする。
ラーメン専門店になってから数年後、観光協会から鳥取PRの話が舞い込んだ。
「鳥取は行政区が東部・中部・西部の3つに分かれていて、僕は中部に住んでるんですね。東部には有名な鳥取砂丘、西部には水木しげるロードや紅ズワイガニの水揚げ日本一の境港がある。他にも、有名な皆生温泉や中国山脈で一番大きな大山とか結構見所が多いわけですよ。でも、中部にはあまり見所ないよねって話の中で、鳥取中部を盛り上げるための特色を考えようと僕のところに話がきたんです」
ちょうどその頃、某出版社から「この辺、牛で出汁をとるラーメンって多いけど、牛出汁って珍しいね」という話があった。
「もともと老舗の『香味徳』とか他のラーメン店も『牛骨ラーメン』って謳ってなくて、中華そばとか醤油ラーメンとか、地元の普通のラーメン。でも、みんな牛骨は使っていたわけですよ。昔から馴染みある味で、僕がラーメン作りを教えてもらった時も、牛が入ってることが特別だとは1ミリも思わなかった」
調べていくと県内の中部と西部にかけて、牛骨を使ったラーメン店が60軒ぐらいあった。そこで2010年、中部の倉吉・三朝・琴浦を中心とした他店にも協力を仰ぎ、『鳥取牛骨ラーメン』という言葉を初めて発信した。「環境協会が鳥取中部の牛骨ラーメンを軸としたパンフレットを作成してくれたり、各所イベントで牛骨ラーメンを振る舞ったり、紹介する機会が増えましたね」(山根さん)。
牛骨ラーメンと鳥取の魅力をもっと広めるために、新たなチャレンジ
鳥取牛骨ラーメン発信から10年。各店の来客は増えたが、一過性のブームで終わらせないために、東京ラーメンショーなど各地のイベントにも『香味徳』と一緒に参加したり、鳥取の牛骨ラーメンを盛り上げてきた。ラーメンWalkerキッチンのラーメン★スターオーディションも、鳥取牛骨ラーメン発信のためにチャレンジしたことのひとつだ。
「コロナ禍で行動が限られていた時期に、こんな時こそ攻めていかないと、何かできることはないか考えていて、たまたまオーディションの募集を見かけたんです。難しいかと思ったんですが、全国的に見たら鳥取県のご当地ラーメンは知られていない。そういう意味では新人じゃないかと。それに鳥取と牛骨ラーメンがPRできるなら、いいチャンスだと思って応募しました」
オーディションでチャレンジ店主部門に入選して得た今回の出店。その熱い思いを全力投入した、自慢の牛骨ラーメンを早速いただいた。
牛の旨味が溶け出した甘くやさしい塩味のスープは、気づいたらごくごくとスープを飲み干してしまうほどの美味しさ。店内を見渡すと牛骨ラーメンを初めて食べる方も多く、豚や鶏とは違う、あっさりなのに濃厚な牛出汁の味わいに感動と笑顔があふれていた。
10年前に牛骨ラーメン発信したその日から、山根さんもラーメンのブラッシュアップを重ねてきた。長年のチャレンジ精神が今、多くの人が行列を作る『たかうな』の味につながっている。
ひとつのチャレンジが、新しい発見、新しい出会いにつながった
オーディション参加は「鳥取県と鳥取の牛骨ラーメンを知ってもらいたい」が第一に、スーパーバイザーである名店店主に、「今の自分が作るラーメンを評価してもらう」こともあった。「長年やってきたから自信はある。ただ、自分の作ってるラーメンが全国的に見てとかどうだろうとか。何かしらアドバイスや今よりいいものにするためのヒントが得られると思ったんです」。
チャレンジ店主部門に入選してからは、さまざまな変化があったという山根さん。今回の出店もそのひとつだ。「挑戦として、現場で全部仕込んだこと。牛骨を20時間以上ずっと炊くわけですが、出店の前々日からキッチンに入って、定休日も朝一からスープを炊いてました。骨も水も肉も、食材をあえてこちらの業者から仕入れて、関東で同じ味ができるか、どこまで寄せることができるかチャレンジしました」。
攻めの挑戦は、出汁のとり方、味付けの仕方、調味料の配合の仕方、細かな調整が必要ななか、最終的に満足いくものができたのだと、山根さんの自信に満ちた表情が語っていた。
『たかうな』のラーメンは、牛骨出汁は共通だが、味付けでは攻め方を変えている。「スタンダードの牛骨ラーメンはシンプルな美味しさを追求して、トッピングのバリエーションや味の種類が豊富なんです。他の店は牛骨ラーメン1味で勝負しているところが多いけど、うちは醤油もあれば塩もあるし、味噌、つけ麺、油そば、タンメン…とたくさんあります」という中から、出店にはその一部を提供した。
当初から予定していた「辛口スタミナラーメン」「牛骨油そば」の他、最終日には「牛骨タンメン」「ニンニクもやしラーメン」の2品がサプライズで提供され、キッチン常連のお客様を悩ませた。
多くの人を魅了した牛骨ラーメンとは、「食べたことないけど、食べたことあるような、どこか懐かしい味」と山根さん。実は鳥取は、古来、日本有数の牛の生産地。神戸牛や近江牛など有名ブランド牛の元になった「気高号」という牛が鳥取にいた。つまり鳥取の牛がすべての牛の始祖なのだ。「僕が小学生くらいの頃、田舎の家には牛が必ず1、2頭いたんですね。そのくらい牛が身近にいて、牛骨で出汁をとったラーメンも当たり前のように、居酒屋や定食屋、うどん屋でも出してる。地元の人にとっては、昔ながらのラーメンなんです」。今回の出店は、関東の食材を使ってどれだけ本場の味に近づけるかチャレンジだった。鳥取の食材を使った味は、ぜひ鳥取で味わってほしい。
牛骨ラーメンとともに、忘れてはならないのが鳥取県のPR。「鳥取県って、すごくいいところなんです。食べるものも最高だし、海のもの、山のもの、自然も最高。海と山が近くて、山の頂上からでも海が見渡せて、見どころもたくさんあります! 今回の出店は、牛骨ラーメンが鳥取を知ってもらうきっかけになって、訪れた方に、関わってくださったすべての方に、何か爪痕を残せたら嬉しいです」。最終日は、早い時間で売切れの大盛況で終え、しっかりと成果を残した。鳥取に戻っても、山根店主のチャレンジはまだまだ続く!
牛骨ラーメンたかうな
鳥取県東伯郡琴浦町下伊勢527-6
火~木 11時~14時30分 金~日 11時~14時30分/17時30分~20時(L.O19時45分)
月曜休(祝日の場合、昼営業のみ)
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。臨時休業など、詳しくはお店の公式ウェブサイト(https://www.takauna.com)をご確認ください。
ラーメンWalkerキッチン
埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3-205
04-2968-7786
JR武蔵野線「東所沢」駅徒歩10分
https://ramen.walkerplus.com/kitchen/