iPhoneとAndroid、この2つでスマートフォンOS市場の99%を占めている。世界全体で見れば、優勢なのはAndroid。しかし、特に米国や日本の若者の間ではiPhoneが大きなリードを築いている。そのAndroidを開発するグーグルがアップリに対し、メッセージ機能について業界標準を受け入れるよう横槍を入れている。
iMessageで色分けされる青と緑の吹き出し
iPhone標準のメッセージアプリ(iMessage)において、iPhone間(アップル製デバイス間)では青の吹き出し、相手がiPhoneではない場合は緑の吹き出しで表示される。これはiPhoneの間はアップル独自のプロトコルを用いるのに対し、iPhone以外、たとえばAndroidとの間では、昔ながらのSMS/MMSを用いるためだ。
グーグルは以前から、アップルのこのような”色分け”について苦言を呈してきた。SMS/MMSは古い技術であり、暗号化もなく、既読がわからず、動画のクオリティーも低いと批判する。
この問題の背景をもう少し説明すると、グーグルのサイトにもリンクされたウォールストリートジャーナルの1月掲載の記事が詳しい(https://webreprints.djreprints.com/2327403.html)。米国の若者の動向として、iPhoneユーザーのグループチャットでAndroidユーザーが色分けでわかってしまい、「この緑、誰?」「気持ち悪い」などと言われるというのだ。
この記事には、過去12ヵ月以内に新しいスマートフォンを購入したという米国の18~24歳のうち、iPhoneを購入する比率が年々増えているグラフを掲載(2016年には40%台だったのが、2021年は約75%に)。米国の若者の間で、青い吹き出しのグループチャットに入りたいという意識が働いていることを示唆した。
その後、ドレイクが「Texts Go Green」という曲をリリース。恋人との関係の変化を「テキストが緑色になる」(メッセージがiMessageではなくSMSになった)と表現した。グーグルは6月、ドレイクのこの歌詞に便乗したメッセージをツイート。8月になって、緑の吹き出しと青の吹き出しについて説明するビデオを紹介した。
より新しい規格であるRCSの採用を求めるグーグル
グーグルが訴えているメッセージは何か? アップルが自社端末以外との間で使うSMS/MMSはスマホ時代の前に使われていた古い規格であるのに対し、Androidは新しい業界標準の「RCS(Rich Communicatioin Services)」を使っているとし、アップルにRCSの受け入れを促している。
「アップルはSMSの代わりにRCSを採用できる。RCSを採用しても、iPhone間のテキストのやりとりに影響はない」「相手がどのスマホを使っているのかを知る必要はないはず」とグーグルは主張する。iPhoneユーザーに対しては、「Androidの友達に”グループチャットが台無し”と非難するのではなく、アップルを非難しよう」と呼びかける。SNS上でのタグ(#GetTheMessage)も用意している。
RCSは元々は通信事業者主導で開発が進んできた標準だ。MWCの主催でおなじみのGSMAが母体となっている。RCSが誕生した背景は、広く使われているメッセージ機能が、SMS/MMSから、FacebookなどOTTのサービスに移ったことがある。RCSが登場した当時、SMS/MMSは通信事業者にとっては重要な機能であり収益源だったため、RCSサービスに「Joyn」というブランドを冠し、別途アプリをインストールすることなくSMSのように使えると売り込んだ。
ところが、メッセージアプリのWhatsAppが瞬く間に広がり、通信事業者はこの市場を諦めた。WhatsAppは半ば必須アプリとなり、スマートフォン比率が高まるにつれ、SMSに課金する通信事業者は減っていった。
グーグルは2015年、RCS技術を手掛けるJibe Mobileを買収している。Androidユーザーを守り、アップルを批判するのが表向きのメッセージだが、RCSが広まることはGoogleにとって事業面でもメリットがあるのだ。
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