業務を変えるkintoneユーザー事例 第153回
kintone先輩のアドバイスをそのまま実行 社外にもkintoneの輪を
導入成功のキーワードは「居酒屋」? kintone開発には対話が大事
2022年09月05日 09時00分更新
今年も仙台PITにkintone hiveが帰って来た。オンライン視聴とリアル会場の併催となったkintone hive sendai 2022。リアル会場となった仙台PITにも熱心なオーディエンスが集まり、kintoneの使い手6人の工夫に耳を傾けた。まずはファーストバッターとしてステージに上がったクリーンテックの神戸 光氏の発表「kintoneは居酒屋? 出会いで変わった業務改善」からレポートしていこう。
最初のアプリが好評でkintoneに心酔、次々にアプリを開発 しかし……?
クリーンテックは、福島県で産業廃棄物の最終処分場を運営している。積極的な情報公開を心がけ、顧客や地域の人たちに安心してもらえる企業を目指しているという。神戸氏は同社の情報システム部に所属し、各部署が抱える課題をPCやソフトウェアを使って解決している。
kintone導入以前から、社内にはいくつかの業務システムがあった。しかし営業部は営業支援システムをうまく使えていなかったり、部署毎に違うシステムを使っていて連携されていなかったりといくつかの課題を抱えていた。あちこちにデータが分かれており、それぞれの部署がそれぞれのシステムに重複入力するなど、無駄も多かった。
「システムを導入して解決しようと提案したこともありました。しかし、そこまでコストをかけられない、難しくてわからない、業務の実態に合わないなどの理由から、なかなか進みませんでした」(神戸氏)
転機となったのは、2018年頃。システム部の上司が「はやっているみたいだから使ってみよう」と、kintoneを導入した。神戸氏にプログラミング経験はなかったが、触れてみると簡単にアプリを作ることができた。
最初に作ったのは、案件管理アプリ。二重入力しなくて済むように、通知設定ですぐに気づけるようにと、思いついた機能を盛り込んで作った自信作だ。営業担当者が案件情報を入力すれば事務員がすぐに内容を確認できるようにした。営業支援システムや担当者の目もなどあちこちに散在していたデータも、見やすくまとめることができた。
「完成した案件管理アプリを使ってもらったら、すんなり受け入れてもらえました。kintoneめっちゃ使えるじゃん! 神だなこれ!!となりました」(神戸氏)
もっと使ってもらおうと、神戸氏はアプリをどんどん作って広めた。しかしふと気づくと、レコードがあまり増えていないアプリが目についた。kintoneはとても使いやすいのに、どうして使われないのか? 当時の神戸氏には理由がわからなかったという。
一方的に「良い物」を押しつける高級レストランから、お互いに話し合える居酒屋へ
福島県内にkintoneを活用している人がいるらしい――2020年頃、そんな噂を聞いて神戸氏が会いに行ったのは有限会社矢内石油の矢内哲氏(関連記事:人口5000人の村で燃料屋が始めたリフォーム事業をkintoneが支える)、そして飯塚産業の市川 睦氏(関連記事:現場の不便解消を優先してスムーズなkintone導入を実現した飯塚産業)だった。ふたりともkintoneを使いこなしており、社内にも浸透していたということで、とても勉強になったという。
「いろいろなことを教えてもらいましたが、中でも印象に残ったのは、『まずは60点くらいのシステムを目指した方が、いいシステムになるよ』という話でした。100点のシステムを作った方がいいと考えていたので、当時はどういうことか理解できませんでした。ですが、アプリ開発に困っていたので、先輩のアドバイスをそのまま実行してみました」(神戸氏)
これまではしっかり作り込んでから現場の担当者に共有していたのだが、必要最低限の機能だけを組み込んだ段階でとりあえず見てもらうことにした神戸氏。すると、現場からは「ここの部分はこうなっていてほしかったです」と要望が返ってきた。返ってきた要望に対して、打合せをしながらその場で画面修正していくと、「kintoneってそんなに簡単に修正できるんですね」と、kintoneの手軽さも知ってもらうことができた。
kintoneアプリの作り方が広まったおかげで、kintoneの限界についても知ってもらうことができた。kintoneでは実現が難しい部分に対して、現場の運用を変えることで対応する提案が出てくるなど、システムだけではなく運用まで含めた業務の流れを一緒に考えてもらえるようになったのだ。
「使ってもらえなかった頃のkintoneは、システムありきでアプリを作っていたのだと思います。作って提案しても、ユーザーが声を上げてくれませんでした。修正にはお金がかかるから無理だろうと諦めていたのかもしれません。たとえるなら、お高くとまった料理店のようです。こういうのがあったらいいですよね?と店側が決めつけた料理が出てくるけど、食べ方が難しかったり気楽に食べられなかったりと不満があっても、声を上げにくい状況だったのだと思います」(神戸氏)
上から目線の100点満点ではなく、60点くらいのシステムを提案することで、利用者と一緒に話し合いながらアプリを作っていくことができるようになった。完璧を目指すのではなく、運用者にとって適切なアプリを作ることができるようになったのだ。
「お高くとまった料理店から、お互いに話し合える居酒屋のような作り方に変わりました。一方的なシステム提案から、システムだけではなく運用者と一緒に考えてアプリを作れるようになりました。これを例えるなら、お互いに話し合える居酒屋のようなアプリ作りになってきたのだと思います」(神戸氏)
kintoneの輪を広げて、今度は自分たちが誰かのきっかけになりたい
居酒屋のように一緒に開発するようになってから、現場にもkintoneが浸透していった。次第に、自分でアプリを作りたいという声も出てくるようになり、kintone率は高まっているという。
契約書と見積書の作成では、案件管理アプリに入力された情報を活用して、印刷用プラグインであるプリントクリエイターを使ってフォームを整えて出力することにした。契約書や見積書を作るためだけに情報を二重入力する必要がなくなり、手間を省けて転記ミスも防げる。基幹システムとの連携も、自動化された。kintoneにたまったデータが、RPAで基幹システムに自動登録される仕組みを構築したのだ。
新規案件の営業活動にもkintoneは使われている。営業担当者は写真を添えて搬入の相談をするようになり、現場はより早く、より正確な費用見積を出せるようになった。情報をきちんと共有することで受注までの時間が短くなり、経緯をあとで見返すこともできるようになった。
「これらを通して、営業、営業事務、現場が一丸となって業務に当たれるようになりました。まとまると、強くなる!を実感しています」(神戸氏)
今後は、社内にkintoneをもっと浸透させ、社外の人にもkintoneを紹介してkintoneの輪を広げていきたいと語る神戸氏。
「矢内石油さん、飯塚産業さんに出会ってきっかけをもらったように、今度は私たちが誰かのきっかけになりたいと考えています。kintone活用で悩んでいる方は、ぜひ連絡をください。処分場では施設見学も受け付けています」(神戸氏)
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