2022年8月10日、第2次岸田改造内閣がスタートした。
今回の内閣改造で、デジタル大臣に起用されたのは、河野太郎氏だ。
岸田首相は10日の記者会見で河野氏を任命した狙いについて、「諸外国から後れを取っている我が国のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を一気に加速するため、持ち前の実行力、突破力で進めてもらいたい」と期待感を示している。
「デジタル社会形成の司令塔」になるとして、デジタル庁が発足して9月で1年になる。
首相が認めるように、社会全体のDXにおいて諸外国から遅れている中で、デジタル庁は組織内の課題が指摘されている。
人事の混乱
報道で目立つのは、人事の混乱だ。
2022年4月には、大手メディア各社が相次いで「民間出身の職員の退職が相次いでいる」という趣旨の記事を掲載している。
4月19日の日本経済新聞は「会議が多すぎる。もう出たくない」などとして、10人近くが一斉に退職したと報じている。
4月26日には、同庁事務方トップの石倉洋子・初代デジタル監が退任した。
石倉氏はデジタル庁のブログで、「立ち上げフェーズから次の段階に入っていく時期」に「適切なタイミングで次の世代に引き継ぎたい」と説明している。
石倉氏はまた、このブログの中で「官民の多様なバックグラウンドの職員が集い協働する中、率直に言って、次から次へと多くの課題が登場しました」と組織内に課題があることを認めている。
退職者の大半は任期付
民間出身者の退職に関する、政府の公式な文書も存在する。
中谷一馬衆院議員(立憲民主党)の質問主意書に対して、政府側が6月24日付で出した答弁書だ。
政府の答弁書は難解で、いつも読解に苦労するのだが、この文書もかなり難しい。
まず、デジタル庁が発足した2021年9月から2022年5月までに、43人が退職している。退職者の内訳は次のようになる。
●民間出身:28人
●公務員出身:2人
●事務補助職員:13人
この数字をみて、半年で民間出身の人が28人も辞めた!と思うのは気が早い。実は、この数字には任期付職員が含まれている。民間出身者の任期付職員の退職状況は次のようになる。
●民間出身の任期付職員で退職した人:24人
●任期満了で退職:23人
●任期満了前に退職:1人
退職した28人のうち24人が任期付職員だったことはわかるが、残る4人はどんな就労形態だったのかは明記されていない。
長く働きたい職場ではない?
組織全体からみると、半年で28人が退職するのは多いのだろうか、そうでもないのだろうか。
先ほどの政府答弁書によれば、2021年9月から2022年5月までにデジタル庁の常駐の職員となった人は842人。内訳は以下のとおりだ。
●公務員出身:500人
●国家公務員試験でデジタル庁が採用:12人
●民間出身:269人
●事務補助職員など:61人
事務補助の職員を除くと、公務員出身者対民間出身者の比率はおおむね2対1程度になる。
民間出身の職員269人のうち、約10.4%の28人が半年程度で辞めている。これに対して、公務員出身者はこの間に500人中2人が退職しただけで、その違いは歴然としている。
ただ、情報通信業の離職率は11.8%(2018年)との厚労省の調査結果を踏まえると、それほど大量の退職者が出ているとまでは言えない。
退職者28人のうち、ほとんどが任期付職員で、おそらく任期を更新する選択肢もあったが、デジタル庁に残って仕事を続ける選択肢を選ばなかった人が多いということになるのだろう。
民間出身者が定着しづらい傾向の原因のひとつは、デジタル庁の採用方針にもあるだろう。
デジタル庁の中途採用のウェブページを見ると、2022年8月12日の時点で、43職種を公募している。
いずれの職種も、1年間の任期付で、「任期終了後も更新の可能性がございます」との注意書が付いている。
民間出身者のほとんどが任期付で入庁していることを踏まえると、実態としては、「とりあえず任期付で入ってみたけど、任期を更新して長く働きたいほど魅力的な職場じゃなかった」ということになるのではないか。
5月1日の共同通信によれば、2022年11月から12月にデジタル庁が内部で実施したアンケートでは、「やる気を失っている若手が非常に多い」といったコメントが寄せられたという。
こうした職場の不満に対しては、牧島かれん前デジタル大臣が4月の参議院の委員会で、次のように答弁している。
「民間企業で行っているようなワン・オン・ワンの議論を行なう場をつくっていることですとか、またオールハンズ、全職員がオンライン上で集って意見交換をしたり、又はチャットで情報共有をしたりということも大変盛んに行なわせていただいているところ」
デジタル改革を担うのはだれか
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