名古屋大学と東京大学などの共同研究チームは、可視光とマイクロ波の観測データを組み合わせることにより、世界で初めて、約120億年前の遠方宇宙における銀河周辺のダークマターの存在を検出することに成功した。この測定結果から遠方宇宙におけるダークマターの空間分布を調べたところ、標準宇宙論の予言と比べて分布のでこぼこが小さく、従来の宇宙像の転換を迫られる可能性(確率約90%)が出てきたという。
名古屋大学と東京大学などの共同研究チームは、可視光とマイクロ波の観測データを組み合わせることにより、世界で初めて、約120億年前の遠方宇宙における銀河周辺のダークマターの存在を検出することに成功した。この測定結果から遠方宇宙におけるダークマターの空間分布を調べたところ、標準宇宙論の予言と比べて分布のでこぼこが小さく、従来の宇宙像の転換を迫られる可能性(確率約90%)が出てきたという。 宇宙のダークマター分布は背景光源に現れる重力レンズ効果を用いて測定できる。研究チームは今回、「すばる望遠鏡」を用いた可視光撮像銀河サーベイで約150万個の120億年前の銀河を検出し、大規模な遠方銀河サンプルを作成。ビッグバン直後の熱い宇宙が放った「宇宙マイクロ波背景放射」を背景光源として用いて遠方銀河の重力レンズ効果を測定し、同銀河周辺のダークマターを検出した。宇宙マイクロ波背景放射のデータはESA(欧州宇宙機関)が打ち上げた宇宙望遠鏡「プランク衛星(Planck satellite)」の観測データを使った。 これまでに、銀河を背景光源とした重力レンズを利用することで、現在から80億年前までの銀河周辺のダークマター分布が測定されてきた。だが、それより遠方では、観測できる遠方銀河の数が少なく、背景高原として使える銀河がないといった問題があり、遠方宇宙のダークマター分布は測定されていなかった。今回の研究成果は、米国物理学会の雑誌、フィジカル・レビュー・レターズ(Physical Review Letters)に2022年8月1日付けで掲載された。(中條)