スマートフォンの出荷台数が下方修正されるなど、パッとしない話題が多いように見えるモバイル業界。だが、KDDIの大規模通信障害が示したように、モバイルは重要な社会インフラであり、進化が進んでいる。今回は通信機器大手のエリクソンが公表した最新レポートを紹介する。
5G加入者は早くも10億ユーザーに LTEは今年後半がピーク
エリクソンのモビリティレポートは、同社が2011年より定期的に作成しているモバイルについての包括的なレポートだ。今回紹介するのは、その最新版となる「Ericsson Mobility Report, June 2022」となる。
ヘッドラインはやはり「5G」。エリクソンによると、世界で210を上回る数の商用ネットワークがあり、人口カバレージは35%に達しているという。日本でも始まったスタンドアローン(SA)形式は12にまで達している。
その5G加入契約は2022年末に10億を超えるというのが、このレポートの重要なハイライトだ。
レポートを解説したエリクソン・ジャパンCTOの藤岡雅宣氏によると、加入者の増加という点で5Gは4Gよりも立ち上がりが良いとのこと。10億という大台に、5Gは4Gより2年早く到達する。
なお、LTE(4G)も当分は現役で、2022年第4四半期にピークを迎えると予想する。ピークの段階で加入契約数は50億。これを境に段々と5Gが優勢になり、2027年にLTEは35億、5Gは44億。全体の48%を占める。
料金プランのトレンドは?
世界では5Gについてプレミアム課金をするキャリアも多い
5Gの早い立ち上がりに貢献しているのは中国が大きいようだが、北米(米国・カナダ)もすでに20%が5Gと、5G先進国に位置づけられる。2027年に5Gが占める比率(予想)でも、米国は90%とダントツだ。一方で2021年段階ではまだ6%の西欧圏も、2027年には82%を占めると見込む。
北米、西欧に次いで5Gが占める比率が高くなると見込むのが、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)などのGCC(Gulf Cooperation Council)諸国だ。2027年に80%を占めると予想されている。GCC諸国は経済力がある上、固定網が整備されていない分、通信がモバイル中心になっているという背景がある。
日本、中国、韓国を含む北東アジアは、GCC諸国の次で、2027年には74%が5Gになると予想されている。なお、北東アジアでは人口あたりの5G基地局の数などで「日本の遅れが目立つ」と藤岡氏は語る。性能向上に大きく寄与するMassiveMIMOの導入遅れも指摘した。耐震などの制度の問題、国のインセンティブの程度などが原因だと分析している。
藤岡氏がレポートから紹介した動向で興味深いのが、5Gの提供形態。日本でもKDDIなどで見られるようになってきたが、5Gの料金プランではサービスベースのオプションをユーザーがアドオン的に選択するパターンが増えているという。基本となるデータ通信とは別にアプリケーションやサービスを時間や容量ベースで使用できるもので、ゲームや動画・音楽配信、教育などがあるという。たとえばVerizonでは、エンターテインメントとしてhulu、Disney+、ESPN+などのセット、さらに音楽サービスがついたものなどを「ミックス&マッチ」として選択できる。
また5Gについては、世界の35%のキャリアがプレミアム料金を課している。しかし、日本ではそのようなことは起きていない。藤岡氏は、日本で5Gでのプレミアム料金が一般的でないことについて「事業者の収益という点で懸念される」と吐露している。
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