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まろやかな味わいから、パンチの効いた骨太な一杯まで 武蔵野・多摩地区の家系ラーメン特集! 【ZATSUのオスス麺 in 武蔵野・多摩】第108回

2022年07月25日 12時00分更新

文● ZATSU 編集● ラーメンWalker

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 いまや一ジャンルとして確立した、大人気の「家系ラーメン」。

 私が初めて「家系ラーメン」を食べたのは、まだラーメンの食べ歩きを始めたばかりの頃、新横浜ラーメン博物館に出店していた「六角家」でした。

 麺の硬さ・油の量・味の濃さが選べると言われ、通ぶって「硬め多め濃いめ!」と伝えたところ、「うちはもともと油が多くてこってりしているから、初めてのお客さんは普通がオススメですよ!」と言われた事が強く記憶に残っていて、実際に普通でもこってりでパンチのある味に衝撃を受けた憶えがあります。

家系ラーメンの始祖「家系総本山 ラーメン吉村家」

 「家系ラーメン」とは、神奈川県横浜市の「吉村家」が発祥で、豚骨醤油ベースのスープに鶏油を浮かべ、トッピングはチャーシュー・ほうれん草・海苔3枚という特徴を持ったラーメン。(海苔の枚数などお店によって多少の違いはあります)

 「豚骨醤油」と言っても豚骨のみで出汁をとっているところは意外と少なく、多くのお店は鶏ガラもたっぷり加えています。

 そして麺は中太のストレート。吉村家と同じ「酒井製麺」の、厚い麺生地を細い切り刃の中でカットする事で幅と厚さが逆転する「逆切り(縦切り)」という製法を用いた独特な食感の麺を使用しているお店が多いのも特徴の一つ。

 吉村家を総本山とし、そこから枝分かれしたお店や亜流のお店などたくさんの店舗が点在し、 元々は屋号に「○○家」と付いているところが多かったことから、「家系ラーメン」と呼ばれるようになりました。

 一般的には「家系」と書いて「かけい」と読みますが、ラーメン店の屋号では「○○や」と読むお店が大半で、ラーメン業界において「家系」は「いえけい」と読みます。

吉村家直系ではない家系ラーメン店の代表格「町田商店」

 総本山の「吉村家」を筆頭に、家系図のように枝分かれした数多くの家系ラーメン店がありますが、最近巷でよく見かける「家系最強!」など力強い字体で書かれた「○○商店」「大和家」「壱角家」などは、吉村家とは全く繋がりのない亜流タイプ。

 横浜「壱六家」から派生し、「町田商店」→「○○商店」や、「壱七家」→「大和家」など多店舗展開をしていて、クリーミーでまろやかな豚骨ベースのスープにウズラの味玉がトッピングされるのが特徴。

 セントラルキッチンで生産されたスープを使用しているので、吉村家の流れを汲むお店や個人店と比べてどうしても低く見られがちではありますが、臭みやクセが無くシチューのような濃厚感を楽しめる味わいはファンも多く、大箱のお店が多いので家族連れや大人数でも入れるお店として人気となっています。

 ただ、町田にある「町田商店 本店」のラーメンは他の支店とは全く違った骨感を楽しめるスープとなっているので、是非一度食べてみてもらいたい一杯となっています。

 さて、ここからは武蔵野・多摩地区にあるオススメの「家系ラーメン」を。

 総本山である「吉村家」、一番弟子として独立しながらも直系と認められなかった「六角家(閉店)」、吉村家の暖簾分け1号店である「本牧家」の3店が『家系御三家』と言われていますが、今回はその関係性なども交えて紹介していきます。

【吉祥寺 武蔵家】

JR中央線・京王井の頭線「吉祥寺」駅南口から徒歩5分

 「六角家」出身の方が共同経営で立ち上げたお店。

 現在は「六角家」系譜ではありませんが、豚骨臭全開でパンチのある豚骨醤油スープと大橋製麺多摩の太麺を合わせたインパクトのある一杯を堪能できます!

【洞くつ家】

JR中央線・京王井の頭線「吉祥寺」駅南口から徒歩2分

 「六角家」出身の方が共同経営で立ち上げた「吉祥寺 武蔵家」から独立した、「六角家姉妹店」を謳うお店。

 骨感とクリーミーさを併せ持った濃厚な豚骨醤油スープに、しっかり茹で上げた酒井製麺の太麺を合わせた濃厚かつ食べやすいバランスの一杯!

【横浜家系ラーメン 武蔵家】

武蔵野・多摩地区では、画像の秋津店・三鷹店・武蔵境店・東小金井店・国領店の計5店舗

 「六角家」出身の方が立ち上げた「たかさご家」というお店が横浜にあり、その「たかさご家」出身の方が新中野で立ち上げた「横浜家系ラーメン 武蔵家」。

 「吉祥寺 武蔵家」とオープン日が近く、たまたま店名が被ってしまったというレアケース。

 ライス無料&きゅうりのキューちゃん食べ放題というスタイルで家系とライスを定番化させた名店で、現在は各地に支店や出身店があり、家系ラーメンの名を広めた立役者の一店とも言えます。酒井製麺の太麺を合わせた濃厚かつ円やかな一杯が特徴的!

【横浜らーめん 若武者】

京王線・JR南武線「分倍河原」駅から徒歩1分

 新中野系「武蔵家 稲田堤店」出身の方が立ち上げたお店。

 「武蔵家」の味を踏襲しながらも、ゴリゴリした骨感や強めの醤油感とたっぷりの鶏油を効かせたスープに、しっかり茹で上げた酒井製麺の太麺を合わせたインパクトのある一杯!

【武道家】

JR中央線・京王井の頭線「吉祥寺」駅南口から徒歩2分

 新中野系「武蔵家」出身の方が立ち上げたお店。

 「家系」の枠を逸脱したような、豚骨ラーメンのように力強く炊き出されゴリゴリした骨感のある赤茶けた超濃厚スープが特徴的で、酒井製麺の太麺がベストマッチな一杯!

【横浜家系ラーメン おか家】

JR青梅線「小作」駅東口から徒歩3分

 新中野系「武蔵家」系列で瑞穂町にある「湘南乃家」出身の方が立ち上げたお店。

 「湘南乃家」の味を踏襲しながらも、まろやかさやクリーミーさを加える事で食べやすいバランスのスープに仕上げ、酒井製麺のモチモチした太麺がマッチする一杯!

【らーめん 武虎家 暁】

京王線「仙川」駅から徒歩4分

 新中野系「武蔵家」出身で、関西の名店「無双家」「教道家」などを渡り歩いた方が立ち上げたお店。

 ポッテリした口当たりの濃厚感に濃いめの醤油感でパンチを出したスープに酒井製麺の幅広太麺がマッチし、燻製された豚モモ肉がトッピングされた本格派の一杯!

【横浜ラーメン 町田家】

JR横浜線「町田」駅ターミナル改札口から徒歩2分

 「たかさご家」出身の方が立ち上げたお店。

 ゴリゴリした骨っぽい豚骨の旨味がしっかり抽出された出汁にガツンと濃いめの醤油感を効かせ、それらをまろやかな鶏油が包み込んだインパクトがありつつもバランス良く仕上げたスープに、モッチリした酒井製麺がマッチした一杯!

【横浜家系ラーメン せいせき家】

京王線「聖蹟桜ヶ丘」駅から徒歩2分

 「町田家」出身の方が独立して立ち上げたお店。

 どっしりした骨太な豚骨感とやや重みのある鶏油のこってり感に、しょっぱく感じる位の強い醤油感を合わせたインパクトのあるスープに、やや細めな酒井製麺の麺を合わせた一杯!

【究極ラーメン 髙根家】

京王線「北野」駅中央南口から徒歩5分

 「吉村家」で修業し「本牧家」にも携わり、「横濱家」「介一家」なども立ち上げた方が自らのお店として立ち上げた「近藤家」。その「近藤家」出身のお店で、棒高跳びでモントリオールオリンピックにも出場した高根沢威夫さんが店主を務めています。

 比較的ライトな豚骨感ながらも、キュッと引き締まるような強めに効かせた醤油ダレとまったりした旨味たっぷりな鶏油が合わさり、酒井製麺のモッチリした幅広めの麺が合わさったシャープな仕上がりの一杯!

【ラーメン 大山家】

画像の武蔵境本店のほか、昭島にも支店を構える

 「近藤家」出身の方が立ち上げたお店。とき卵を加えた大山家オリジナルの「とき卵ラーメン」が名物となっていて有名ですが、とき卵の入らないラーメンも秀逸!

 豚骨臭を楽しめるどっしりした濃厚感のスープに甘味のある円やかな醤油ダレを合わせ、山正食品特注の太麺がベストマッチな一杯!

【武蔵境 つばさ家】

JR中央線「武蔵境」駅北口から徒歩5分

 「六角家」出身の方が立ち上げた「立川 つばさ家」から独立したお店。

 濃厚過ぎずにコクと旨味を引き出したバランスの良いスープに、モチモチした三河屋製麺の太麺を合わせた凄く食べやすい味わいの一杯!

【梅浜亭】

JR青梅線「河辺」駅南口から徒歩13分

 「さつまっ子」で修業された方が立ち上げた「とんぱた亭」。その「とんぱた亭」出身の方が立ち上げたお店。

 「とんぱた亭」は家系御三家との繋がりは無く、家系ラーメンを謳っているお店では無いですが、広義に解釈すると家系ラーメンに属するお店。

 丁寧に炊き出された優しい濃厚感のスープは丼になみなみとたっぷり入り、柔らかめに茹で上げられたツルモチな酒井製麺の太麺が泳ぐ一杯!

【ラーメン 前原軒】

JR中央線「武蔵小金井」駅南口から徒歩20分

 こちらも家系御三家との繋がりはありませんが、「吉村家」を始めとする本流の家系ラーメンへのリスペクトを込めて作られたラーメンを提供しており、豚骨の名店「田中商店」の田中店主が味作りをされたお店。

 サラッとした中にまったりした濃厚な旨味が感じられる豚骨に、ちょっとしょっぱいかな?という位の濃さだけどほんのり甘味を感じるような醤油ダレがビシッと効かせてあって、硬めに茹でられた大長軒食品の太麺や薫香を楽しめる焼豚を合わせたインパクトのある味わいを楽しめる一杯!

【らーめん たま家】

京王相模原線「京王多摩センター」駅、小田急多摩線「小田急多摩センター」駅から徒歩10分

 「吉村家」出身で、のちに「六角家」を立ち上げた方が店長を務めた「吉村家」の暖簾分け1号店である「本牧家」。その「本牧家」で修業された方が独立して立ち上げたお店。

 背脂豚骨ラーメンに通ずるような、まったりしたコクのある濃厚さに醤油ダレがやや強めに効いてキリッとしたスープに、少し硬めに茹で上げられた酒井製麺の中太麺が合わさった食べやすい一杯!

※店舗改装工事のため、8月1日(月)〜11日(木)まで休業

【ラーメン 奥津家】

JR横浜線「古淵」駅から徒歩10分

 「本牧家」出身の「寿々㐂家」で修業された方が独立して立ち上げたお店。

 滑らかな口当たりながら濃厚感は高く、ほんのり甘味を感じる醤油ダレとコクのある鶏油のこってり感がバランス良く合わさったスープに、酒井製麺の中太麺をしっかり茹でて麺のポテンシャルを引き出した、全体のバランスが抜群な一杯!


 現在、武蔵野・多摩地区にはそれこそ数え切れない位の「家系ラーメン」が存在しています。

 今回紹介したお店は、あくまでも私が食べてきた中でのオススメのお店であり、しかも本当はもっともっとオススメしたいお店がたくさんあったのですが紹介しきれない程でした。

 一括りに「家系ラーメン」と言っても、まろやかなものもあればゴリゴリした骨太なものやしょっぱいものなど、お店によって様々な個性が感じられます。

 私自身、今回このコラムを書くにあたって改めて色々な「家系ラーメン」を食べ歩いてみましたが、ビジュアルが似ていても明らかにそれぞれの味が感じられて、「あ、このバランス好きだな」「これしょっぱいけどウマいな!」と、様々な比較ができて楽しかったです。

 みなさんも是非、色々な「家系ラーメン」を食べて好みのお店を見つけてください!


 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。詳しくは各店舗にご確認ください。

ZATSU

2006年に開設したブログ「ZATSUのラーメン」の管理人。武蔵野・多摩地区を中心にしたラーメン食べ歩きを始めて15年以上。現在は年間400〜500杯程度を食べ、新店コレクターでありながらも老舗店やリピートするお店も多数あり。チェーン店からファミレス、カップ麺までも愛する真性の「ラーメン好き」で、基本的に何でも美味しく食べられる幸せ者。「自分の好みのラーメンを見つけて欲しい」と言う思いをモットーに色々なラーメンを紹介していきます。

本人ブログ(https://zatsu-ke.blog.jp/

本人Twitter @zatsu_ke

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