業務を変えるkintoneユーザー事例 第136回
営業の業務にkintoneを導入したことで、業績に直結する改善を実現
“個人商店”だったFM局の営業部門がkintoneで“チーム”に変わった
2022年06月20日 10時30分更新
kintone研究チームでは、kintoneをどのように活用していきたいかを具体的に検討していった。その結果、6つのテーマを導き出した。
①各営業部員の業務(企画書や決定金額など)すべてをデータで蓄積したい
②個別の受注・失注に至った経緯(打ち合わせ内容など)を詳しく残したい
③外勤と内勤との間のやりとりを効率化したい。(伝票のシステム化)
④クライアントや広告代理店の情報をどこでもすぐ確認できるようにしたい
⑤会議資料は全て紙に印刷していたが、各々のPCで見られるようにしたい
⑥出社しなくても、在宅勤務やリモートワークができる環境にしたい
佐藤氏は上記のテーマの中から、①~③が関係する中心的な業務である案件管理の改善例について説明した。FM局が広告クライアントのCMを放送するまでには、クライアントから広告代理店経由でCMの依頼が届き、ZIP-FMの外勤営業担当者が内勤の業務部門との間で放送枠の調整などのやりとりを行い、オンエアされるプロセスをたどる。
「外勤営業と内勤部門のやりとりは、従来はExcelなどの簡単な情報しか伝えられていなかった。広告主の名前や金額など最低限の情報しか共有されておらず、広告が決まった過程に何があったのかがまったくわからなかった。さらに、失注した場合の理由も、何も残っていなかった」(佐藤氏)
過去の案件から営業のヒントを得る
そこでkintoneを使い、営業部員1人1人が担当する案件の情報を一元化した。内容は、欲しかった商談の経緯も含めて記録できるようにした。
「記録だけでなく、広告案件に関連する企画書や見積書などのさまざまな資料も、案件といっしょに登録できるようにした。私のような異動したてで業務経験が乏しい社員にとって、過去の資料を見て参考にすることは非常に重要。資料が圧倒的に探しやすくなり、助かっている」(福本氏)
Excelに入力していたころと違い、入力ミスも大きく減ったという。また、その案件の受注までにどういうことがあったかをメモ代わりに記録することで、活動履歴を残すことができ、他の部員の記録もすぐに読めるようになってコミュニケーションが深まったと、福本氏は感じている。また、内勤と外勤がやりとりしていた内容を、コメント欄に集約することができるようになり、確認が容易になった。
さらに、案件情報をkintoneに入力して、そこからボタンを押すだけで自動的に伝票が作成されるようになった。福本氏は自ら「イチオシ機能」という。案件管理については、自然に情報共有が進むようになった。Excelへの入力が不要となり、ミスも少なくなった。また内勤と外勤、営業部員間などの意見交換が活発になり、仕事がスムーズに進むようになったことで、働き方改革が一歩前進したという。
前記のテーマ④についても、大きく進展した。同社は約4500社のスポンサー、約1000人の代理店のデータベースを持っている。これをkintoneに移行し、案件管理と結びつけることで、案件情報からスポンサーや代理店の情報がすぐにわかるようになった。案件管理とスポンサー、代理店管理をkintoneで動かしているうちに、部員の中に「業務を改善したい」という気持ちが芽生えてきた。そこから、さまざまな活用事例が新たに生まれている。
「営業部では、クライアントや代理店向けにCM出稿をお勧めするセミナーを定期的に開催しているが、その申し込み者の管理をkintoneで作成している」(福本氏)
Webフォームから参加者の名簿を自動作成できるようになり、参加者への連絡は、サイボウズの「メールワイズ」を使って一斉送信が可能になった。また、kintoneの「スペース」を使って、営業情報の共有に役立てている。過去の案件情報をキーワード検索できる機能も追加した。
佐藤氏は、kintone導入による効果を次のように説明した。「情報の属人化、ブラックボックス化が解消し、引き継ぎがスムーズに進むようになった。業務の効率化が進み、リモートワークも円滑に進むようになった。ペーパーレス化にもつながっている」。今後のkintoneの展開は、名刺管理アプリと連携させたり、決済承認機能の追加などを採り入れようと検討している。
「当社は民間FM放送であるため、広告収入によって事業が成り立っている。その中核が、私たちの所属する営業部門だ。営業の業務にkintoneを導入したことで、業績に直結する改善が果たせたと感じている」と佐藤氏は語った。
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