東北大学とキリンホールディングスの研究グループは、抗菌性を持ったナノ粒子状ポリマーの合成に成功した。銀や銅などの金属元素に抗菌作用があること、これらの金属をナノ粒子状にすることで抗菌作用がさらに高まることは知られているが、一部の金属が希少で高価であることと、製造工程の途中でナノ粒子が凝集して失活しやすいといった問題があった。
東北大学とキリンホールディングスの研究グループは、抗菌性を持ったナノ粒子状ポリマーの合成に成功した。銀や銅などの金属元素に抗菌作用があること、これらの金属をナノ粒子状にすることで抗菌作用がさらに高まることは知られているが、一部の金属が希少で高価であることと、製造工程の途中でナノ粒子が凝集して失活しやすいといった問題があった。 研究グループは、プラス電荷を有する有機ポリマーにも、金属成分のような抗菌性があることに着目。プラス電荷を持つポリマーをナノ粒子として合成できれば抗菌性がさらに高くなると考えた。 ナノ粒子の合成には、界面活性剤を使用しない「ソープフリー乳化重合」と呼ぶ手法を使用した。この手法で重合できるポリマー粒子は、ほかの方法に比べて粒子表面に現れる分子の数が少ないため、原料となる分子の種類や量の影響が粒子表面に現れやすい特徴がある。 材料としてイミダゾリウム骨格を有するカチオン性ラジカル重合開始剤(ADIP)とスチレン、カチオン性コモノマー(VBTMAC)を使用。コモノマーの濃度を変化させることで、粒径が揃った粒子を得ることに成功している。コモノマー濃度を変えたり、ADIPの代わりに市販の重合開始剤を使用してナノ粒子を重合して比較してみたところ、抗菌性を持たせるにはADIPとVBTMACの両方を使うことが必要であることも分かった。(笹田)