スマホで肥大化する大容量データを外付けSSDに逃がすのが思いのほか便利だった件(2022)

2022年06月03日 12時46分更新

文●平澤寿康　編集●北村／ASCII

UHS-I DDR200とは

　Samsungの最新microSDカード「microSD PRO Plus」で速度検証する前に、「UHS-I DDR200」について解説しよう。

　SDカードには、電力を供給したり、データを転送したりするための端子類「バスインターフェース」が裏面に用意されている。そのバスインターフェースの仕様は、SDカードの標準化団体「SDアソシエーション」によって細かく定められている。下表にまとめたのがその内容だ。

SDカードのバスインターフェース仕様表
バスインターフェース	バススピード
ノーマルスピード	12.5MB/s
ハイスピード	25MB/s
UHS-I	50MB/s(SDR50, DDR50) 104MB/s(SDR104)
UHS-II	156MB/s Full Duplex 312MB/s Half Duplex
UHS-III	312MB/s Full Duplex 624MB/s Full Duplex
SD Express	985MB/s(PCIe Gen.3×1Lane) 1970MB/s(PCIe Gen.4×1 Lane/PCIe Gen.3×2 Lane) 3940MB/s(PCIe Gen.4×2 Lane)

　このようにバスインターフェースには多くの仕様が定められており、それぞれにデータ転送速度が大きく変わることがよくわかるだろう。そして、現在市販されているSDカード/microSDカードや対応機器は、その大多数がUHS-Iに準拠したものとなっている。

　UHS-Iのデータ転送速度は、UHS-I SDR104という規格で最大104MB/sとなっており、UHS-I SDR104対応のmicroSDカードの中には4K動画をリアルタイム録画できる十分な転送速度を誇る製品も存在している。ただ、上位のバスインターフェースと比べると速度が見劣りするのも事実だ。

　そこで、UHS-Iの仕様を満たしつつ、より高速なデータ転送を可能とする規格が「UHS-I DDR200」というものだ。UHS-I DDR200では、簡単に言うとバスインターフェースから供給されるクロックの2倍で動作させることにより、転送速度を高めたものとなっている。これにより、UHS-Iで規格化されている上限速度の104MB/sを超えるデータ転送速度を実現している。

SamsungのUHS-I DDR200対応microSDカード「microSD PRO Plus」。リード最大160MB/s、ライト最大120MB/sの高速アクセスが可能だ

　UHS-I DDR200に対応する「microSD PRO Plus」のデータ転送速度は、リード最大160MB/s、ライト最大120MB/sに達している。UHS-I SDR104に対応する旧モデル「microSD PRO Plus」が、リード最大95MB/s、ライト最大90MB/sだったことを考えると、大幅に高速化していることがわかるだろう。

　なお、「microSD PRO Plus」は、スピードクラスがClass 10、U3、V30、アプリを快適に利用するために策定された規格「アプリケーションパフォーマンスクラス」は最新のA2に対応する。加えて、防水、耐熱、耐X線、耐磁、耐落下、耐摩耗という6種類の保護機能も備えているため、過酷な環境でも安心して利用できる点も大きな特徴となっている。容量は128GB、256GB、512GBの3モデルを用意している。

UHS-I DDR200対応のカードリーダーで
最大限の速度を引き出す

　ところで、UHS-I DDR200の速度を最大限発揮させるには、SDカードリーダーがUHS-I DDR200に対応している必要がある。ただ残念ながら、現在市販されているスマホの中で、UHS-I DDR200対応のmicroSDカードスロットを備える製品は存在しておらず、そのままではUHS-I DDR200対応microSDカードの速度が最大限引き出せない。

　また、近年ではGoogleの「Pixel」シリーズをはじめ、microSDカードスロットを省いたスマホが多くなっている。そういったスマホでmicroSDカードを利用するには、USB端子にmicroSDカードリーダーを装着して使う必要がある。

　今回はUHS-I DDR200対応カードリーダーを代表して、市販されているDelkinの「DDREADER-55」を使用した。UHS-I DDR200の速度を検証する記事でも使用していたが、しっかりUHS-I DDR200対応microSDカードの性能を引き出せている。