6月11日(米国時間)、グーグルは開発者会議「Google I/O 2022」の基調講演を行った。ここ数年、コロナ禍ということで、中止になったり、オンラインでの開催であったが、今年はオンラインがメインでありながら、会場には一部の開発者が集うなど、かつての雰囲気が戻りつつあった。
通常、Google I/Oの基調講演は同社のAIやサービスの進化が語られ、ハードウェアはスマートフォン・Pixelのaシリーズが披露される程度であった。しかし、今年は「Pixel祭り」といえるほどハードウェアの新製品発表が盛りだくさんであった。
発表されたハードウェア群を見ると、グーグルの「方向転換」が見えてくるような気がしてならない。米中の禁輸措置とコロナ禍によって、グーグルのハードウェア戦略が変わってきたのだ。
まず、注目したいのがタブレットだ。グーグルは2023年にタブレット「Pixel tablet」を発売すると予告した。まさか下手をしたら1年、早くても半年近く先に発売になる製品を、このタイミングでアナウンスするとは思わなかった。
しかも、グーグル自体が自身のブランドでタブレットを手がけてくることが「予想外」に感じたのだった。
実は筆者はコロナ禍になる前は毎年、Google I/Oには現地に取材に出かけていた。その際、グーグルの幹部と懇談できる会があるのだが、今回の基調講演でもハードウェアのプレゼンをしていたリック・オステルロー氏に数年前「グーグルはタブレットをどうするつもりなのか」と単刀直入に聞いたことがあった。その際、オステルロー氏は「Androidタブレットはやらない。Chromebookで市場を獲っていく」と語っていたのだ。
確かに当時からアメリカの教育市場を中心にChromebookはよく売れていた。一方でAndroidタブレットは中国メーカーを中心に安価な製品ばかりが並び、メーカーにとって儲からないデバイスとなっていた。利益の出ないAndroidタブレットより、すでに市場ができているChrombookに注力する方が現実的なのは納得であった。
あれから3年以上が経過し、突然、グーグルは「自分たちでもタブレットをやる」と言い始めた。何があって、彼らはタブレットに注力するようになったのか。
ひとつにはコロナ禍によって、タブレットの需要が高まったというのが大きいだろう。自宅でビデオ会議に参加したり、Netflixを見るのにタブレットはちょうどいいデバイスだ。アップルのiPadがバカ売れしている様子を見て、グーグルも考えを改めたのだろう。
今回の基調講演ではAndroid 13の中身も公表されている。Android 13では大画面ディスプレイを意識して、画面を半分に割り、2つのアプリを同時に開き、ファイルをコピーできると言った、まるでiPadOSのようなユーザーインターフェースが採用されていた。
大画面の操作性を向上させることで、タブレット市場においてAndroidを再び、存在感のあるものにしたいようだ。