元ウォーカー総編集長・玉置泰紀の「チャレンジャー・インタビュー」番外編
没後50年 美人画だけじゃない鏑木清方の画業の神髄に触れる
令和4年は、鏑木清方(1878-1972)の没後50年目にあたり、竹橋の東京国立近代美術館で、約110点の日本画作品による大規模な回顧展が始まったので、大ファンとしては気もそぞろに、さっそく内覧会に駆けつけた。東京に続いて京都国立近代美術館と2館で巡回されるが、どちらの公式サイトも、「上村松園」に触れられていて、上村と”並び称された美人画家として定評のある”画家という振りがあるのだが、それだけじゃあないよ、というのが今回の展覧会の肝だ。即ち、美人画というジャンルに収まらない市井の人々の生活、人生の機微を描き込んだ鏑木の画業の全貌の一端に触れられる展覧会になっている。東京国立近代美術館のサイトの結びがいい。
”この展覧会を見たら、もう、上村松園と区別がつかないなんて言わせません”
今回も勿論、1975年以来 44 年もの間、所在不明となっていたものを、2018年に、東京国立近代美術館が新収蔵して大きな話題になった『築地明石町』が全期間展示される。そして、見逃せない作品と言えば、鏑木が自ら最高評価をしていた『ためさるゝ日』。左幅公開は30年ぶり。右幅と並んでの公開は40年ぶりになる。
鏑木清方自らのの星取で画家の頭の中に入ってみよう
今回の展示で注意をして見てもらいたいのは作品の近くに掲示してある、題名、制作年、所蔵などを書いたクレジットである。何故か。そこには星取がついているからだ。全部ではない。大正後半からの8年間、鏑木は自分の制作控帳に記録した自作500点余りに、二重丸(会心の出来)、中黒丸(やや会心の出来)、〇(普通の出来)と記していたのだ。これらをそれぞれ、★3つ、2つ、1つで書き加えてある。もちろん、制作控帳に付けていない時期のほうがずっと長いので、★の無いものがほとんどだが、今回は、自己評価の高かったものを集めており、探すのも一興だろう。今回の出品作では、全部で23点に★がついている。ちなみに、★3つは500点全体の中でも16作品にしかつけられていない。
また、鏑木は若くして挿絵画家として一世を風靡したこともあり、過去の展覧会では、挿絵が展示されることが多かったが、今回は敢えて、文部省美術展覧会の設立(1907年)を契機に日本画に転向した畢生の日本画のみおよそ110点を集めた。
東京と京都では展示作品や展示方法も変わるが、東京では、3つのテーマに分けて展示される。「生活をえがく」「物語をえがく」「小さくえがく」の3章だ。
東京国立近代美術館の鶴見香織・主任研究員は図録の中で、鏑木が「新浮世絵」や「社会画」という造語で表現していたものは、表層的な社会性ではなく、「ひとことで言えば、庶民生活の日常の情景だ」と指摘している。詳細に見ていくと、当時の生活が極めて精緻にトレースされていることが、そこここに見て取れる。このあたりは幅広く集められた今回の展示作品をぜひじっくり見てほしい。
<主な出品作>
<鏑木清方グッズ>
<音声ガイドナビゲーターは歌舞伎俳優の尾上松也さん>
開催概要
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
会期:3月18日~5月8日(京都会場は5月27日~7月10日)
休館日:月曜(ただし3月21日、28日、5月2日は開館)、3月22日
開場時間:9時30分~17時(金・土曜は9時30分~20時)
※入館は閉館30分前まで
※本展会期中に限り9時30分開館(ただし「MOMATコレクション」、コレクションによる小企画「新収蔵&特別公開|ピエール・ボナール《プロヴァンス風景》」は10時開場)
観覧料:一般 1800円(1600円)
大学生 1200円(1000円)
高校生 700円(500円)
※( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
※中学生以下、障がい者手帳を持っている人とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障がい者手帳等を提示。
※本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)、コレクションによる小企画「新収蔵&特別公開|ピエール・ボナール《プロヴァンス風景》」(2F ギャラリー4)も見ることができる。
美術館へのアクセス:東京メトロ東西線竹橋駅 1b出口より徒歩3分
公式サイト:https://kiyokata2022.jp/
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