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MITテクノロジーレビュー[日本版]は印刷版マガジン『Vol.6 世界を変えるイノベーター50人』を3月15日に発売した。今号の狙いと主な内容を紹介する。
新型コロナウイルス感染症の迅速検査キット、メッセンジャーRNAを利用したがん治療、日本発のループ型光量子コンピューター、中国が建造中の「人工太陽」——。一見ばらばらに見えるこれらは、いずれもMITテクノロジーレビューが2021年に選んだ「35歳未満のイノベーター」たちが取り組んでいるイノベーションの一部だ。
MITテクノロジーレビューは、創刊100年の節目となる1999年から20年以上にわたり、テクノロジー分野での優れたイノベーターたちを「Innovators Under 35」(35歳未満のイノベーター、当初は「TR35」)として毎年発表してきた。1999年の誌面を飾ったのは、元アップルのジョナサン・アイブやアイロボットのヘレン・グライナー、リナックス開発者のリーナス・トーバルズら。その後も、グーグルのセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジ(2000年)、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ(2007年)、ツイッターのジャック・ドーシー(2008年)、スポティファイのダニエル・エク(2012年)など、のちに大きな成功を収めることになる数々の著名人たちが登場している。
なぜ、若きイノベーターたちにスポットライトを当てるのか。1999年に企画を立ち上げた当時のジョン・ベンディット編集長は、「若い人たちは成長分野を見極めることを急務としています。彼らは自らの選択に将来のキャリアを賭けているからです。彼らのプロフィールを読むことは、テクノロジーの『ホット・ゾーン』、つまり優秀な人材が今後10年間で成果を上げると確信している分野を巡るガイドツアーとなります」と述べている。
もちろん、いかに優秀で才能あふれる人であっても、必ずしも成功者になれるわけではない。実際、2012年のTR35の1人である義足エンジニアの遠藤 謙氏は、同時期に選出された起業家のその後の失速を目の当たりにし、「どんなにすごいライジング・スターであっても失敗することがあることに衝撃を受けた」と語っている。成功が保証された人など、どこにもいないのだ。 それでもなお、私たちがあえてこのリストの発表にこだわるのは、困難な時代にあっても果敢に挑戦し、次代を切り開いていこうとする若い力とテクノロジーの持つ可能性を信じているからだ。
本特集号では、2021年にMITテクノロジーレビューが選んだ「35歳未満のイノベーター」のグローバル編35人と、日本編15人の合計50人を紹介している。リストを通じて、今最も注目すべきテクノロジーの「ホット・ゾーン」はどこか、その最前線にいる担い手たちは誰か、確かめてほしい。
(MITテクノロジーレビュー[日本版]編集部)
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.6
世界を変えるイノベーター50人
- 定価:2,420円(本体2,200円+税)
- 発売日:2022年3月15日(印刷版)/3月23日(電子版)
- 判型:A4判/128ページ
- 形態:ムック(雑誌扱い)
- 発行:株式会社角川アスキー総合研究所
- 発売:株式会社KADOKAWA
- 雑誌コード:63692-98/ISBN:978-4-04-911093-7
Vol.6の主な収録記事
■世界を変えるU35イノベーター[日本編]
量子コンピューターの実用化、介護の変革、農業のデジタル化など、多様なジャンルで社会課題に向き合い、柔軟な発想でその解決に挑む若き研究者や起業家たち。本特集では、次世代を切り開いていく日本発の15人について紹介する。
世界を変えるU35イノベーター[グローバル編]
グーグルが採用した人工音声技術の開発者、中国の「人工太陽」の理論モデルを確立した研究者、mRNAを応用したがん治療を目指す起業家など、欧州、米国、アジア、MENAなどの各地域から選出された世界のイノベーター35人を紹介する。
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スイス連邦工科大学チューリッヒ校で、バイオセンサーを使った脳のブラックボックスの解明に取り組み、「35歳未満のイノベーター」グローバル編に日本出身者として8年ぶりに選出された中塚菜子。研究内容とビジョンなど単独インタビューを実施した。
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