IoT通信に必要な要素をいま改めて考えてみる

ソラコムの2人に聞いた そもそもIoTの通信ってなに?

大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: ソラコム

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既存のスマホの通信とIoTの通信はどこが違うのか?

大谷:続いて「じゃあIoTの通信ってなんですか?」という話ですね。実はIoTみたいな概念って、けっこう以前からあって、M2M(Machine to Machine)みたいな用語もあったわけですけど。

松下:IoTとM2Mの違いという話だと、M2Mの場合は物流網っておおむね企業が自前で構築するものだったりします。でも、IoTって既存のインフラを活用する。個人が自分で物流網を作るわけではなく、コンビニへ行って、宅配業者に荷物を運んでもらうイメージです。

M2MとIoTの違い

そのときにIoTに必要なものって、個人でも、少量でも、送れる仕組み。今までそれがなかったし、だからソラコムがんばってますという話になります。昨今は手軽に送ることができるようになってきたので、その先の、どうやって梱包するか、盗難を防止するかみたいな話にフォーカスが移ってきており、IoTが普通になり始めたと実感する背景でもありますね。

大谷:そうなるとIoT向けの通信って、スマホと同じ通信じゃダメなのかとかという疑問が出てくると思います。

松下:IoT通信と通常の通信の違いとしては、データの流れ方が違うと説明してます。

人間が使うスマホの通信って、一般論としてはクラウド上のコンテンツを消費するのがメインです。だから、スマホ向けの通信プランは、おおむねダウンロードの快適性やリーズナブルさを打ち出しているものが多いと思います。

ひるがえってIoTの通信は「現場をデジタル化して、クラウドにデータを溜める」ことが多い。実際、カメラの例では、クラウドで解析するためにデータをアップロードします。そうなると、人向けに提供されてきた通信と技術的には同じだけど、データの流れ方が異なるので、求められる機能や通信プランも異なってきます。これが最大の違いですね。

人向けとIOT向けの通信特性の違い

桶谷:アップロードが前提という点は確かにありますね。あと、理想論で言えば、本当はデータを全部アップロードして、クラウドで解析した方がデータ活用はしやすいのですが、現時点で全データをアップするのはコストがかかりすぎてしまう。そのため、IoTではアップロードすべきデータを絞りましょうという考え方が出てきます。ここまでシビアに通信の制御に気を配るのは、IoTならではだと思っています。

大谷:たとえば、人間が使うスマホのダウンロードって、CDNでのキャッシュが効くじゃないですか。でも、IoTのデータって少量だし、アップロードするのも初めてだったりするので、おそらくキャッシュが効かないんですよね。そういったところも、既存のシステムとの大きな差異ではないかと。

松下:すでにある公衆網を利用して、安価に利用できるネットワークという点だと、たとえばIP-VPNのようなサービスがあるじゃないですか。ローカル5Gや閉域網ってその感覚に近いんですよね。本当の意味で自ら全部ネットワーク構築しなければならない時代も過去にはあったのですが、やりたいことが安価なインフラの上でできるようになってきている。だから、将来的にはインターネットをうまく利用しつつM2Mを実現する可能性が今後ありうる。

逆に言えば、人類全員がスマホを持っても70億超ですが、その数十倍、数百倍のデバイスのトラフィックを今後さばかなければならない時代が来る。昔、同時アクセスが1万クライアントを超えると、Webサーバーのレスポンスが急激に下がってしまうC10K問題とかあったじゃないですか。IoTにおいても同じで、デバイスが爆発的に増えると、送受信しているデータ量は大きくないのに性能が出ないみたいな、未知なる課題は確実に顕在化してくると思います。

BluetoothやWi-Fiよりセルラーの方が向いている理由

大谷:IoTというと、Bluetoothとか、Wi-Fiを思い浮かべる人、多いと思うんですよね。なぜIoTの通信って一般的にセルラーなんでしょう?

桶谷:両方ともスマホには標準搭載されているし、身近にはなっているんですが、つなぐための設定という手間が必ず発生します。でも、セルラーってSIMを挿して、電源を入れれば、通信が始められるように構成できます。

大谷:導入の問題ですね。

桶谷:あと、セルラーってSIMの先にはキャリアの基地局があるわけですが、BluetoothやWi-Fiの場合、ゲートウェイやアクセスポイントを自分で用意しなければなりません。正直、私はセルラーでも、Wi-Fiでも、Bluetoothでもなんでもいいと思っていますが、自前でWi-Fiルーターを用意してネットワークを構築するのは面倒くさい。その点、セルラーはSIMを挿せば通信できるので、なによりIoTを始めるまでのスピードは早いと思います。

大谷:スタートは圧倒的に楽ですし、IoTプロジェクトはスピード求められますよね。

桶谷:われわれはキャリアが巨額のお金をかけて構築・運用しているネットワークを基に、IoT向けとして提供しています。これはキャリアあっての仕組みであり、視点を変えるとキャリアへの依存が高くなるわけですが、これってオンプレでサーバーを運用しますか、クラウドで運用しますか、という話。なので、個人的にはクラウドの方が楽なので、キャリアに任せた方がよいと思います。

大谷:日本でNTTの電話が使えなかったり、専用線が使えなくなったら、新聞に載るじゃないですか。結局、それくらいミッションクリティカル度の高いネットワークをキャリアは運用している。じゃあ、お客さんがそういうネットワークを自前で構築・運営しますか?という話ですよね。

松下:僕も桶谷と意見は同じで、選択肢があるなら、通信は自由に選べた方が良いと考えています。ただ、これって選んで使えるスキルがあることが前提なんです。Wi-Fiの場合は、アクセスポイントを購入した時点で、どうしてもお客さまが設定することになってしまう。

大谷:最近の製品であれば楽にはなりますが、設定がなくなるわけではないですからね。

松下:セルラーももちろん設定は必要なのですが、メーカーが出荷時に設定しておける仕組みでもあるので、お客さんの手間を減らすことができる。ここはセルラーの場合はメリットだと思っています。

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