Core i9-12900K&GeForce RTX 3080を搭載
高発熱CPU&GPUを完全管制!静音かつメンテナンス性も抜群のデュアル水冷ゲーミングPCを触る
2022年02月27日 14時00分更新
「G-Master Hydro」シリーズはサイコムの代表モデルとも言える水冷PCだ。一般的にBTOパソコンで水冷PCと言えば、CPUクーラーに簡易水冷クーラーを採用したモデルのことを指す。しかし、G-Master Hydroシリーズはほかの製品と異なり、CPUだけではなくビデオカードも水冷化している。もちろん、最初から水冷クーラーを搭載するビデオカードはほぼない。あったとしても高価でレアな製品となるため、BTOパソコンのメニューではめったに見かけない。
サイコムの水冷ビデオカードは市販の水冷化キットを使っている。しかしながら、安定動作のために銅プレートを自作しているほか、ヒートシンクの加工、多数の負荷テストによる動作確認など、個人では実現が難しい工夫が多数施されている。この「自作PC」と「BTOパソコン」のいいとこ取りした仕様が同社の際立った特徴だ。なお、この水冷ビデオカードの話は以前ASCII.jpに掲載した「GeForce RTX 3080 Tiの過熱問題はサイコム独自の銅プレートで解決! 開発秘話を聞いてみた」で詳しく紹介しているので、興味がある人はぜひ参照してほしい。
この水冷化したビデオカードと水冷CPUクーラーを搭載したBTOパソコンがG-Master Hydroシリーズとなるわけだ。他社製品ではまず見ることがない構成だけに、サイコムの顔と言ってもいいモデルとなる。G-Master Hydroシリーズは多数のモデルをラインアップしているが、今回紹介する製品は「G-Master Hydro Z690/D4」という、第12世代インテルCoreプロセッサーを搭載した最新モデルだ。
このモデルの特徴はDDR4メモリーを採用することで価格を抑えていること。現在、16GBモジュールで価格を比べてみると、DDR4なら8000円台くらいから購入できるところ、DDR5だと1万8000円台とGB単価が高い。さらに、DDR5対応マザーボードはフラッグシップモデルが中心になるため、高価になりがちだ。 事実、DDR5メモリーの兄弟モデル「G-Master Hydro Z690 Extreme/D5」の標準構成の直販価格は46万7230円~と、G-Master Hydro Z690/D4よりも10万円近くも高くなる。
もちろん、DDR5メモリーのほうがDDR4メモリーよりも性能は高い。しかし、現状その恩恵に預かれるアプリは多くない。それならいくぶん近い構成で価格を抑えたDDR4メモリーモデルを選び、差額をSSDやCPUの強化にあてたほうが、汎用的な用途ではスマートな選択とも言える。また、価格を抑えていると言っても、あくまでDDR5メモリーモデルと比較すればの話だ。特殊なデュアル水冷PCということもあり、決して安いPCではない。しかし、一般的な自作PCでもBTOパソコンでも得られない魅力が満載の1台だ。
今回試用したモデルは標準構成からCPUはCore i9-12900K、ビデオカードはGeForce RTX 3080(12GB GDDR6X)、メモリーは8GB×4にカスタマイズしている。詳しい構成は下記のスペック表にまとめたので参照してほしい。
G-Master Hydro Z690/D4 | ||
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標準構成の主なスペック | 試用機の主なスペック | |
CPU | インテル「Core i7-12700K」(12コア/20スレッド、最大5GHz) | インテル「Core i9-12900K」(16コア/24スレッド、最大5.2GHz) |
CPUクーラー | Asetek「650LS」(簡易水冷、240mmラジエーター)+Enermax「UCTB12P」(120mmファン) | Asetek「670LS」(簡易水冷、240mmラジエーター)+Enermax「UCTB12P」(120mmファン)×2 |
マザーボード | ASUS「TUF GAMING Z690-PLUS WIFI D4」(インテルZ690、ATX) | |
メモリー | 8GB×2、DDR4-3200<メジャーチップ・8層基板> | G.SKILL「Trident Z RGB F4-3200C16Q-32GTZR」(8GB×4、DDR4-3200) |
ストレージ | インテル「SSD 670p Series SSDPEKNU512GZ」(512GB M.2 SSD、PCIe 3.0、システムドライブ) | インテル「SSD 670p Series SSDPEKNU010TZ」 (1TB M.2 SSD、PCIe 3.0、システムドライブ) |
ビデオカード | GeForce RTX 3070(8GB GDDR6、LHR版)+Asetek「740GN」(簡易水冷、120mmラジエーター)+Enermax「UCTB12」(120mmファン) | GeForce RTX 3080(12GB GDDR6X、LHR版)+Asetek「HybridGFX 240」(簡易水冷、240mmラジエーター)+Noctua「NF-A12x25 ULN」(120mmファン)×2+VGAサポートステイ |
無線機能 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2 | |
電源ユニット | SilverStone「SST-ST85F-GS V2」(850W、80 PLUS GOLD) | |
PCケース | Fractal Design「Define 7 Black/White TG Clear Tint」(E-ATX、ミドルタワー) | Fractal Design「Define 7 White TG Clear Tint」(E-ATX、ミドルタワー) |
OS | Microsoft「Windows 10 Home 64bit」 | Microsoft「Windows 11 Home 64bit」 |
直販価格(2022年2月25日時点) | 36万7900円 | 51万9280円 |
まずは気になるデュアル水冷をチェック!
240mmラジエーターを2枚も内蔵
ミドルタワーのPCケースに240㎜ラジエーターを2枚内蔵していると、内部はかなりゴチャゴチャしているのではないかと考えてしまうだろう。しかし、実際に見るとわかる通り、意外にもスッキリしている。
一般的なPCケースではフロント側にドライブベイを備えるが、これを取り払って水冷クーラーのラジエーターを配置している。結果、スペースの余裕を生み出し、エアフローも向上している。また、ケーブルは目立たない裏配線で、ケーブルの束ね方といったノウハウが生かされているという点も、PCケース内がスッキリと見える要因だ。このあたりに、長年BTOパソコンを手掛けてきたサイコムらしさが出ている。
そして、水冷CPUクーラーはAsetekの「670LS」をベースに独自カスタマイズしたもの。ポンプを内蔵する水冷ヘッドでロゴマークが光っている。同じ製品でもこういったオリジナル仕様が興味深い。240mmラジエーターは天板に固定し、Enermaxの静音120mmファン「UCTB12P」(PWM、500~1500rpm)×2基で送風している。
CPUはPCパーツの熱源では最も気を配らなければならないもの。それだけに、熱はPCケース内に拡散させず、すぐに外へ排出できる天板にラジエーターを固定しているのだろう。
一方で、ビデオカードの240mmラジエーターはフロント部分に固定している。こちらは自作erの間でも人気のNoctua製120mmファン「NF-A12x25 ULN」(1200rpm)×2基で冷却している。なお、風向は排気ではなく、吸気となっている。
PCケース内に熱が戻ってしまうが、その代わりに冷たい外気でしっかりと冷やせる点がメリットだ。ビデオカードはゲームプレイ中に温度が上がりやすく、負荷が長く続きがちだ。それだけに、長く安定して冷却できるこのレイアウトは理にかなっていると言えるだろう。
もちろん、PCケース内に熱を溜め込まないような工夫も施している。天面と背面の2ヵ所に排気用のPCケースファンを装備している点もその1つだ。背面だけでもこと足りると思うが、熱はPCケース内の上部に溜まりやすい。この熱を天面から排出することで、PCケース内温度の上昇を防いでいる。
そして、こうした効率の良いエアフローの実現には、すっきりとしたケーブルレイアウトも助力している。では、裏配線ケーブルは混雑しているのかというと、これが驚くほどキレイに配線されていた。
基本的に白いPCケースでは黒いケーブルが目立つはずなのだが、驚くほどケーブルが少ないように感じる。よくよく見ると場所ごとに無理なくまとめられ、太いケーブルの裏に細いケーブルが隠れるよう組み立てられていた。こういった細かな気遣いが、組み立て技術の高さを物語っている。