元ウォーカー総編集長・玉置泰紀の「チャレンジャー・インタビュー」番外編

六本木・国立新美術館で世界三大美術館のひとつ「メトロポリタン美術館展」がいよいよ開幕

文●玉置泰紀(LOVEWalker総編集長、一般社団法人メタ観光推進機構理事)

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 世界三大美術館として知られるメトロポリタン美術館の展覧会「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」が2月9日から、六本木の国立新美術館で開催される。メトロポリタン美術館は1870年創立で、アメリカ・ニューヨーク市マンハッタンにあり、セントラルパークの東端に位置する。ルーヴル美術館、エルミタージュ美術館とともに、世界三大美術館に数えられ、先史時代から現代まで、5000年以上にわたる世界各地の文化遺産を150万点を所蔵する世界最大級の美術館である。

 今回の展覧会では、同館を構成する17部門のうち、ヨーロッパ絵画部門に属するおよそ2500点の所蔵品から、フェルメール、モネ、ルノワール、ゴッホ、ラファエロ、カラヴァッジョなど、15世紀の初期ルネサンス絵画から19世紀のポスト印象派まで、西洋絵画500年の歴史を代表する選りすぐりの名画65点(うち46点は日本初公開)を展覧する。

ヨハネス・フェルメール『信仰の寓意』(1670〜72年頃)
ニューヨーク、メトロポリタン美術館 The Friedsam Collection, Bequest of Michael Friedsam, 1931 / 32.100.18

フェルメールなど日本初公開46点を含む西洋絵画500年を代表する65点が集結

 メトロポリタン美術館のヨーロッパ絵画部門は、創立から1年後の1871年、ヨーロッパの画商から購入した174点の絵画から始まった。現在は、13世紀から20世紀初頭まで、2500点以上に及ぶ絵画を所蔵している。常設展ギャラリーは美術館の2階に位置するが、2018年から、照明設備を改修する「スカイライト・プロジェクト」が進められている。本来は、電灯が普及する以前の19世紀末まで、絵画は自然光のもとで描かれ、鑑賞されていた。スカイライト・プロジェクトは、天窓からの自然光をギャラリーの照明に活用することで、より快適で自然な鑑賞環境を整える試み。本展は、この改修工事をきっかけとして実現した。

 今回日本初公開となる46点の中でも、筆者が注目するのは、フェルメールが描いた現存する二点の寓意画のうちの一つである『信仰の寓意』(もう一点はウィーンの美術史美術館にある『絵画芸術』)。晩年の制作だが、フェルメールの中でも異例の寓意画と言われる。寓意(アレゴリー)とは、抽象的な概念を、具体的な物事に置き換える技法を言い、この作品では、キリストの磔刑の絵画を背に座る女性は「信仰」の擬人像で、地球儀を踏む動作はカトリック教会の世界支配を示唆すると解釈される。十字架、杯、ミサ典書が載ったテーブルは聖餐式を暗示し、床には原罪を表すリンゴと、キリストの隠喩である教会の「隅の親石」に押しつぶされた蛇が見られる。

 プロテスタントを公認宗教としたオランダ共和国では、カトリック教徒は公の場での礼拝を禁じられていたが、「隠れ教会」と呼ばれる家の中の教会でミサや集会を行なうことは容認されていて、ここに描かれた部屋は、こうした教会なのかもしれない。フェルメールはおそらく1653年の結婚を機にカトリックに改宗している。筆者は、ウィーンの『絵画芸術』は見ているが、此方は未見で、直に見れるのが楽しみだ。

 この他にも、日本初公開の注目作品が多く、以下にいくつか紹介する。

カラヴァッジョ(本名 ミケランジェロ・メリージ)『音楽家たち』(1597年)
ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Rogers Fund, 1952 / 52.81
26歳のカラヴァッジョが、最初のパトロンとなったデル・モンテ枢機卿のために描いたもの。「音楽」と「愛」の寓意が主題ではないかと推測されてきた

ラファエロ・サンツィオ(サンティ)『ゲッセマネの祈り』(1504年頃)
ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Funds from various donors, 1932 / 32.130.1 
ルネサンスの巨匠ラファエロが20〜21歳頃に描いたもの。画題は新約聖書からで、キリストが、最後の晩餐の後、弟子たちを連れてオリーヴ山のゲッセマネの園に行き、磔刑への恐れに苦悩し神に祈るが、その脇で弟子たちが眠り込んでしまう姿を描いている

クロード・モネ『睡蓮』(1916〜19年)
ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Gift of Louise Reinhardt Smith, 1983 / 1983.532
モネは、睡蓮のテーマで一室を飾る構想を立て、1915年頃から「大装飾画」と呼んだ大画面の作品を次々と生み出した。本作は、その中の一つになる

デジタル展示企画に注目

①The European Masterpieces Timeline

 メトロポリタン美術館のヨーロッパ絵画部門の所蔵品およそ2500点のデータをビジュアライズした年表が、本展会場最後に登場。 絵画が制作された年代や手法、地域を世界の歴史とともに時代を追って、プロジェクターで壁面に投影される。ヨーロッパ絵画のマスターピースがいつ、 どこで、どのように制作されてきたのかが一目でわかるようになっている。

②ラ・トゥール 《女占い師》 のフェイスチェンジャー

 本展注目作の一つ、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール『女占い師』の作品世界に自分が入り込める。そんな不思議な画像を楽しめる「フェイスチェンジャー」が登場。 カメラが搭載されたサイネージの前に立つと、作品の登場人物に自分の顔が合成され、作品に自分が溶け込んだかのような画像が現れる。この合成画像はその場で自身のスマホにダウンロードも可能。SNSでシェア出来る。本展特設ショップ内に展示予定。

イメージ図(実際の展示と異なる場合がある)

「すみっコぐらし」とのオリジナルコラボグッズ発売

 すみっコぐらしとのオリジナルコラボレーショングッズが登場。 本展に出品されている絵画をモ チーフにした衣装をまとった「てのりぬいぐるみ」など、様々なグッズを本展東京展特設ショップ限定で展開。てのりぬいぐるみは完全限定生産のため、売り切れ次第販売終了となる。

てのりぬいぐるみ5種 各1,430円(税込)

Ⓒ2022 San-X Co., Ltd. All Rights Reserved.

メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年
開催概要
会期:2022年2月9日〜5月30日
会場:国立新美術館(東京・六本木、東京メトロ日比谷線、都営地下鉄大江戸線「六本木」駅から徒歩。東京メトロ千代田線「乃木坂」駅から直結)
住所:東京都港区六本木7-22-2
開館時間:10時~18時 ※毎週金・土曜日は20時まで
     ※入場は閉館の30分前まで
休館日:毎週火曜日休館 ※ただし5月3日(火・祝)は開館
料金:2100円(一般)、1400円(大学生)、1000円(高校生)
   ※事前予約制(日時指定券)
公式ホームページ:https://met.exhn.jp/

音声ガイドナビゲーターは俳優・佐々木蔵之介さん。音声ガイドダイジェスト版を公開中
https://met.exhn.jp/goods/

※本ページに掲載している画像写真の無断転載を禁じます

この記事の編集者は以下の記事もオススメしています

過去記事アーカイブ

2024年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
10月
11月
2023年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2022年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2021年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2020年
01月
09月
10月
11月
12月
2019年
07月
08月
2018年
07月
11月
2016年
03月