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成田 海(24Mテクノロジーズ(24M Technologies))

2021年11月25日 00時00分更新

文● MIT Technology Review Japan

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電気自動車時代へ向け、次世代蓄電池の開発につながる特性評価の基盤を作る。

脱炭素社会の実現へ向けて、自動車業界の電気自動車(EV)への本格的な移行が始まっている。日本や欧州の先進国は、2030年〜2040年のガソリン車廃止を目標に掲げ、自動車メーカー各社は生存をかけてしのぎを削っている。

だが、最大の問題がいまだ解決していない。電気自動車の電源となる蓄電池だ。現在主流のリチウムイオン電池は、充電1回当たりの航続距離が短く、充電に時間がかかる。蓄電池を大量に並べる必要があるため、車内空間の設計に制限が出てきてしまうのも課題だ。自動車業界では新しい構造の高性能な蓄電池の誕生が切望されている。

カリフォルニア工科大学の博士課程生だった成田 海は、3Dプリント技術を応用して、リチウムイオン電池の炭素電極を作製する技術を開発した。安価な市販の 3Dプリンターを使用して、ミクロ3D構造を持つ UV 硬化樹脂を作成。高温・不活性化で炭化を起こすことで、3Dの炭素電極を作製する技術だ。

現在製品化されているリチウムイオン電池のほとんどでは粉末電極が使われており、ミクロでの3D構造の制御は難しい。成田が開発した技術によって、リチウムイオン電池内でのイオンや電子の輸送、界面での反応といった現象を体系的に研究できるようになり、電極構造と電池性能の関係性の評価が可能になった。この技術はリチウムイオン電池に限らず、燃料電池やフロー電池などに幅広く使用できるため、より高性能な電池の開発に向けた基盤となることが期待されている。

成田は現在、伊藤忠などが出資する米国の次世代電池メーカー「24Mテクノロジーズ(24 MT echnologies)」に所属し、革新的な蓄電池セルとセミソリッド蓄電池の研究開発に取り組む。

(笹田 仁)

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