山野美容芸術短期大新井卓二教授に聞く:JMA次世代ヘルスケアプロジェクト2021
ヘルスリテラシー下位の日本が持つ期待値 健康経営・ヘルステックのビジネスチャンス
2021年11月22日 11時00分更新
一般社団法人日本能率協会(JMA)は、2021年11月24日~26日に東京ビッグサイトでヘルスケア産業の展示会「次世代ヘルスケアプロジェクト2021」を開催する。少子高齢化や新型コロナウィルスの影響から健康への意識が高まり、ヘルステックは、医療に限らず、予防や健康を促進するための食事や運動、働き方などライフスタイル全般へと広がりを見せている。
「次世代ヘルスケアプロジェクト2021」では、予防医療・健康促進・健康寿命延長を支援するさまざまな製品やサービスの展示と、ヘルスケアビジネスの専門家や有識者によるセミナーが展開される。11月25日には、山野美容芸術短期大学教授の新井 卓二氏による特別講演「ベンチャーからのヘルスケアビジネスの始め方」を実施。セミナーに先立ち、超高齢化社会を迎える日本におけるヘルスケアビジネスの可能性について新井氏に話を伺った。
医療から健康づくりまで、これからのヘルスケアサービスを網羅できるイベント
――ヘルスケア関連の展示会にはいくつかありますが、新井先生から見て「次世代ヘルスプロジェクト2021」はどのような位置づけですか。
ヘルスケアビジネスは、医療・治療と、それ以外の予防・健康のサービスに分けられます。国内の展示会は特定の業界向けで、医療から健康までのサービス全般を網羅している大規模なイベントはほとんどありません。「次世代ヘルスプロジェクト2021」は、医療・福祉施設のための設備・機器展「HOSPEX Japan 2021」などが同時開催されるため、予防・健康ビジネスだけでなく、医療関係者の来場も見込めるのが特徴です。
――病院など医療・福祉施設向けだけでなく、コンシューマ向けの展示もあるのでしょうか?
BtoC市場は、測定やICT分野が盛り上がってきています。大手企業のヘルスケアビジネスへの新規参入も増えているので、市場動向のチェックを兼ねて見て回るのも面白いと思いますよ。
衣食住×ITで生活のすべてがヘルスケアにつながる
――国内は医療市場のほうが大きいですが、海外はヘルスケアが広がってきていますよね。
海外ではヘルスケアICT分野で測定やデータ活用が進んでいますね。日本は医療保険制度があるため、どうしても(保険適用される)医療系に集まってしまう。ただ、ヘルスケアはすごく領域が広いので、今後は市場の拡大が予測されます。
これから迎える超高齢化社会で生涯現役で働き続けるには、ヘルスケアが欠かせません。日常生活すべてにおいて、衣食住×IT、地域資源×ITでヘルスケアを解決していこう、という発想に変わってきています。
――直接的に健康を増進させるヘルステックだけでなく、住宅環境や地域にテクノロジーを掛け合わせることで、結果的に健康になる、ということですね。
例えば、フードテックはSDGsに関連付けられることが多いですが、食は健康への側面も大きく、ヘルスケアにおいての新規ビジネスの基軸になる可能性があります。スマートホームも照明や空調の自動化から、AIを活用した体調管理、介護サービスへと広がっていますし、これまでヘルスケアとは無関係だった分野の企業が参入してくるのではないでしょうか。
――地域資源を使ったヘルスケアでは、どのような事例がありますか?
例えば、観光地のモバイルアプリを使って観光地を歩いてめぐると5000歩以上で20%オフになるキャンペーンとかがあります。スタンプラリーが観光促進だけでなく、健康増進にもつながるわけです。従来、健康のための観光資源といえば、温泉やご利益のある寺社仏閣めぐりだったのが、ITやデジタルと掛け合わせることで、既存の観光資源がヘルスケアに活用できます。
――一方で、大手企業の新規事業としてのヘルスケアビジネスはあまり成功例を見ない印象です。
大手企業が新規事業をやるときは、新規事業だけの売り上げ利益率、投資収益率を決めないと難しいですね。血圧計や体温計だって、20~30年かけて現在のビジネスになっています。事業を立ち上げて3年、5年では売り上げ規模が小さいのは当たり前。20~30年のタームを待てないのが大企業が失敗してしまう理由でしょう。ヘルスケアは人命や災害に大きく依存するので、コロナ禍のUberEatsのように一気にブレークする可能性を秘めています。
ヘルスケアブームに乗じて参入している企業が多いですが、モノになるまでは時間がかかる前提で、もう少し長い目で見てほしいですね。
今回のセミナーでは、ヘルスケアの領域定義が広がっていること、大企業とベンチャーとのビジネスの進め方の違いについてお話しする予定です。