「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」ロケ地・横浜市立盲特別支援学校より弱視あるある 第4回

【連載】音声サポートがあれば、見るものを更に楽しめる!

文●横浜市立盲特別支援学校専攻科/横浜LOVEWalker

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

横浜市立盲特別支援学校

 日本テレビ系で水曜よる10時から放送中の「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」は、弱視の高校生が主人公のドラマです。その舞台に横浜市立盲特別支援学校が使われています。本校は、およそ130年の歴史ある学校です。視覚に障害のある幼児児童生徒への教育活動を行なっています。

 まったく見えない全盲の人と、見えにくいロービジョンといわれる弱視の人がいますが、本校では在学者の多くが弱視です。この弱視について、本校公認キャラクター「しもん」と、弱視の職員で「みゆき」と「まちこ」の3人が弱視あるあるについて話をしていきます。

 今回は、学校自慢の図書館、3Dプリンターを使った立体模型や音声ガイドでのエンタメの楽しみ方についてのご紹介です。

 もしもお目めに合いましたら、読んでみてください。

前回の記事はこちら:
【連載】見えにくいゆえの勘違いと妄想が止まらない弱視ワールド!

※過去の連載記事はこちら:「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」ロケ地・横浜市立盲特別支援学校より弱視あるある
 

ドラマにも登場する盲特別支援学校の図書館

みゆき:ドラマでユキコちゃん(赤座ユキコ:杉咲花)、空ちゃん(紫村空:田辺桃子)、青野君(青野陽太:細田佳央太)が図書館で授業の予習をしながらおしゃべりするシーンがあるよね。

まちこ:あれはうちの学校自慢の図書館♪

みゆき:図書館は司書とおよそ300人のボランティアの方々に支えられ、点字本、拡大絵本や触れる絵本、音声図書などを用意してもらってるの。

手で読む絵本(点字付き)「おやおや おやさい」石津ちひろ著 横浜市立盲特別支援学校製作「ソラマメ」

まちこ:私はボランティアさんに対面朗読してもらってるよ。

しもん:知ってるよ。雑誌とか書物を対面で読んでくれるんでしょ。ありがたいよね。

みゆき:本の貸し出しや返却の際にはPCが音声で教えてくれるんだよね。

3Dプリンターで作って色を塗った校章

まちこ:3Dプリンターで作った模型に色を塗るためのボランティアさんもいらっしゃいますよ。

みゆき:これまで全盲の人は校章がどんな形か知らなかったけど、3Dプリンターで校章を作ったら、横浜のYの字と青い鳥に感動していたよねぇ。

しもん:青い鳥と言えば、ヘレンケラー女史が日本に来日した際、盲ろうの啓発のために全国を周り、本校にも来てくれたらしいんだ。

みゆき:障害者福祉を発展させた偉大な人だよね。

しもん:そう。彼女はメーテルリンクの作品の中に出てくる「青い鳥」を見つけた人だとも言われてるんだ。 

まちこ:しもんのご先祖様、幸福の象徴でもある「青い鳥」は、きっと私たちの身近にもいるんだろうね。

2m離れて校名板を見ると、みゆきビジョンではこう見えます

2m離れて校名板を見ると、まちこビジョンではこんな感じ

まちこ:本棚には触れるマスコットキャラクターを貼っていて、そこを触って本の場所がわかるようになってたりもするしね。

しもん:「キャラクター通り」ね!

ラマの図書館。実際は「ドラえもん通り」です

みゆき:本以外のエンタメだと「シネマ・デイジー」と言って、副音声がついた映画を音で聴いて楽しむこともできるよ。これはウェブ上で障害者が利用できる「サピエ図書館」で借りることができます。

しもん:シネマと言えば2人は映画館に行ったりするの?

みゆき:もちろん。

まちこ:月に1回は行きたいかなぁ。

みゆき:この前、「鬼滅の刃」を見に行ったよ。図書館にも小説版の点字本とデイジー(音声)図書をボランティアさんに作ってもらって置いてあるしね。

まちこ:私は「東京リベンジャーズ」を見たよ。

しもん:映画はスクリーンが大きいから見えるんでしょ?

みゆき:見えるけど、細かな俳優さんの表情とかは見えないのよ。

まちこ:夜のシーンとか室内が暗いシーンとかも見えない。

みゆき:あと字幕とか、携帯の中のLINEの文章とかも見えないの。

しもん:それじゃあつまらないじゃん。

みゆき:映画の副音声アプリがあるのよー♪

まちこ:携帯で「ハロームービー」というアプリを入手すれば、「鬼滅の刃」や「東京リベンジャーズ」の副音声を映画館で誰でも楽しむことができる。

みゆき:ドラマのユキコちゃんが好きなゾンビ映画を見るなら、「カメラを止めるな」がおすすめだけど、これは「UDキャスト」というアプリしか対応していないの。

しもん:作品ごとにアプリを使い分けているんだね。

みゆき:もっと副音声対応の作品が増えてくれると、アプリも有名になるかもね。

まちこ:このアプリは、携帯にイヤホンをつながないと音が出ないように制限されています。

みゆき:周りに音がもれる心配がないんです。

しもん:ヘー、便利な世の中になったもんじゃぁ。

まちこ:しもん、いきなり年とったね。

みゆき:だから、高齢者や視力が落ちてきた人でもアプリがあれば楽しめる!!

しもん:ユニバーサルデザインだね。

手で読む絵本(点字付き)「おやおや おやさい」石津ちひろ著 横浜市立盲特別支援学校製作「パセリとニンニク」

みゆき:映画館では座る席には好みがあるよね。

まちこ:私は視野が狭いから、なるべくスクリーンから離れた席がいいなぁ。

みゆき:私は前から2列目がベストかな。

しもん:なるほどね。

まちこ:暗いところが見えにくい人は、館内が暗くなる前に入るのよ。

みゆき:私は片目しか見えないから、3Dメガネをかけてもスクリーンから飛び出してみえない。

しもん:そっかー。片目だけだと立体に見えないのね。

みゆき:周りの人が右によけても、私だけそのままだったりしてね。

まちこ:それはちょっと悲しいね。

みゆき:でも私には、学校の3Dプリンターがあるから大丈夫!

まちこ:かなり規模は違うけどね…

 こうしてまだまだ3人、いや2人と1羽の話は続きます。

 次回も読んでいただけたらうれしいです。

 もしも、お目めに合いましたら。

「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」

 日本テレビ系で毎週水曜夜10時から放送中。

 勝ち気だけど恋には臆病な盲学校の女の子・赤座ユキコ役の杉咲 花さんと、喧嘩上等だけど根は純粋なヤンキー・黒川森生役の杉野遥亮さんによる新世代ラブコメディー!

文/横浜市立盲特別支援学校専攻科
「みゆき」と「まちこ」のイラスト/関口 千秋
「しもん」のイラスト/横浜市立盲特別支援学校

プロフィール
しもん:横浜市立盲特別支援学校、略して市盲が名前の由来。校章の幸福の青い鳥がご先祖様。公認キャラクター就任1年目。
まちこ:13歳で網膜色素変性症(色変)と診断。徐々に視野狭窄が進行。黒猫をめでながらお酒を飲むのが大好き。
みゆき:生まれつき弱視。右目は緑内障で13歳の時失明。ハンドミルでコーヒーを入れてその香りと共にチョコレートを楽しむのが習慣。

この記事の編集者は以下の記事もオススメしています