併走してくれるDXパートナー探しを強化 トレーニングプログラム「Microsoft Learn」も
これらを支える取り組みとして、「成長ソリューション領域におけるイネーブルメント強化」「デジタルエンゲーシメントの強化」の2点に取り組む姿勢を示した。「パートナー各社は、日々成長する技術やソリューションに対する準備が必要であり、ポータルを含めたデジタル環境の整備にも取り組んでいく」との考えも示した。
ここでは、DXを推進したいと考えているユーザーが、各専門領域の実績とノウハウを持つパートナーを正しく選択できるように、Advanced Specializationを強化。従来のコンピテンシーよりも、さらに細分化したワークロード単位での導入実績や、専門的資格取得者の数などを第三者機関による監査を通じて認定するという。「お客様がDXの実現に向けて並走してくれるパートナーを探したいというニーズが多く、客観的に認証を進めることで、顧客のニーズに応えたいと考えた」と説明した。
また、新たな技術やソリューションへの対応については、トレーニングプログラムとして、Microsoft Learnを用意。各製品の技術情報や開発手法、ビジネス部門向けのローコード開発のポイントまで、DXに必要なスキルのトレーニングを幅広く用意。無料で提供しているという。NTTデータではこのプログラムを活用して、クラウドスキルチャレンジというゲーム感覚で学習の進捗を競うあう仕組みを採用。「楽しさこそ学びの原点」という考え方で推進し、成果をあげているという。
一方で、これまで分散していたパートナー向け情報を、パートナーポータルとして統合。また、日本のパートナーを対象に、マイクロソフトの担当者が、直接、会話する窓口として、CED (Cloud Enablement Desk)を設置。MPN(Microsoft Partner Network)IDがあれば、どんな企業でも利用できるとしている。
ローコード開発やモバイルアプリが伸張 業務部門が自らアプリを開発
檜山執行役員常務は、市場環境についても説明した。
同氏は、「AI市場は前年比47.9%の成長、今後5年間の年平均成長率が25.5%となっている。国内IT市場全体の成長率が2.6%であることに比較すると、10倍の伸びを示している。AIがDXを牽引していることになる」とする一方で、日本のデータ活用度は、世界63カ国中最下位であることを指摘。「この根底には、SI依存の構造がある。72%のエンジニアがIT業界に集中し、ユーザーサイドのITエンジニアが少ない。これは米国の36%と対照的である」とした。
また、この1年間で、パートナー協業案件比率は48%増加し、業種別インダストリー案件は4倍に増加。SMB市場におけるクラウド比率は年率10%以上増加しているという。さらに、2024年までにローコード開発がアプリケーションの65%を占めることを示したほか、テレワークの増加を背景に、モバイルアプリケーションの需要がIT部門の供給量の5倍になること、マーケットプレイスで取引されるアプリケーションの数が前年比70%増となっていることを紹介。
その事例として、三重県伊勢のゑびやでは、キーボードを打てなかった配膳係の社員が、AIを学び、来店数を予測するソリューションを開発。日本最高とされる90%の的中率を実現し、テジタルカンパニーとして、他の飲食店にソリューションを提供している例を紹介した。また、経済産業省では、職員がPower Appsを利用して、業務のデジタル化を実行。アクセンチュアでは、IT部門ではない業務担当者が、わずか2カ月でPower Platform上でツールを開発し、BPO業務の大幅な効率改善を実施。ローコード開発が促進されている現状を示してみせた。
檜山執行役員常務は、「ビジネスの当事者自らが、ITを使いこなす動きが始まっている。これらは一部の事例ではなく、市場全体の主流になっている。業務を知り尽くした現場のビジネス部門が自らアプリを開発して、業務に役立てていくという流れが、これからは重要になる。そして、ユーザーが自らマーケットプレイスを活用して、アプリを使いこなすという動きが増えることになるだろう」などと述べた。
これに対して、マーケットプレイスの手数料を、これまでの20%から3%に引き下げたことも発表。檜山執行役員常務は、「より多くのパートナー、ユーザーに利用してもらえる環境を作る」と述べたほか、「パートナーのすべてがDXを通じて成長し、各事業分野で成功することが、日本マイクロソフトにとっては重要である」などと語った。