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プロに教わるAzure設計運用のベストプラクティス 第1回

仮想マシン単体のSLAから、高可用性、災害復旧(DR)構成やバックアップの要点まで

Azureで実現する高可用性の“勘どころ”と構築のポイント

2022年01月03日 11時00分更新

文● 五十嵐 直樹/日本マイクロソフト Cloud Solution Architect 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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まとめ:高可用性構成と災害復旧構成、それぞれのポイント

 ここまでの話をふまえて、高可用性と災害復旧それぞれの構成をとる際のポイントをまとめよう。

■高可用性構成を考える「3つのポイント」
 ・Azure VMは1台で99.9%のSLAを保証。それ以上の可用性が本当に必要か要検討。
 ・DBはアクティブ-スタンバイ構成になる。よって、OSレベルのクラスタも必要。
 ・DBレイヤーはOSクラスタに加えてDBのレプリケート機能が必要。

 まず全レイヤーで共通するポイントとして、「そもそも高可用性構成をとる必要があるか」を検討することが挙げられる。第1章冒頭で紹介したとおり、Azureでは仮想マシン単体でも99.9%のSLAが提供されており、それで十分だというシステムも少なくないだろう。より高い可用性が必要である場合にのみ、複数の仮想マシンを使って高可用性構成をとることになる。

 続いて、可用性セットを使うことで99.95%のSLAが提供される。このとき、APサーバーはアクティブ/アクティブ構成をとることで、どんな障害においても問題なく対応できる。その一方で、DBサーバーはアクティブ/スタンバイ構成にするとよいだろう。そのためにOSレイヤーでのクラスター化、さらにDBレイヤーでのレプリケーション機能も必要となる。

高可用性構成を考えるうえでのポイント

 続いて、災害復旧構成のポイントもまとめておこう。

■災害復旧構成を考える「3つのポイント」
 ・基本はASRを利用。RPOに応じてDBが備えるレプリケーション機能を使用。
 ・高可用性構成時のレプリケーションモードは「同期」。
 ・災害復旧構成時のレプリケーションモードは「非同期」。

 Azureの災害復旧は、基本的にはASRを使って構成できる。ただしDBのデータについては、RPO要件に応じて、DBネイティブのレプリケーション機能を使うことが推奨される。

 通常、DBのレプリケーション機能には同期モードと非同期モードがあるが、高可用性構成の場合は同期モード、災害復旧構成の場合は非同期モードを使う。遠隔地にあるDRサイト(災対サイト)との間でレプリケーションを行うため、通信回線の帯域幅やレイテンシの都合から同期モードを使うのが難しいからだ。

災害復旧構成を考えるうえでのポイント

 バックアップについても災害復旧と同様で、「仮想マシンイメージ」と「DBデータ」は分けて考える必要があることを押さえておいてほしい。DBデータについてはRPOをふまえて手法を検討する、という点も同じだ。

Azure NetApp Files(ANF)の活用

 最後に、Azureでより大規模なミッションクリティカルシステムを運用する場合におすすめしたい「Azure NetApp Files(ANF)」を紹介しておこう。

 ANFは、エンタープライズストレージとしておなじみの「NetApp ONTAP」をベースとした、超高速なフルマネージドクラウドストレージサービスだ。

 主に2つのファイル共有プロトコル(NFS v3/4.1、SMB v3)をサポートし、HPCやWVD、SAPなど、厳しい稼働要件が求められるエンタープライズワークロードに対し、オンプレミス並の高IO/低レイテンシのパフォーマンスを提供する。Azureネイティブのサービスとして、マイクロソフトがサービス提供とサポートを行い、ユーザーはAzure Portalから管理操作ができる。SLAは99.99%を保証する。

 このANFでは、リージョン間のレプリケーション機能「Cross Region Replication」を提供している(現在はパブリックプレビュー)。これはストレージスナップショットを非同期レプリケーションする機能だ。これにより、災害や障害でリージョン全体が停止した場合でも、重要なアプリケーションをフェールオーバーできる。現在は東日本/西日本のリージョンペア間で使用できる。

Azure NetApp Files(ANF)が提供するリージョン間レプリケーション機能「Cross Region Replication」

 オンプレミスで大規模なストレージを活用したシステムを構築しているユーザーや、クラウド移行後も引き続きストレージサービスをリーズナブルに利用したいと考えているユーザーには、ぜひともANFの活用を検討していただきたい。

* * *

 いかがだっただろうか。連載第1回の締めくくりとして、筆者から以下の構成を提案したい。Azureで高可用性・DRを構築する場合は、システム規模に合わせた構成検討が鍵となる。以下を意識して高可用性の設計を開始していただけると筆者は大変嬉しく思う。

●システム規模に合わせて仮想マシンを選択。(一部、ベンダーの認定要件があるので注意)
●小~中規模システムであれば、ASRに加えAzure Backupの機能(VM、DB固有)+GRS+CRRの組合せで実現。
●さらに大規模(ミッションクリティカル)なシステムは、ASRに加えANFを活用。

システム規模と要件に応じてASR、Azure Backup、ANF Cross Region Replicationを使い分ける

 以上、「Microsoft Azureで実現する高可用性の“勘どころ”と構築のポイント」でした。皆さんの日々の業務でAzureを設計、運用する際の少しでも参考になれば幸いです!!

筆者プロフィール

五十嵐 直樹/日本マイクロソフト パートナー事業本部 Cloud Solution Architect

 2019年に通信事業者を経て日本マイクロソフトへ入社。パートナー事業本部でAzureパートナー向けの技術支援を担当。主な担当ワークロードは、SAPおよび周辺システムのAzure連携。

 これまで、SAP・Oracle等のERPパッケージの導入に従事しながら、大規模システムのクラウド化プロジェクトを多数支援。マイクロソフトでは、Azure Solution Expertとして社内のエンジニア育成コーチを務めるなど社内外で幅広く活動中。(LinkedIn:naigaras)

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