前へ 1 2 3 次へ

カメラマンの目線で実用性をチェック

第11世代Core+GeForce MX450搭載、画像や動画の編集作業も快適な14型モバイルノートPC<Yoga Slim 750i Pro>

文●周防克弥 編集●市川/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

画像・動画編集もサクサク快適!

 では、<Yoga Slim 750i Pro>の使い勝手(性能面)の評価に移ろう。基本的なベンチマークテストの結果は過去記事を参照してほしいが、ここではクリエイティブの実用性をチェックしてみた。

 私がパソコンを試す際に行なうテストは、実際に自分の仕事内容に則した作業をベースにしている。内容は「Photoshop」の操作性、「Photoshop Lightroom Classic」の書き出し時間、「Premiere Pro」での書き出し時間、そして「DaVinci Resolve」の書き出し時間の計測だ。どれも内容は汎用性を高くするために薄くて軽めの作業となっているが、実際の仕事でのベース作業なので実用性の確認はできる。

●Photoshop

 写真編集ソフトとしては定番中の定番。プロからアマチュアまで多くのユーザーが利用しているだろう。今回は2400万画素のデジカメで撮影したデータを「Lightroom Classic」でRAWからPSD(16bit)形式に変換したデータを開き、操作感を確認してみた。

100%表示に拡大して画面の隅々をチェック。手のひらツールでドラッグする作業はかなりスムーズだ。内蔵グラフィック搭載モデルでは画面の書き換えに若干のタイムラグが出ることがあるが、まったく遅れることなくスクロールできた

ディスクリートGPUを利用するフィールドぼかしでは、プレビュー時にGPUのアクセラレーションが機能する。こちらも変更に合わせてほぼリアルタイムに反映される

 「Photoshop」ではあまりディスクリートGPUの重要性は高くなく、ハイエンドのGPUである必要はない。一昔前ならGPUが載っていないと機能しないフィルターもあったが、最近のCPU内蔵グラフィックではまずそんなことはなく機能としてはほぼすべて利用可能だ。

 <Yoga Slim 750i Pro>に搭載されているGeForce MX450は、快適な作業が可能だった。Photoshop操作中のスクリーンショットをみても、多くの作業でGeForce MX450の使用率が上がっており、有効的に利用できているのがわかる。また、標準で16GBメモリーが搭載されている点もポイントが高い。

 最近は、標準で16GBメモリー搭載のパソコンも増えてきたが、主流はやはり8GBだ。Windows 10を起動してブラウザーやブラウザーゲーム、メール、動画視聴などの軽めの作業をするなら8GBでも十分こと足りる。

 しかしながら、画像編集ソフトでレタッチしたりブラウザーのタブを複数開いて調べものをするなど、複数の作業を並列して進行しようとすると8GBではちょっと心もとない。自分の場合には画像の編集レタッチに「Photoshop」「Photoshop Lightroom Classic」を、画像閲覧に「Adobe Bridge」を立ち上げることが多く、場合によってはデジカメからの転送用のソフトを立ち上げることもあるため、最低でも16GBメモリーはほしいところ。さらに多ければ多いほど安心感は増す。

●Photoshop Lightroom Classic

 こちらはRAWデータからの画像書き出し、画像の整理ができる定番ソフトだ。2400万画素のデジカメで撮影した500枚のRAWデータからPSD(16bit)形式、JPEG(最高画質)への書き出し時間を測定してみた。さすがに自分もプロカメラマンとして一気に500枚を書き出すことはそうそうなく、書き出すための画像を選ぶのが「Lightroom Classic」の目的でもある。あまりに少ない数では一瞬で終わってしまうため、測定誤差が少なくなるよう500枚の書き出しを行なっている。

不思議なことにCPUの使用率が100%まで上がっていない。クロックもCore i7-1165G7のターボブースト時には最大で4.70GHzまで上がるようだが、見ている限りでは2.5GHz程度までしか上がっていない

プレビューの追従性や反応速度に不満は感じない。パラメーター変更にほぼリアルタイムで追従してプレビューが反映されるので作業効率がとても高く感じる

 書き出しにかかった時間はPSD(16bit)形式で約7分20秒、JPEG(最高画質)で約8分20秒と、一世代前のハイエンド向けノートパソコンに匹敵する速度で処理ができた。

 気になったのはタスクマネージャー上でCPUの使用率が100%まで上がってない点だが、操作感はかなり良好だ。読み込みの速さやプレビュー作成もまったく不満を感じないレベルで処理される。さすがに500枚のRAWデータだけあって、プレビュー作成だけでもCPUの使用率は上がり、それなりに時間がかかるが、<Yoga Slim 750i Pro>では十分に実用的な速度で処理が可能だ。これは第7世代あたりのハイエンドデスクトップパソコンにも匹敵する速度なので、パソコンの買い替えを考えている人にも参考にしてほしい。

●Premiere Pro

 こちらも定番の動画編集ソフトだ。最近は動画投稿も一般的になってきているので使用している人も多いだろう。

 デジカメで撮影した約30秒の動画をつなげて約10分の動画を作成し、MP4形式で書き出しにかかる時間を計測。フルHDで撮影したカットをつなげたフルHD動画と、4Kで撮影したカットをつなげた4Kの動画を作成している。

 書き出しの設定は「Premiere Pro」にプリセットされているYouTube用の設定を使用、形式をH.264に、ファイル形式をMP4形式に変更して処理を行なっている。なお、カットはただつなげただけでエフェクトやトランジションなどの補正や細工はなにもしていない。Premiere Proでの書き出しでは、GPUによるハードウェアアクセラレーションが利用可能で、GeForce MX450には896基のCUDAコアが搭載されているので当然ながら期待値は大だ。

中々に速く処理できているが、タスクマネージャーを見ているとMX 450の使用率がまったく上がってない。処理速度的には動作しているような気がするが、単純にWindowsの問題なのかもしれない

タスクマネージャーでのGeForce MX450の動作が怪しかったので少し設定を見直してWindowsのグラフィック設定で「Premiere」と「Media Encoder」でGeForce MX450が優先的に動作するよう設定し、再測定した。あいかわらずGeForce MX450が動作しているようには見えないが、温度は高くなっているような気がする

Windowsの設定からグラフィックの設定を選び、GPUスケジューリングを有効化、さらにグラフィックのパフォーマンスの基本設定で、直接Premiere ProとMedia Encoderを指定して、GeForce MX450が優先的に動作するよう設定した

プレビューの動作を確認してみたところ、エフェクトを入れても駒落ちもせずスムーズに再生ができた。エフェクトの重さにもよるだろうが、かなり快適な編集ができるだろう。編集作業をしていると、たまにMX450が瞬間的に100%まで使用率が上がることがある

 書き出しにかかった時間は4Kで約4分50秒、フルHDで1分20秒と、とても高速な処理ができた。単純に速いの一言に尽きるのだが、タスクマネージャーではGeForce MX450が休んでるように見える。

 以前に同じCore i7-1165G7を搭載したノートパソコン(内蔵グラフィックモデルで搭載メモリーは8GB)で同じ処理を計測したときには、4K書き出しで約8分かかっていたこともあり、メモリー量が違うにしろ、内蔵グラフィックのみで処理されているとは思いにくい。

 そこでGeForce MX450の動作を確認したいと思い、Windowsのグラフィックの設定で「ハードウェア アクセラレータによるGPUスケジュール」を「オン」(デフォルトではオフになっていた)に変更、さらに「グラフィックのパフォーマンスの基本設定」で直接Premiere ProとMedia Encoderを指定し、「高パフォーマンス」を選択。MX450が優先的に動作するように設定して測定した結果、4K書き出しが3分50秒ととんでもない速度で処理できた。ただし、タスクマネージャー上でのMX450の動作は確認できずじまいなので、ちょっと不思議な現象となった。

 なお、タスクマネージャーではGeForce MX450の温度表示もされているが、書き出し処理中は60度以上に上がっており、アイドリング時は40度程度だったのでまったく動作していないということでもないと思われる。この辺はソフトやドライバー、Windowsのアップデートで追々対応されると思われるが、実行速度は確実に速いので処理能力としては大満足といえるだろう。

●DaVinci Resolve

 こちらも動画編集ソフトして有名で、最大の特徴はフリーで利用可能なことだ。フリーで使えるかといってアマチュア向けということはなく、プロの現場でも使われている。

 「DaVinci Resolve」でも「Premiere Pro」同様、フルHDと4Kでそれぞれ10分の動画を作成し、書き出しにかかる時間を測定してみた。

CPUにはかなり負荷がかかっているが100%までは上がってない。内蔵GPUもMX450も動作しているようには見えない

カット間にトランジションを挿入してプレビューを見たが再生はスムーズだ。実用性のある作業ができる。プレビュー作業中にMX450が一瞬だけ動作しているのがわかる

 DaVinci Resolveでの書き出しは4Kが約27分、フルHDが約11分26秒となった。これは以前内蔵グラフィックで動作するCore i7-1165G7のテストとほぼ同じで、GeForce MX450の動作が気になるところ。ここは今後のアップデートに期待するしかない。

 実際にアプリを使って実作業に近い作業で処理能力の確認をしたところ、とても満足のいく結果が得られたといっていい。Core i7-1165G7単体での性能は搭載機を試したことがあるほか、ウェブ上にたくさんのベンチ結果が出ているので把握はできていたが、GeForce MX450との組み合わせでどれくらい操作性が向上するかが、今回の焦点でもあった。

 タスクマネージャーを見る感じではGeForce MX450が満足に動作しているようには見えないが、結果として内蔵グラフィックで動作するCore i7-1165G7よりも快適かつ高速な処理ができているので、表示上の不具合である可能性が高い。

 <Yoga Slim 750i Pro>はスリムで携帯性に優れたボディーでありながらも、1~2世代前のハイエンドノートに匹敵する処理能力を持っている。GeForce MX450というディスクリートGPUを搭載しているため、内蔵グラフィックでは処理が重いような状況でもなんとかできる実力を発揮してくれる。

 さすがに本格的なゲームをするのは厳しいが、多くのシーンに対応できる能力を持ったパソコンになっていて汎用性は高めだ。持ち運びができて高性能なノートパソコンを探しているなら、ぜひとも候補に挙げてほしい1台だ。

試用機の主なスペック
CPU Core i7-1165G7(4コア/8スレッド、最大4.7GHz)
グラフィックス GeForce MX450(GDDR6、2GB)
メモリー 16GB(LPDDR4X)
ストレージ 512GB SSD(M.2接続/NVMe対応)
ディスプレー 14型(2240×1400ドット、IPSパネル)
内蔵ドライブ -
通信規格 無線LAN(IEEE802.11ax/ac/a/b/g/n)+Bluetooth 5.0
インターフェース Thunderbolt 4(Type-C)×2、USB 3.0、マイクロフォン/ヘッドフォン・コンボ・ジャック、有線LAN端子(RJ-45)
内蔵カメラ 720pウェブカメラ
サイズ/重量 およそ幅312.4×奥行8.9×高さ14.6mm/約1.33kg
OS Windows 10 Home(64bit)
前へ 1 2 3 次へ