ファーウェイが決算発表を行なった。1年前に穴だらけの戦闘機(旧ソ連の第二次世界大戦中のIl-2型)の写真とともに「生き残る」というメッセージを出した同社。状況は苦しいものの自国市場に救われ2020年も増収増益を果たしている。
地域では中国、事業ではエンタープライズが好調
ファーウェイは3月31日、例年どおりに決算報告を行なった。詳細はすでに掲載しているニュース記事を参照いただくとして(「スマートフォンからシームレスAIライフへ ファーウェイトップが決算発表でコンシューマー事業の方向性を説明」)、この状況下で増益増収を遂げたことは驚きに値する。
ただし、この成長はひとえに中国市場のおかげだ(地域別の売上高は、中国以上の地域はすべてマイナス)。コロナ禍で行く機会がなくなったこともあり、各国の市況を肌で感じにくいものの、中国とそれ以外の国では状況が違ってきているのかもしれない。
ファーウェイは通信事業者向け事業、コンシューマー向け事業、そしてエンタープライズ事業の3事業を展開する。最も伸びているのは比較的新しい事業であるエンタープライズ事業だ。なんでも中国で提供しているパブリッククラウドは、中国では2番手。伸び率で見ると世界最速で成長しているそうだ。
最も古い事業である通信事業者向け事業では、米国政府の働きかけもあり日本を含む多くの国で同社の5G機器は事実上排除の状況だ。それでも、中国という巨大市場においてファーウェイは揺るぎない地位を築いており、5Gにおける契約数は1000以上という。この中には、エネルギー、製造、医療といった産業分野があり、「産業界における具体的な5G応用に向けた動きが始まっている」とし、「今後の5Gの展望に十分自信を持っている」と決算を報告した、輪番会長の胡厚崑氏は語った。
不確定要素に挙げられたキオクシアとの取引
通信事業を追い越す勢いに成長したコンシューマー事業は、やはり苦しい現実がある。ファーウェイ・ジャパン代表取締役会長の王 剣峰氏が、「通信事業者向けとエンタープライズ向けを合算すると日本の経営状況は安定している」として、最大の影響が出ているのはコンシューマー事業であることを示唆したが、世界レベルでも同じなのだろう。
コンシューマー事業が厳しい最大の理由はもちろん、半導体の問題だ。米国が数回にわたって進めた禁輸措置により、実質的に供給が断たれた状況が続いている。ファーウェイは在庫の積み上げとサプライヤーの多様化を進めており、ソフトウェアでは独自OSのHarmony OSとHMS(Huawei Mobile Services)などの手を打っている。しかし、一時はトップに輝いたスマートフォンのシェアは、見事に落ちている。
2020年末に安価ラインの「Honor」を売却しているが、コンシューマー事業はそれでも生き残りをかけて戦う姿勢だ。こちらでも、以前から口にしてきた「1+8+N」の下の多様化に活路を見出す狙いだ。スマートフォン(「1」)を中心に、タブレット/PC/スマートウオッチ/スマートディスプレイなどの8カテゴリーの端末(「8」)、そして外部が提供する無数(「N」)のIoT機器がつながるというエコシステム戦略で、「1のスマートフォンの業績は良くなかったが、プラス8とプラスNの部分は二桁成長」とした。また、「HMSは世界3番目のエコシステムになっている」と語り、世界170の国や地域で利用されていると続けた。
ファーウェイ・ジャパンの王氏が懸念を見せたのは、キオクシアとの関係だ。同社はIPOに向けて、親会社の東芝を含めた動向が注目されているが、一旦は米政府から許可が降りたファーウェイへの輸出許可が取り消しされているのだ。「キオクシアが再び許可を得ることができれば、調達の規模は昨年を下回ることはないと見込んでいる」とする、つまり、許可が降りなければさらに厳しい状況になるとも読める。
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