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M1搭載Mac用「Parallelsプレビュー版」で分かった高い互換性、MacのWindows環境は安泰

2021年04月10日 12時00分更新

文● 柴田文彦 編集●飯島恵里子/ASCII

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x86だけでなくx64アプリも実行可能な
ARM版Windows 10 インサイダープレビュー版

 Parallelsのプレビュー版が提供しているのは、仮想環境まで。その上で動作するOSは、別途自分で用意する必要がある。そのようなOSとして第1に考えられるのは、ARM版のWindowsだ。まだ市販されているわけではないが、マイクロソフト社が実験的なソフトウェアを公開するチャンネル、Windows Insider Previewの1つとして無償で公開されている。これもマイクロソフトのアカウントを持っている人なら、無償で登録できるWindows Insiderプログラムにエントリーすれば、無償でダウンロードして試用できる。

 このARM64版Windows 10は、やはりARM版のParallels Desktopの条件に完全に適合したもので、VHDXファイルとして提供されている。サイズは、今のところ9.2GBある。

 このイメージがMacにダウンロードしてあれば、Parallels Desktopで新しい仮想マシンを作ろうとする際に自動的に検索され、インストールするOSの候補の1つとして表示される。それが選択された状態で「作成」をクリックするだけで、デフォルト設定の仮想マシン上へのWindows 10のインストールが開始する。

 Windowsのインストールは、Parallelsならではの簡便さで、ほとんどノータッチで最後まで進行し、Windowsのデスクトップが、最初はウィンドウモードで表示される。もちろん、Parallelsならではの機能によって、WindowsをMacの全画面で使えるフルスクリーンモードや、Windows上のアプリが、あたかもMacのアプリのようにふるまうCoherenceモードも利用可能だ。

 ARM版Windowsと聞くと、ARM用のアプリは動いても、従来のインテル版Windows用に開発されたアプリは動かないだろうと決めてかかる人も少なくないかもしれない。しかし、以前からARM版Windowsは、一種のエミュレーション機能によって、32ビットのx86版アプリを動かすことができていた。今回のARM用Windows 10のインサイダープレビュー版では、それに加えて、64ビットのx64アプリを動かすことも可能となっている。

 今回は、ARM版Windows 10のレビューではないので、細かくは調べていないが、試してみた範囲では、実際にほとんどのx86、x64両方のアプリを動かすことができた。もちろん、ありとあらゆるアプリをテストすることはできないし、試した範囲で動作しないアプリもあったが、その理由は現状では不明だ。

 それでも、Windows用としても、最も重要なアプリであるMicrosoft Officeでは、現行のリテール版Office 2019(もちろんインテル版)を、そのままインストールして使うことができた。

 動作も、試した範囲ではインテル版のWindowsと何も変わらない。誰かに何も知らせずに使ってみてもらっても、ARM版Windows上で動いているOffice 2019であることに気づかないだろう。それどころか、黙っていれば、このWindowsがARM版であることにも気づかない可能性が高い。

 ARM版のWindowsで、インテル用のアプリが動く仕組みはともかくとして、Windowsをインストールした仮想ディスクの中には、3種類の「Program Files」フォルダーが作成される。ARM用のネイティブアプリが入る「Program Files (Arm)」、インテル用の32ビットアプリが入る「Program Files (x86)」、そして64ビットアプリ用の「Program Files」だ。

 もちろんユーザーは、このようなディレクトリ構成や、アプリのタイプを意識することなく、スタートメニューから選んだアプリを、シームレスに利用できる。

 なお、現状のParallels Desktopのテクニカルプレビュー版とWindows 10のインサイダープレビュー版の組み合わせでも、MacとWindows間の共有機能が利用できる。これまでのインテルMac上のインテル版Windowsと何ら変わりない。この点ような点でも、両プレビュー版の完成度は高いと言える。

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