オンライン採用面接から「Chromebook」導入の在宅勤務、全国店舗間や社内のリアルタイム情報共有まで
「Google Workspace」のフル活用事例、敷島製パンと損保ジャパン
2021年03月30日 07時00分更新
損保ジャパン:全国800拠点のリアルタイム情報共有で災害対応も迅速に
国内に800の拠点を持ち、社員数2万5000人の大手損害保険会社である損害保険ジャパン(以下、損保ジャパン)は、Google Workspaceを使って業務の一部をクラウド化している。このクラウド化の取り組みは、全国の拠点間をまたいだ情報共有と、各店舗でのツール活用に大別される。
同社ではIT企画部が中心となり、情報共有システムの構築に加えて社内文化の醸成も進めてきた。IT企画部 計画推進グループ主任の宇都木奈央氏は、全国情報共有の取り組みについて次のように語る。
「全国共通のGoogleスプレッドシートを使って、店舗横断の情報共有を行っています。例えば(大量の損害保険業務が発生する)大規模災害時には災害地に対策本部を設置して、他の店舗から社員を派遣します。従来はExcel(ファイル)で各店舗の情報を集めて対応していましたが、Googleスプレッドシートに変えてからは、各店舗が更新した最新状況がその場でわかるようになりました。それによって連絡網の作成や応援社員の交代など、対応のスピードは格段にアップしました」(宇都木氏)
ほかにも各店舗では、「Google Sites」を使って作成したWebサイトを通じて目標の進捗管理や、連絡事項の共有を行っている。「今まではその都度メールで送っていた連絡事項を1つのサイトにまとめることで、メールの量を大幅に削減した店舗もあります」(宇都木氏)。
オンラインメモアプリの「Google Keep」も店舗で活用している。「お客さまごとにチェックリスト形式のメモを作り、それを営業部員間で共有して進捗管理に使っています。これにより、リモート環境でもお互いの進捗を管理することができます。さらに、オフィスにあるホワイトボード代わりに、メンバーのその日の行動を共有するためにも使っているようです」(宇都木氏)。
「チャットは遊び」という意識を改革、メール・電話文化から脱却
同社の社員は現在、およそ7割が在宅で働いている。リモートワーク環境への移行で、社員間のコミュニケーションはメールからチャット(Google Chat)に大きくシフトしたという。
「従来は『仕事の連絡はメール、急ぎの時は電話』という文化が定着していました。IT企画部ではチャットの利用を促していましたが、『チャットは遊び』というイメージが強く、なかなか浸透しませんでした」(宇都木氏)
しかしリモートワークが本格化したことで、よりスピーディな社内コミュニケーションが必須となり、全社的にチャットの利用を強く推進することにした。まずは社内向けの衛星放送と動画配信チャンネルで、Google Cloud Japan協力の下、1時間におよぶレクチャー動画を放映。社員への啓蒙を図った。「どちらかというと保守的な文化だった当社にとって、この動画は新鮮であり、良い反応が得られました」(宇都木氏)。
こうした施策の結果、社員のチャット利用率は現在、90%に達しているという。各部署で業務単位のチャットルームが作成され、マネジャーはどこにいても、チャットルームを覗けば進捗状況がわかるようになった。
IT企画部に対する問い合わせも、チャットやGoogle Formを中心に運用しており、FAQを開示してナレッジの共有も図っている。Google Cloud Platformの「Dialogflow」を使ったチャットボットも導入し、問い合わせの自動対応も始めた。
社内の業務ナレッジ共有にはGoogle Currentsも活用している。「従来の社内情報共有は公開までの手続きが多く、時間がかかっていました。また表現も硬いもので、わかりにくかったと思います。Currentsを使うことで、気楽に投稿する人が増え、現在では1日あたり700件を超えるナレッジが共有されています」(宇都木氏)。
社内向けのオンラインセミナー、勉強会も、Googleの各サービスを使って開催している。「参加者からは、音声入力を使って聴覚障害者にもリアルタイムに情報共有したいというニーズも出ています」(宇都木氏)。IT企画部には、全国の拠点からこうした新しい取り組みのヒントとなる声が集まり始めており、同社の業務効率化はこれからも進みそうだ。