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コロナ禍による「どこでも経済」の加速を受けて、顧客企業のビジネス効率化に貢献

ドキュサイン、契約ライフサイクル管理の「DocuSign CLM」を発表

2021年03月26日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 ドキュサイン・ジャパンは2021年3月25日、2月からスタートした同社新年度における取り組みについての記者説明会を開催した。新たに提供するソリューションとして、契約ライフサイクル管理の「DocuSign CLM」を発表している。

「DocuSign Agreement Cloud」ビジョン。電子署名だけでなく、その前後の合意形成/契約プロセス全体をシームレスにデジタル化

ドキュサイン・ジャパン カントリーマネージャーの立山東氏、同社 ソリューション・エンジニアリング・ディレクターの佐野龍也氏

「電子署名だけでない契約ライフサイクル管理のソリューションを推進する」

 ドキュサイン(DocuSign)は、電子署名の導入をはじめ、合意、契約、稟議のプロセスを自動化するクラウド製品群「DocuSign Agreement Cloud」を提供する企業だ。米国本社は2003年に設立され、世界180カ国で75万社以上の有償契約顧客を持ち、エンドユーザー数は数億人規模と「世界最大の電子署名ソリューションを提供している企業」(同社)だ。製品は40以上の言語に対応しており、350を超えるプレビルドインテグレーション(他社システム連携)を提供している。

DocuSign Agreement Cloudが連携する他社製品と、国内導入企業の例(1)

 日本法人は2015年に設立設立され、現在は富士ゼロックス、マクニカネットワークス、NECネッツエスアイなど10社が1次代理店として展開し、26社の2次代理店が国内販売を行っている。カントリーマネージャーの立山東氏は、「日本のニーズにあった提案をするために、販売パートナーとの連携により、既存システムとの連動提案などを積極化させている」と語る。

 立山氏は、コロナ禍を受けたこの1年間で、人と場所の関係が根本的に変化して「どこでも経済(The Anywhere Economy)」が加速したと語る。日本社会でもテレワークの普及やペーパーレス化が広く浸透するとともに“脱ハンコ”の流れが促進され、さらには署名前後の準備や実行、管理も含めた「契約プロセス全体の改善」に対する関心が高まっていると説明した。

 こうした追い風を受けて、2月からスタートした同社新年度においては「お客様のビジネス効率化に貢献する」「お客様の数を増やすだけでなく、価値を理解いただいてファンを増やす」「パートナー企業様との強力な連携」「社会への貢献」という4点を注力分野としている。「電子署名だけでなく、準備、実行、管理を含めた契約ライフサイクル全体に向けたソリューションの提供を、日本でも強く推進したい」(立山氏)。

 さらに立山氏は、ドキュサインでは世界水準のセキュリティや個人情報保護、99.9%(年間停止時間が53分以下)の可用性を実現しており、世界75万社以上の顧客企業が毎日100万件以上のトランザクションを処理していると、その実績をアピールした。

 「外資系企業の製品であるため、使いにくいのではないかという先入観を持つ日本の企業も多いが、使ってみると使いやすさに驚く企業が多い。海外企業との契約で利用するだけでなく、日本だけで展開している企業でもドキュサインが数多く利用されている。この点も、きちんとしたメッセージを出していきたい。継続的な機能強化への投資と、日本向けローカリゼーションも進めていく」(立山氏)

 日本市場では、製造や金融、建設、商社、小売、サービス、運輸、教育、エンタテインメント、コンサルティング、人材派遣、大学、医療・福祉など、あらゆる領域で導入が進んでいるという。海外市場では金融分野が成長を牽引したことから日本でも注力していくこと、また製薬などのライフサイエンスや商社においては、海外企業とのグローバル契約での利用が多いことなどを紹介した。

ドキュサイン導入企業の例(2)

“複雑で分断されている”契約業務の課題を解消する「DocuSign CLM」を発表

 ドキュサインでは「DocuSign Agreement Cloud」ビジョンを掲げている。これは、署名プロセスの電子化と自動化を実現する「eSignature」に加えて、合意形成プロセス全般を網羅した自動化を促す「Agreement Cloud」、AIやスマートコントラクト技術を活用した次世代の自動化「Smart Agreement Cloud」によって、準備、署名・捺印、実行、管理の全プロセスをシームレスにデジタル化し、企業のビジネスを加速するためのプラットフォームを提供する考えだ。

 今回、新たに発表した契約ライフサイクル管理の「DocuSign CLM」は、上述したSmart Agreement Cloudを実現する重要なソリューションに位置づけられる。具体的にはドキュメント保管、ドキュメント生成、契約内容交渉、インポート、管理と実行、最適化、契約更新という7つの機能を持ち、複雑で分断されている現在の契約書処理プロセス全体を最適化できる点が特徴だという。

新たなソリューション「DocuSign CLM」の機能概要

 ドキュサイン・ジャパン ソリューション・エンジニアリング・ディレクターの佐野龍也氏は、「現在の契約書処理プロセスでは、コンプライアンスの欠落とリスク、セールスサイクルの遅延、契約処理における低水準な可視性といった課題がある」こと、分断された非効率な契約管理によるコストが増大していることを指摘する。

 「分断されている契約書処理の課題を解消した結果、売上高で35%増、コストで30%の削減、コンプライアンスリスクは23%軽減できるといった調査結果も出ている。(米国POSシステムメーカーの)NCRでは、DocuSign CLMの導入で契約処理のリードタイムを3週間から3日間に短縮できた」(佐野氏)

 DocuSign CLMを活用したDocuSign Agreement Cloudにおける契約処理プロセスの流れも紹介した。準備フェーズでは、最新のコンプライアンスに適合した契約書のテンプレートやライブラリ、連携する他のアプリケーションから取得した企業情報を活用して、自動的に契約書のドラフトを作成できる。これをワークフローに乗せて顧客担当者がレビューを行い、バージョンや変更履歴も管理しながら契約書を完成させる。署名・捺印フェーズでは、法務担当者や権限者がeSignatureで電子署名を行う。電子契約の締結後、実行フェーズではDocuSign CLMのワークフローでタスクを実行。そして管理フェーズでは、締結した契約書をアーカイブとして格納して、契約書の高度な検索などを可能にする。

 「DocuSign CLMは、ドラッグ&ドロップでワークフローを実装できる容易なコンフィグレーションと拡張性を持つほか、直感的なユーザー体験を実現しており、スムースな展開による生産性やビジネス処理スピードの向上が可能になる。また、組織をまたいだ契約やライフサイクルの標準化などにより、大規模な展開も可能になる点が特徴だ」(佐野氏)

DocuSign CLMは、複雑かつ分断されている原稿の契約業務をシンプル、シームレスにすることを狙ったソリューション

 なお、DocuSign CLMは幅広い領域をカバーするソリューションとなるため、導入と展開をサポートするための体制を整えているという。具体的には、システムデザインの作成から実装、顧客トレーニング、さらに成果達成のためのカスタマーサクセスマネジメントまで、「すべてのステージを網羅する」サポート体制を敷いていると述べた。

 さらにDocuSign CLMでは今後、購買側が取引先と交わした契約書の管理をサポートする機能、ダッシュボード機能を活用したレポートのビジュアル化、AIを活用した契約内容のレビュー(DocuSign Analyzer)や契約内容分析(DocuSign CLM+)といった機能強化を計画しているという。

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