“きちんと”作った鶏白湯ラーメン 激戦区立川で10年続く名店 らーめん チキント(東京・立川)【ZATSUのオスス麺 in 武蔵野・多摩】第50回
2021年03月29日 12時00分更新
今回のオスス麺は、立川を代表する人気店「らーめん チキント」。
10年以上前、福生市に「らーめん 雫」という押しも押されもせぬ鶏白湯ラーメンの人気店がありました。そのお店は惜しまれながらも閉店してしまいましたが、鶏白湯ラーメンのパイオニアとしてファンの間では伝説となっています。
その「雫」に続けと鶏白湯ラーメンのブームが来るかと思いきや、意外にも多摩地区では鶏白湯ラーメンのお店は増えませんでした。
鶏白湯ラーメンは需要が少ないのか!? そんな疑問を払拭するように、無化調の鶏白湯ラーメンを引っ提げた「らーめん チキント」が颯爽と現れ、一躍人気店となったのです。
ご主人は20代の頃、今とは全く違う仕事をされていました。
トラックに乗り、自動販売機にジュースを補充する仕事をされていて、その頃から漠然と「将来は飲食店をやりたいな」と思っていたとの事。
そして、30歳になり「ここで動かなければ一生やらないだろうし、もし失敗してもやり直しのきく年齢だろう」と、重い腰を上げ中華料理店で働く事に。
その後、鳥料理店で働くなどしているうちに、「飲食店をやりたい」という漠然としていた思いが「ラーメン屋をやりたい」という確固たる思いに変わり、高円寺などのラーメン専門店などで修業を開始。
お店が休みの日には、ご友人が働いている肉屋で鶏ガラなどを仕入れ、自宅でスープ作りをするなど自作に挑戦するも中々上手くいかず……。
「何故思うように味がまとまらないんだろう?」
答えは簡単で、化学調味料を使ってなかったから。
それに気づくも、「どうせやるなら他があまりやってない無化調のラーメンを作ろう!」と浅い知識や経験ながらの無謀な挑戦が始まりました。
材料を変え……分量を変え……少しは良くなるけれど麺と合わせると旨味が足りず、全く麺に味が絡まない……と、試行錯誤の日々が続きます。
そこで、都内の無化調のラーメン屋を食べまくってみる事に。
色々と食べ歩き、どこも美味しいけれど優しい味で無化調だとパンチのあるラーメンは無理なのか?と自問自答していた頃に出逢ったのが、目黒の「ぢゅる麺 池田」と早稲田の「渡なべ」!
どちらも、パンチがあり後味がスッキリ、そして美味しい!この出逢いによって光が見え、新たな思いでスープの改良を繰り返し、段々と納得出来る味に近づいてきたとの事。
そして、吉祥寺の洋食居酒屋「ビストロ酒場 提灯まる」でバイトをしていた時に、オーナーシェフから「ラーメン屋やりたいんでしょ?ランチの時間にお店を使っていいよ!」との言葉により、2010年11月遂にご自身初となるラーメン店「くれちゃん らぁめん」が間借り営業という形でスタートしました!
当時は豚骨魚介が流行っていたので、他とは違う事をやらなければ生き残れないとの思いから、鶏白湯魚介スープにチャーシューも鶏にした鶏づくしの無化調ラーメンを提供。
そこでの評判が良く、オーナーシェフから「YOUやっちゃいなよ!」的な感じに背中を押され、それだけに止まらず物件探しまで付き合ってもらい立川の物件に決定!
遂に2011年4月8日「らーめん チキント」がプレオープンしました。
「チキント」という店名の由来は、「鶏」をメインとしている事から「チキン」、化学調味料を使わずに「キチント」味作りをしている事から「チキント」と名付けたとの事。
オープンは震災の年で色々と大変なスタートでしたが、試行錯誤を繰り返し、今年の4月で10周年を迎えます!
4割以上のお店がオープンから1年で閉店し、10年続くお店は1割程度しかないと言われている厳しいラーメン業界、しかも立川駅前という超激戦区にありながら10年間やってきたのは、美味しいものを作ろうと常に試行錯誤を繰り返してきたご主人の努力の賜物と言えるのでは無いでしょうか。
それでは、その「チキント」のラーメンを紹介させていただきます。
「チキント」原点の味であり、押しも押されもせぬ不動の人気メニュー「らーめん」は、鶏ガラ・モミジに乾物を合わせたもの。ポッテリした高い粘度と唇がペタペタするような濃厚さを持った鶏白湯に、魚介の味わいが合わさる事で旨味がグッと引き上げられ、都内で唯一醤油の醸造をしている「近藤醸造」のキッコーゴを使った醤油の味や風味も合わさった無化調とは思えない程の旨味と厚みのある味わいに仕上げつつも、無化調ならではのキレのある上質な味わいを楽しめる!
麺は硬めに茹で上げられた「村上朝日製麺所」の中細ストレートで、ハリのある食感を楽しむ事が出来ます。
肉も豚チャーシューを使わずに、鶏モモ・鶏ムネに鶏のツミレを合わせるなど徹底した「鶏」づくしで、スープも具材もしっかりと同じ方向を向いているので一杯のバランスや完成度が非常に高い!
そのバランスの高さはスープの完飲率にも表れているようで、「塩分やらカロリーなどを気にする人が多い中で、飲み干してくれるお客さんが凄く多く、飲み干された丼を見ると苦労が報われる気がするし、有り難く思います!」と、ご主人が語ってくれました。
辛味を加えた「紅」系メニューも人気。
特製の辣油やニンニクチップによって辛味の刺激とパンチが加わっているものの、辛過ぎるようなキツさは無く、味や風味を壊さないバランス感で病みつきになる味わい!
私が個人的に一番好きなのがこの「塩」!
鶏白湯に合わせる旨味の強い塩ダレを無化調で作るには原価が上がりすぎるなど、塩ダレの開発には凄く苦労されたようでしたが、その苦労は味にしっかりと反映されています。
魚介の強い通常の「らーめん」と比べて、より「鶏白湯スープ」の味わいが顕著に感じられ、トロンとした高い粘度の「鶏を食べているようなスープ」とでもいうような感じのもので、鶏の旨味をしっかり引き出しながらもクセが抑えられた珠玉の一杯。
ただそれだけ作るのに手間暇のかかる塩ダレだけに、常に提供出来る訳では無いので、食べられたらラッキーです!
「油そば」は、少し乳化したようなマイルドな口当たりで、キッコーゴ醤油と麺の味わいが一番活かされるメニュー。鶏や魚介に加え、揚げ葱の芳ばしい風味を楽しめる一杯!
白湯を使用している他のメニューとは違った清湯系の醤油味で、鶏のふくよかな風味と味わいに魚介出汁がふわっと広がり、やや濃いめでほんのり甘味を感じる醤油が合わさった和風に仕上げた一杯!
サイドメニューには「鶏肉丼」や「貝柱ごはん」も用意されています。
「鶏肉丼」は、こんがりと炙られた芳ばしい鶏肉に醤油の風味が立った濃厚な特製ダレがマッチして、ご飯が進みます!
現在は休止中の「つけ麺」は、ツルツルモチモチの風味豊かな太麺を濃厚な鶏白湯と合わせて楽しめる逸品。こちらも醤油と塩でかなり違った味わいを楽しめるもので、復活が待ち遠しい人気のメニュー!
一時期提供されていて、今は無いメニューの「煮干しらーめん」。
他のメニューとは違ったコンセプトで、煮干しの味をエグミや苦味がギリギリ出るか出ないかにまで引き出し、厚みとシャープさを併せ持ったキッコーゴ醤油が見事にマッチしたハイクオリティな一杯で、ご主人の技量の高さが見られるものでした。
こぢんまりした店舗ではありますが、化学調味料に頼らずに一から「キチント」作り上げた濃厚な鶏白湯を使ったラーメンを提供する、美味しく安心して食べられるオススメのお店です!
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。詳しくはお店の公式ツイッター(https://twitter.com/superchikinto)をご確認ください。
ZATSU
2006年に開設したブログ「ZATSUのラーメン」の管理人。武蔵野・多摩地区を中心にしたラーメン食べ歩きを始めて15年以上。現在は年間400〜500杯程度を食べ、新店コレクターでありながらも老舗店やリピートするお店も多数あり。チェーン店からファミレス、カップ麺までも愛する真性の「ラーメン好き」で、基本的に何でも美味しく食べられる幸せ者。「自分の好みのラーメンを見つけて欲しい」と言う思いをモットーに色々なラーメンを紹介していきます。
本人ブログ(https://zatsu-ke.blog.jp/)
本人Twitter @zatsu_ke