日本HPは3月17日、ビジネス向けノート、ワークステーション、ディスプレーの新製品を発表した。加えて、製品の稼働状況をクラウド(HP Techpalse)に収集し、適切で迅速なサポートに役立てたり、機械学習を通じて機器の故障に対する事前予測をしたりするサービスも提供する。
具体的な製品としては、14インチノート「HP EliteBook 840 Aero G8」が5月下旬発売で、HP Directplus価格18万7000円から。13インチの2 in 1「HP Elite Folio」が6月中旬発売で、同20万9000円から。
また、14インチと15.6インチのワークステーション「HP ZBook Firefly G8」も投入。14インチモデルは4月中旬発売で同20万3500円から、15.6インチモデルは5月中旬で20万6800円から。「HP Z Display G3」として、24インチWUXGAの「HP Z24u G3」、27インチQHDの「HP Z27u G3」、4KUHDの「HP Z27k G3」の3モデルも投入する。
そして、これらの製品で利用できる標準サポートの「HP Smart Support」、PCの問題を事前に防ぐ、有料サポートの「HP Active Care」だ。
在宅ワークを想定した、2種類のビジネスノートを投入
ビジネスノートの市場では、モバイル機の需要が高まっている。しかし、コロナ禍で在宅勤務が増え、長時間利用するとなると、持ち運びを重視した13.3インチクラスの画面サイズでは、やや手狭な印象がある。そこで広い画面で作業でき、必要に応じて持ち出す際にも負担にならない14インチクラスの製品にHPは注目した。
Elitebook 840 Aero G8シリーズは、13.3インチより対角が約1.8cm大きな14インチの画面サイズを採用しつつ、重量も1.13㎏と軽量に収めている。加えて、米国防総省の調達基準であるMIL STD-810Hに対応するなど、堅牢性にも配慮している。また、セキュリティも重視しており、全モデルが紛失防止タグの「tile」を内蔵するほか、のぞき見防止機能“HP Sure View Reflect”も持つ。性能面では、インテルのEVOプラットフォームに準拠。高性能・長時間駆動・高速起動といった特徴を備える。
ウェブ会議機能も重視しており、プライバシーカメラや新しいAIノイズ除去機能が周囲の雑音やキーボードのタイプ音を除去する機能を搭載。PCとスマートフォンとの間で写真・ビデオなどを転送できる「HP QuickDrop」、本体のカバーが開けられたり不正アクセスされたりした場合にPCをロックしてユーザーに通知する「HP Tamper Lock」、本体の電源を切らずに、ボタンひとつでタッチスクリーン、キーボード、クリックパッドを無効化し、キーボードをウェットティッシュなどで拭く際に便利な「HP Easy Clean」なども特徴だ。
Elite Folioは、タブレットとキーボード使用(クラムシェル)が選べる2in1タイプの機種。ファンレス・静音キーボードを採用。16:9よりも縦方向に余裕がある3:2のアスペクト比で、13型クラスでも縦方向が広い画面となっている。Windows Hello対応で物理シャッターを備えたウェブカメラ、デュアルアレイマイク、Bang & Olufsenスピーカーを4基搭載。また、メディアモードという、ポイント操作に必要な、タッチパッドは露出しつつ、キーボードの部分は隠すスタイルも選べる。クラムシェルスタイルより画面が手前にくるため、映像やビデオ会議に集中できる。
マグネシウムユニボディのデザインは細部のエッチングにまで配慮して、上質な文具を使うような満足感の提供にこだわったという。キーボードカバーには、ヴィーガンレザーを使用している。
クアルコムのSnapdragon 8cx Gen 2を搭載し、Wi-Fi 6に加え、5G通信も可能。バッテリー駆動時間は公称最大24.5時間。コラボレーション機能としてはキーボードの奥側におけるペンの活用に加え、データ共有が可能な「HP QuickDrop」などの機能を持つ。
ハイパフォーマンスなFireflyは第2世代へ
HP ZBook Firefly G8は、モビリティとセキュリティに特化したモバイルワークステーションで、昨年モデルから新世代となった。NVIDIA T5000シリーズに加え、第11世代のCore i7や最大32GB/64GBメモリーを搭載できる。
TileやHP Sure View Reflect、Easy Cleanなど、Elitebook 840 Aero G8と共通の特徴も持つ。EPEAT GOLD、TCO認定に加え、オーシャンバウンド・プラスチックや段ボールの梱包材など環境にも配慮している。14インチで重量1.4㎏のモデルと、15.6インチ/1.76㎏でテンキーも搭載するモデルの2種類がある。
Z Display G3は"Z"ロゴを配したプレミアムデザインを採用。筐体比93%の4辺狭額縁パネルを採用。パネル自体も6.5mmと薄型だ。HP Eye Easeという色の輝度や一貫性を乱さずにブルーライトカットをする機能、sRGB99%、DCI-P3比85%の高い色域を持つ。また、本体にUSB Type-Cに加えて、DisplayPort入出力やEthernet端子などを持つ。マルチディスプレーで使う際には、ドッキングステーションを介さず、USB Type-Cケーブル1本で給電しながらノートPCとつなげるのがメリット。1枚目と2枚目のZ Display Z3は、DisplayPortのデイジーチェーン接続ができるため、最大3画面をシンプルにつなげる。デスク上ではノートと組み合わせて使用し、外出時には、USBケーブルを抜き差しするだけでいいのも魅力だ。
クラウドとAIで管理者の負担を低減
日本HP 専務執行役員 パーソナルシステムズ事業統括の九嶋 俊一氏は会見の冒頭であいさつ。コロナ禍で浸透したリモートワークについては継続を希望する人が多く、約44%がコロナ前より生産的となり、クリエイターやパワーユーザーの80%が在宅勤務の継続を望んでいるというグローバル調査を引用しながら、働き方やPCの利用方法の変化について紹介した。
IT担当者が直面している課題は多い。
九嶋氏 「在宅でもユーザー体験を維持・向上して生産性の確保に躍起になっているが、生産性を確保するうえで、適材適所(適切な人に適切なスペック)のPCを提供が求められ、安定してダウンタイムの少ない機材が必要になる。さらにこうしたサポートに時間を取られすぎず、リソースを最適化することが求められる」
そこで日本HPでは、負荷が高まる管理者向けに中堅中小でも簡易に管理ができる自動化・無人管理方法を提供しつつ、働く場所がデジタル空間になることを前提として、この空間に没入できるエコシステムの強化や、ゼロトラストを前提としたセキュリティソリューションの提供をしていきたいとしている。
そのためのサービスが、障害発生から解決までのダウンタイムを短縮する「HP Smart Support」、PCの問題を事前に防ぐ「HP Active Care」だ。ともに、テレメトリー情報(遠隔から取得した情報)を活用するため、「HPプロアクティブ管理」(提供済み)でも利用している“HP Techpalse”を利用する。
HP Techpalseでは、企業が導入しているデバイスの状態をクラウドに収集。この情報を機械学習エンジンで処理して、故障する可能性があるデバイスがどのぐらいあるか、クラッシュの原因となったアプリは? デバイスがどこでどのぐらい利用されているかなどを知り、様々な対応をしていく。
収集した情報はエンドユーザーには開示せず、日本HPのコールセンターのエージェントが活用する。適切な情報の提供やダウンタイム、回答時間の低減などが期待できるという。
HP Smart Supportは既存の製品保証に追加する標準サービスで、遠隔地にいるサポートデスクでも、デバイスの情報を把握して適切な対応が取れるようになる。
HP Active Careは、IT管理者向けのダッシュボード(コンソール)。HP CarePackの上位サービスとして、有償提供する(3850円/台、3年間)。管理者が導入した機器の状態を把握できるだけでなく、HDDおよびバッテリー障害に対する動作状態を自動で作成して(自動ケース作成)、日本HPに送信。連絡なしでダッシュボード上で修理依頼ができる。
バッテリー寿命やハードウェア故障などの事例を自動でまとめて日本HPに送信して訪問修理を受けたり、管理者が分析することができる。例えば、HDDの故障前にアラートを出し、希望日時での交換を受け付ける。また、バッテリーの劣化についても同様の対応をする。結果、従来の修理対応よりも短い時間で対応できる。