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企業全体にまたがるワークフロー「Creator Workflows」、法務部門向け「Legal Service Delivery」など

ServiceNow、Now Platform最新リリース「Quebec」を発表

2021年03月16日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 ServiceNow Japanは2021年3月12日、Now Platformの最新版となる「Quebec(ケベック)」を発表した。「21世紀の企業を支えるプラットフォームのためのプラットフォーム」と位置づけ、イノベーションの加速、ビジネスの俊敏性を加速、生産性の加速という3点から、数百種類の機能を強化した。「今後の企業において必要となるコアコンポーネントを大きく拡張した」(ServiceNow Japanマーケティング本部プロダクトマーケティング部 部長の高橋卓也氏)と述べている。

 また、新製品として「Legal Service Delivery」を発表。法務部門へのリーガルリクエストに関して、従業員が素早くセルフサービスで解決策を見つけたり、リクエストに対応しやすくすることで、優れた従業員体験を、継続的に実現できるようになるとした。

ServiceNow Now Platform「Quebec」リリースの新機能ハイライト

ServiceNow Japan マーケティング本部 プロダクトマーケティング部 部長の高橋卓也氏

企業全体にまたがるワークフロー機能「Creator Workflows」を新規提供

 ServiceNowでは年2回、Now Platformのメジャーリリースを実施している。リリース名には、アルファベット順に頭文字を使った都市名を採用しており、今回のQuebecは2020年9月「Paris」リリースに続くもの。なお次期バージョンは、2021年9月の「Rome」リリースとなる。

 Quebecリリースでは、Now Platformが提供してきたIT管理者向けの「IT Workflows」や、社員向けワークフローの「Employee Workflows」、顧客との連携を強化する「Customer Workflows」といったこれまでの機能に加えて、企業全体にまたがって連携するワークフローを実現した「Creator Workflows」を新たに追加したのが特徴だ。

新たに「Creator Workflows」を追加

 Creator Workflowsは、ServiceNowのノーコード/ローコード開発ソリューションにより、あらゆるスキルレベルの開発者がワークフローアプリを迅速に構築できるよう支援する。これは、ServiceNow Japanが2021年の事業戦略において掲げる4つの注力領域の1つ「市民開発の普及」を加速するものになる。

 「これまでは、会社独自のワークフローや業界独特のワークフローをServiceNow上で実行するためには、『App Engine』を使って個別にアプリケーションを開発する必要があった。しかし、Quebecリリースでは、App Engine単体だけでなく、アプリを開発する上で必要なコンポーネントをまとめてCreator Workflowsにリブランドし、Creator Workflowsの中核となる『App Engine Studio』は、ノーコード/ローコードで開発できる直感的なガイド付きのビジュアル開発環境を提供しているため、コーディングの経験のない人でも共同作業やアプリ構築が可能になる」(高橋氏)

「App Engine Studio」の概要

 ServiceNowは従来からローコード開発が可能なプラットフォームとして訴求してきたが、それたの機能をまとめるとともに、ノードコードで開発できる環境を新たに提供するわけだ。高橋氏は「テーブル構成やフォーム作成の知識がないLOBをはじめとする現場のひとたちによる市民開発を実現できる。Excelの操作知識を持っていれば、ServiecNowの知識がなくても簡単にアプリケーションが作れ、すでに利用しているデータモデルや各種データを使える」と語る。

 さらに『App Engine Templates』により、事前に構築済みのワークフローをビルディングブロックとして利用できるため、市民開発者はアプリ構築をゼロからスタートする必要がないのも特徴だ。IT部門にとっても、テンプレートを提供することでひとつの方針に沿った形での開発を指導することができ、リリースのコントロールができる点が特徴だとした。

Now Platformに「AI Search」「Process Optimization」などの機能

 一方、Quebecリリースによって進化したNow Platformの特徴としては、3つの機能を挙げた。

 ひとつめの「AI Search」は、従業員や顧客に、コンシューマーグレードの検索体験を提供し、サービスポータル、モバイル、仮想エージェントの検索ウインドウから、パーソナライズした関連性の高い実用的な情報を得ることができる機能だ。

 「自然言語を認識し、検索機能をパーソナライズした形で進化させることができるため、利用者は必要な情報により早くたどり着くことができる。日本語でも機能するため、日本のユーザーにも最適な機能だ」(高橋氏)

 2つめの「Process Optimization」は、ITやカスタマーサービスの担当部門が、ワークフロー実行の基礎となるプロセスを視覚的に作成し、先を見越してプロセスのボトルネックを特定し、それを回避することで、より迅速に問題を解決することができると説明した。

 「デジタルワークフローにおいて、どこにボトルネックがあるのか、どこが非効率になっているのかといったことを洗い出し、そこに対する変更を提案する。より効率的なプロセスを実装したり、変更したりといったことが可能になる」(高橋氏)

Now Platformで強化された「AI Search」「Process Optimization」の概要

 3つめの「Workforce Optimization」は、ITおよびカスタマーサービス管理者向けのワークスペースを提供し、組織の生産性を最適化。エージェントの生産性やワークロード、KPIをリアルタイムでモニターし、結果として顧客体験の向上を実現できるという。

 「これまでにも顧客や従業員とのやり取りを自動化したり、可視化したりといった機能を提供してきた。今回のWorkforce Optimizationでは、最適な人員配置ができているか、確保されていた休憩時間をちゃんと取れているかといった課題にも対応するものになる。休憩時間の少し前からアサインされるタスクを減らし、休憩が取りやすくする仕組みを提供。マネージャー視点でも、人員の最適化を実現できる」(高橋氏)

「Workforce Optimization」の概要

 そのほかCustomer Workflows、Employee Workflows、IT Workflowsのそれぞれでも新機能や機能強化を発表した。たとえばCustomer Workflowsでは、サードパーティポータルにもセルフサービス機能を組み込むことができる新機能「Engagement Messenger」、Employee Workflowsでは、職場管理チームのエージェント間でチケットを転送してコラボレーションできる「Universal Request」機能、IT WorkflowsではIT運用管理(ITOM)にAI技術を適用して問題発生を予測、事前対処を進める「ITOM Predictive AIOps」が紹介された。

法務部門へのリクエストを管理する「Legal Service Delivery」

 新製品として発表された「Legal Service Delivery」は、Parisリリースから北米市場向けに提供されていたが、今回は機能強化を行ったうえで日本市場でも初投入される。これは、Employee Workflowsにおいて、従業員から法務部門へのさまざまなリーガルリクエストを自動化し、ユーザー体験と生産性の向上を図るものだ。

 たとえばLegal Service Deliveryに含まれる「Digital Forensics」の機能では、法務部門が必要に応じてデジタルデータの調査や解析、消去されたデジタルデータの復元などを行う際に、企業の全システムの情報管理者にeDiscovery(電子証拠開示)クエリを割り当てて、追跡に必要で、合理化された、透明性のあるセキュアなプロセスを提供することが可能になるという。

 「法務部門が監査を行いたいという場合、これまではメールやExcelなどのデータを取りまとめて担当者に依頼する必要があった。この新機能により、依頼そのものをServiceNowで管理できるため、適切な担当者に、適切な情報の取得依頼を行える。これまで以上に迅速に捜査が行える」(高橋氏)

「Digital Forensics: Legal Practice App」の概要

 そのほか「eSignature」によって、Legal Service Deliveryの中で契約の電子署名を簡素化。契約の同意や締結をスムーズ化する。なおeSignatureは、標準で「Adobe Sign」や「DocuSign」と統合されている。

 そのほかに、Legal Self-Service、Legal Counsel Center、Legal Matter Management、Legal Reporting and Dashboards、Legal Service Delivery Packsなどの機能も提供するという。

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