例年であれば、この時期はスペイン・バルセロナで開催される「MWC」の余韻とともに、モバイル業界のトレンドを確認する時期だ。今年は異なる状況だが、調査会社のレポートではスマートフォン市場は回復に向かいそうだという。
アップル強し、シェアを20%台に載せて、久々の四半期トップに
1月末から2月にかけて、2020年第4四半期(10~12月期)および2020年通年のスマートフォン市場のデータが出ている。
全体の出荷台数などの統計は最後に触れるとして、ベンダー別の動向を見てみよう。まずはアップルの強さが目立つ。
年末商戦が入った第4四半期の10月に5G対応の「iPhone 12」シリーズを発表した。IDC(https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS47410621)、Gartner(https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2021-02-22-4q20-smartphone-market-share-release)の数字ともにアップルは堂々の首位。前四半期14.9%増の7994万台を出荷したと報告するGartnerによると、アップルの首位奪還は2016年第4四半期以来という。2016年と言えば、「iPhone 7」シリーズ、そして春には「iPhone SE」が出た年だ。
IDCのデータでの2020年Q4のiPhone出荷台数は9010万台、これはベンダーが単一の四半期に出荷した台数としては過去最高とのこと。アップルのシェアは23.4%(IDC)、Gartnerも20.8%と、ともに20%を超えている。
アップルの伸びはiPhone 12シリーズの成功が直結していると言える。初の5G対応モデルだが、価格は抑え目。iPhone 12は8万円台、5Gスマホで先駆けた他のベンダーがプレミアム価格をつけたのとは対象的だった(サムスンが「Galaxt S10 5G」を出してから1年半経過しているので、価格が下がるのは当然といえば当然だが)。この価格帯とコロナのために旅行などの活動が制限され、やや疲れ気味の消費者マインドが合致したのかもしれない。
そしてiPhone 12の成功は、新しい技術(今回は5G)の普及にiPhoneは欠かせないという定説を再実感させたのではないだろうか。
順位落とすファーウェイ、中国ではOPPOがトップに
他のベンダーを見てみよう。
IDC、Gartnerともに2位以降は、サムスン、シャオミ、OPPO、ファーウェイの順だ。好調なのはシャオミとOPPO。サムスンの出荷台数はGartnerはマイナス11.8%、IDCは6.2%増となぜか分かれているが、ファーウェイはともに41~42%のマイナスになっている。その理由は明らかで、米国による締め出しのものだろう。ソフトウェアではGoogle製アプリが使えず、ハードウェア側ではチップ供給が絶たれるなどの支障が出ている。
通年では、ファーウェイは2019年の2位から2020年は3位へ。変わってアップルが2位となった(IDC)。トップは変わらずサムスンで、IDCのデータでシェアは20.6%。前年の21.6%から1ポイントダウンしている。
ファーウェイは本国の中国でもシェアが落ちている。Counterpointの中国スマートフォン市場調査では、ファーウェイのシェアは2020年8月より下降に入り、2021年1月にOPPOに追い越されたとしている(https://www.counterpointresearch.com/oppo-becomes-number-1-smartphone-brand-china-first-time-ever/)。ファーウェイは20%、OPPOは21%。この原因について、ファーウェイは5Gチップの供給が難しいため、高価格帯モデルに絞り込んでいると分析している。
米大統領は交代したが、まだ新政権の対中国政策の今後はわからない。ファーウェイのスマートフォン事業は今年、さらに縮小モードの様子で、South China Morning Postによると今年の製造台数は7000~8000万台の見通し(https://www.scmp.com/tech/tech-war/article/3124415/china-huaweis-smartphone-star-quickly-fading-us-sanctions-bite)。なお、2020年のファーウェイの出荷台数は1億8261万台(Gartner)、その1年前は2億4061万台だ。これにあわせ、本国で展開するショップの閉鎖も報じられている。
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