KDDIは15日、auブランド限定のスマートフォンエントリーモデル2機種「Galaxy A32 5G」「OPPO A54 5G」を発表。これらのランナップ投入の狙いについて、KDDIのパーソナル事業本部 コンシューマ事業企画本部 次世代ビジネス企画部長の長谷川渡氏と、パーソナル事業本部 パーソナル企画統括本部 プロダクト企画部 部長の木下祐介氏が説明した。
「au 5Gエクスペリエンス」がAndroid端末にも拡大
長谷川氏はまず、auの5Gの概況について説明。同社では2021年3月までに約1万局を設置し、全国47都道府県で5Gを展開するとともに、「導線をカバーしていくことを大切にする」(長谷川氏)ことから、山手線や大阪環状線の全駅を2021年春頃までにエリア化したいとしている。
また既存周波数帯の5Gへの活用も積極的に進めており、昨年12月から3.5GHz帯の5G活用を始めているほか、2021年春には700MHz帯の5G活用を進める予定とのこと。700MHz帯は帯域幅が広いワケではなく高速通信には適さないが、長谷川氏によると「屋内も含め、ベースとなる周波数帯になる」とのことで、エリアを大きく広げるのに活用していく考えのようだ。
ただ遠くに飛びやすい帯域とされる700MHz帯といえど、「しっかり基地局を打たなければいけないことは変わらない」と長谷川氏は話す。既に設置している基地局の流用を含め、スピード感を持ってエリア構築を進めていきたいとのことだ。
またKDDIは、5Gの使い放題プラン契約者が5Gエリアで通信した場合、対応するコンテンツサービスで動画の品質などが向上するなど、リッチな体験が得られる「au 5Gエクスペリエンス」という独自の機能を展開している。従来この機能はiPhone 12シリーズのみの対応だったが、今回発表された新機種からはAndroidでも利用できるようになるとのことだ。
さらにau 5Gエクスペリエンスは、今後Android 11以降を搭載したスマートフォン新機種に順次対応させていくとのこと。既存機種についてもOSのアップデートに伴い対応を進めるとしているが、長谷川氏によると「サービス側とグーグル側の準備が必要」とのことで、OSアップデート後すぐ対応するとは限らないようだ。
低価格モデルの拡大で5Gのすそ野を広げる
続いて木下氏から、今回の新機種と投入の狙いについて説明。同社のauブランドでは「みんなの5G」という戦略コンセプトの下、ハイスペックモデルからミドルレンジ、低価格のエントリーモデルに至るまで、幅広い5G端末ラインアップを揃えてきたという。
そこで今回は「本気で5Gを浸透させ、すそ野を広げるラインアップを考えた」と木下氏は話し、エントリーモデル2機種をauから提供するに至ったとのこと。ちなみに両機種とも、auでの独占販売になるとのことだ。
新機種の1つはサムスン電子製の「Galaxy A32 5G」で、発売日は2021年2月25日。約6.5型ディスプレーの大画面とマクロ撮影など幅広いシーンに対応できる4眼カメラ、そして5000mAhの大容量バッテリーを搭載するなど充実した性能を備えながら、IPX8/IP6Xの防水・防塵性能やFeliCaなどの日本仕様に対応しているのが大きなポイントとなる。
一方で、低価格化のためチップセットはMediaTek製の「Dimensity 720」を採用。日本では採用数が少ないMediaTek製チップセットということでネットワークとの相性が気になる所だが、木下氏によると同社では「4Gでも採用実績がある」とのことで、問題ないとしている。
そしてもう1機種は、OPPO製の「OPPO A54 5G」で、発売日は2021年5月下旬以降とやや先になる。こちらは防水やFeliCaなどは搭載していないが、約6.5型の大画面と5000mAhの大容量バッテリー、そして4眼カメラを搭載している。
それに加えてOPPO A54 5Gは、リフレッシュレート90Hzのなめらかな表示と、独自のソフトウェア処理で1億800万画素相当の写真撮影ができるなど、機能面での充実が図られている。チップセットにはクアルコム製の「Snapdragon 480 5G」と、国内では珍しいエントリー帯向けのチップセットを搭載していることから処理速度が気になる所だが、木下氏は「メーカーの努力で、チップセットで(性能が)出せない部分はソフト処理で補っている」とのことだ。
これら2機種に加え、auでは2021年2月10日にシャープ製の「AQUOS sense 5G」を販売していることから、3機種で5Gのエントリーモデルを拡充。エリアの広がりとともに5Gのすそ野を広げ、利用者を増やしていきたいと木下氏は意欲を見せている。
なお気になる価格だが、Galaxy A32 5Gは端末価格が3万1190円で、「かえトクプログラム」による実質負担金は2万5070円とのこと。OPPO A54 5Gは発売日がやや先ということもあって価格は決まっていないというが、Galaxy A32 5Gより「もう少し頑張る」(木下氏)価格になるようだ。
ただ一方で、ソフトバンクがシャオミの「Redmi Note 9T」で税抜2万円を切る価格を実現し、乗り換えユーザーに対して1円で販売することを打ち出したのと比べると、少なくとも現時点ではインパクトが弱い。2万円を切るエントリーモデルあれば、2019年に改正された電気通信事業法の端末値引き規制に触れることなく1円販売することも可能だが、木下氏は「競合とのバランスはあるが、その考えは持っていない。適正な価格で適正なものを販売していきたい」と答えている。
またこれらの端末は、「povo」「UQ mobile」などより低価格のブランドや料金プランとマッチするようにも思える。ただ木下氏によると「マルチブランド戦略発表以降、UQ mobileやpovoの端末をどうするかは議論している」とのことで、詳細が決まり次第発表する方針とのことだ。
また木下氏は、今後エントリーモデルだけでなく、auブランドのハイスペック・ミドルレンジ新機種の発表も控えているとも話している。ほかのブランドを含め、auの端末ラインアップがどのような形で拡充されていくのか、今後注目される所だ。