ASCII.jpの「麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負」では、毎月たくさんのe-onkyo music新譜から10タイトルを選び、その月の特撰タイトルと推薦タイトルを選定している。そこで年末企画として、選定した120タイトルの中から、さらに年間ベストテンを選んだ。今年の最高のハイレゾをぜひ、聴いてみよう。
第10位
『On Vacation』
Till Brönner、BOB JAMES
ドイツのトランぺッター=ティル・ブレナーと、キーボードの大御所ボブ・ジェームスのコラボレーション・アルバム。実に素晴らしい音だ。冒頭「1. Save Your Love for Me」のベース下行旋律で、耳目をすっかり奪われる。ひじょうにクリヤーにして、密度が高く、音色がブリリアントだ。ティル・ブレナーのトランペットのふくよかさ、ボブ・ジェームスのキーボードの突きぬけるような華麗さが特に印象に残る。音場も響きの美しさが特筆。ジャズでは響きは基本的に排除されるが、これほど美しい響きなら、それは音楽に必要な要素だと分かる。
「2. Lemonade」のティル・ブレナーのボーカルもゴージャスで、おしゃれ。「10. On Vacation」はプロバンスでのレコーディングがとても楽しいという雰囲気が伝わってくる。2019年9月、南仏サン・レミの200年ほど前に建てられた荘園領主邸内のスタジオ、ラ・ファブリーク/La Fabriqueで録音。ティル・ブレナーは「プロバンスの光と空気にインスピレーションを受け、これまでのレコーディングとは、全く違うものになった」と語った。
私は原田知世の、短編小説の主人公を演じるように歌う、ラブ・ソング・カバー『恋愛小説』シリーズが大好きで、本欄でもこれまで『恋愛小説』(2015年)、『恋愛小説2~若葉のころ』(2016年)を採り上げ、高く評価してきた。アイドルがいかに大人の歌を歌えるかは、その歌手の人生設計でとても大切なことだが、原田知世は役者として「演じられる」のが強い。『恋愛小説』シリーズはその曲の世界観を、原田が素直に演じ、そのまま自然体に恋愛世界に入っていける(当人も、聴き手も)のが、とても心地好い。
大貫妙子がハーモニーでデュエットする「2.ベジタブル」は、大貫の世界が自然体に感じられて好ましい。「3.小麦色のマーメイド」は松田聖子とはまるで違って、少しけだるくブルージー。佐藤浩市のピアノとデュエットする「5.新しいシャツ」も、ナチュラルで素敵だ。少し音程は低いが、その落ち着きと端正が聴けるのが嬉しい。音調も、化粧を排したナチュラルトーン。
第8位
『ベートーヴェン:「熱情」&「ワルトシュタイン」』
イリーナ・メジューエワ
クラシックの新レーベルから鮮烈なハイレゾ作品が登場した。ビンテージピアノの保守を得意とし、クラシック・スタインウエイを擁する日本の老舗ピアノ工房、日本ピアノサービスの「BIJIN CLASSICAL (ビジン・クラシカル)」レーベルからリリースされた、ロシアの名手、イリーナ・メジューエワのベートーヴェンの名作ソナタ集だ。
日本ピアノサービスは、なぜレーベルを立ち上げたのかとの私の質問に、こう答えた。
「あらゆる年代のスタインウェイに触れるなかで、特に古き良き時代に作られたスタインウェイの生命力溢れるサウンドの虜となっていきました。以来、日本ピアノサービスでは、自分たちの目で選んだ古き良き時代の名品の音を、自分たちの手で蘇らせ、弦楽器の名品と同様に、それらを次の世代と受け渡すことを最大の喜びとして参りました。素晴らしい楽器と優れたアーティストの組み合わせによる録音を後世に残すべく、"ビジン・クラシカル"レーベルを立ち上げました」。
「ビジン(BIJIN)」とは、ロシア極東の少数民族の話すウルチャ語で「なにごとも、あるがままに」を意味する言葉という。この意味の通り極力、人工調を排し、ワンポイント録音によるナチュラルな音響を、モットーとする。「私たちは、優れたピアニストの繊細な表現がダイレクトにリスナーに届くサウンドづくりを理想とします。自然なホールの響きの中で、基本的に2本のマイクでシンプルに録音。極力加工せず、タッチによって敏感に反応する音のニュアンスをできる限り残して、あるがままを製品化します」(日本ピアノサービス)という。
今作のピアノは、1925年製ニューヨーク・スタインウェイ(CD135)。日本ピアノサービスが1994年に入手し、スタインウェイの設計思想を熟知する熟練の技術者たちによって徹底したリビルトが行われた逸品だ。私もこの年代のハンブルグ・スタインウエイを所有しているが、日本ピアノサービスによると「1920年前後は、スタインウェイが私たちにとって最も関心のあるピアノを生み出していた年代です。当時のニューヨーク製の鉄骨は、粘りのある太くリッチなサウンドを響かせるのです」。
メジューエワのベートーヴェンは感情をそのままストレートに爆発させるひじょうに剛毅で大胆だ。音楽エネルギーが大胆に発露され、音が疾走する。メジューエワの圧倒的な音楽的ダイナミックレンジと微細なタッチへの即座に応えるニューヨーク・スタインウェイのレスポンスも、たいへん見事だ。
最近のピアノ録音は、ホールトーンを大量に採り入れる傾向が多いが、ワンポイント・ステレオマイク録音の本作は、くっきりと音像が立ち、音の造形が浮かび上がる。もちろんホールトーンはリッチだが、明瞭な直接音が主体になる。ワンポイント録音らしい、透明度と抜けの良さも感じられる。日本ピアノサービスは録音セッションについて、こう報告した。
「ピアノが『こう弾いて欲しい』と要求するのに応えることで演奏が出来上がっていく、そんな感じで録音セッションが進んで行きました。ピアノがいちばん偉くて(録音当時94 歳!)、演奏者もスタッフもそれに従った感じです」。2019 年4 月12 日~13 日、新川文化ホール(富山県魚津市)で収録。
第7位
『Beethoven: Symphony No. 5 in C Minor, Op. 67』
Teodor Currentzis、MusicAeterna
人口に膾炙したポピュラー曲を、まるで昨日作曲された新曲のように聴かせるクルレンツィス。恐ろしいまでに迫力と推進力に溢れた「運命」だ。ベートーヴェンの指定速度で演奏ということだが、まさに今、この曲がベートーヴェンの手で書かれたその瞬間に立ち会っているようだ(実際には山のような書き直し、加筆、訂正の末に完成したわけだが)。鋭いバネのような弾力性、躍動と快速、たたみ込むような激しさ……という力感係の特徴に加え、ひじょうに細部まで強弱の抑揚が効き、ここでそう来るかと、驚きの連発だ。
普通は慈愛と優しさが語られる第2楽章も軽妙なスタッカートの連発。まるで軽快なドイツ行進曲のよう。第3楽章の低弦のバッセージはあまりに速く、聴く方も認識が追いつかないほど。ベートーヴェンの指定はここまで速かったのかと、驚くばかり。第4楽章のフィナーレも、フルトヴェングラーの第九のフィナーレのように驚速になるが、そのままなだれ込んで終わるのではなく、最後の最後の7つのハ長調和音は、きちっとマルカート(1音1音をはっきり奏する)して、きちんと最後の落とし前をつけるところは、素晴らしいエンターテイナーだ。
まさに息もつかせず……というより、あまりに独特なので、息を飲む……というより、息をするのも忘れる演奏だ。あまりの衝撃に動悸が高まり、脈が乱れそうだ。クルレンツィスの音楽は、耳でなく体全体で、その凄さを受け止めて体感するというのが正しい。余りにも演奏自体が凄まじいので、音量は下げて聴く(?)のがいい。音量が大きいと、余計、体に来る。
昨年、サントリーホールで、クルレンツィスとムジカエテルナをライブで聴いたが、この時、これは決して鑑賞ではなく、「体験」だと思った。指揮者とオーケストラと聴衆の三位が熱く共鳴しあって、ライブをさらに昂奮させる。まさにロックコンサートのクラシック版。自宅での観賞でもまったく同じ感想を抱く。ソノリティが豊かで、ディテールまでバランス佳く録られた音も、いい。今月は、正統的なクリュイタンスのベートーヴェンと共に聴け、その余りの対比を愉しむことができた。
e-onkyo musicにTaylor Swiftレーベルから、事前予告なく突然送られてきた、サプライズリリース。コロナ禍期間にリモートで曲を作り、レコーディングも行った、テイラー・スウィフトの心からの「今」を思う叫びが、ストレートに伝わってくる、まさに自粛期間が生んだ名アルバムだ。音楽、歌詞もそうだが、オーディオ的にも大きな音像で、明解な音像を描き、歌詞の内容を明瞭な形で伝える音作りが、アルバムのコンセプトに合う。ボーカルは感情的だが、発音が微細な部分まで精確なので、この内容はぜひ伝えたいという心からのメッセージが聴ける、魅力的な音調だ。大きな音像だから、それが可能になったというミキシングの技にも注目したい。
第5位
『Labyrinth』
Khatia Buniatishvili
ジョージア(グルジア)出身のカティア・ブニアティシヴィリは、圧倒的にビジュアルなピアニストだ。フランスのプロダクションが制作したメータ/イスラエルフィルとのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番の4K映像を見たが、音楽の素晴らしさもさることながら、むちむちボディにくらくら。
彼女の新作はクープラン、スカルラッティ、バッハなどのバロック期の作品からモリコーネ、ペルト、ゲンスブールと新旧の作曲家の、色とりどりの作品集「Labyrinth=迷宮」。先月はチック・コリアの、クラシックからジャズまでのライブ作品をご紹介したが、そのクラシックバージョンが、これだ。
冒頭の「1. Deborah's Theme (From "Once upon a Time in America")」の柔らかい低音の一撃でまずは、参りました。深く、広く、どこまでも続くような静かな響きの衝撃。美しいメロディがたゆたうように、ゆっくりと綴られる。この遅さで、ここまで耳目を熱く引きつけられるのがカティア・ブニアティシヴィリのアートだ。「2. 3 Gymnopedies: No. 1, Lent et douloureux」のサテイの世界をこれほど叙情的に、そして思索的に弾けるピアニストが他にいるだろうか。
「3. Prelude, Op. 28, No. 4」のショパンのプレリュード。半音階の哀しみの和音進行がもたらす、深い耽溺。心が揺すぶられる。「6. Air on the G String from Orchestral Suite No. 3 in D Major, BMV 1068」。いわゆるG線上のアリアは、彼女のピアノに掛かると、もう悲しみの極致のような気分だ。「17.4'33"」は完全な無音だ。スタジオに座っているのだろう。エアコンだろうかアンビエントなノイズはある。鳥の声がかなり入っている。最後にしっとりとニ短調のバッハのピアノコンチェルトで終わる。うーん、傑作だ。2020年6月16~20日、フィルハーモニー・ド・パリ、グランド・サルで録音。
第4位
『Beethoven Around the World: The Complete String Quartets』
Quatuor Ébène
画期的なベートーヴェンだ。「画期的な」という意味は多数ある。まずいま世界でもっとも注目されているカルテット「エベーヌ弦楽四重奏団」の弦楽四重奏曲全曲アルバムという音楽的な側面。「エベーヌ」1999年、フランスのブローニュ=ビヤンクール地方音楽院在学中の4人によって結成された弦楽四重奏団。Ebeneとは「黒檀」を意味。弦楽器の指板の材質だ。2004年に名門、ミュンヘン国際音楽コンクールで優勝し、一躍注目を集めた。その後、フランス作品、ブラジル作品、モーツァルト作品など話題のアルバムを続々、リリースしてきた。 弾力感とテンションの高い音楽性にて、作曲者の世界を情熱的に再構築してきたエベーヌ弦楽四重奏団の大プロジェクトが『ベートーヴェン・アラウンド・ザ・ワールド』。
ニューヨークのカーネギー・ホールからの「2020年にベートーヴェン:弦楽四重奏曲の全曲演奏会を開催したい」 との提案に、「この際、世界で演奏し、録音して遺す」というプロジェクトにしようと発展。2019年4月から2020年1月まで、北と南のアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、アフリカ、インド、アジア、ヨーロッパの各地でワールドツアーを敢行。各場所の最終公演をライブ録音した。このうち、フィラデルフィアのキメルセンター、ウィーン・コンツェルトハウスのモーツァルトザール、サントリーホールのブルーローズ、サンパウロのサーラ・サンパロウ、メルボルンのリサイタルセンター、ナイロビ、)フィルハーモニー・ド・パリの録音がアルバムに採用された。つまり本サウンドには、演奏の音だけではなく、会場の音響も同時に録音されている。そうした観点で会場別に聴いてみよう。
(1) フィラデルフィアのキメルセンター。 弦楽四重奏曲第1番ヘ長調Op.18-1。直接音がクリヤーに収録され、剛毅で音楽的な表情がディテールまで、こと細かに聴ける。音的には切れ味がよく、立ち上がり、立ち下がりが俊敏。響きは比較的すくなく、直接音の明瞭度が高い。ステレオ感も明確。
(2) ウィーンのコンツェルトハウス・モーツァルトザール。弦楽四重奏曲第7番ヘ長調Op.59-1、『ラズモフスキー第1番』7番。ひじょうに響きが多く、深く、楽団のサイズも大きく聞こえる。響きがスピーカー面だけでなく、手前方向にも拡がってくる。発音に豊かなソノリティが加わって、耳に到達する。実に臨場感が豊か。
(3) 東京のサントリーホール・ブルーローズ。弦楽四重奏曲第9番ハ長調 Op.59-3『ラズモフスキー第3番』。近接マイクでの収録だろう、ひじょうに直接音が明瞭で、クリヤー度はとても高い。音像の輪郭も明晰。会場の響きは比較的少なく、響きの透明度は高い。そのため、エベーヌ弦楽四重奏団が持つ固有の音色感がより明確に識れる。
(4) サンパウロのサーラ・サンパロウ。 弦楽四重奏曲第6番変ロ長調Op.18-6。響きは比較的少ない。ダイレクトな録音態度で個個の楽器の存在感が明確。音像も輪郭もしっかりとしている。剛性の高い空気感だ。
(5) メルボルンのリサイタルセンター。弦楽四重奏曲第2番ト長調Op.18-2。響きは比較的少ない。音色的にはグラテーションが繊細で、彩りが高い。左のバイオリン、センターのビオラ、右のチェロと、配置も明確。音場の透明度も高い。オーディオ的にはもっともハイレゾンらしい音調。実に鮮明でハイテンション。
(6) ナイロビ。弦楽四重奏曲第4番ハ短調Op.18-4。直接音と間接音がよい案配でバランスしている。ソノリティは豊かで、会場感もリアルだが、楽器発音もしっかりと捉えられている。音の粒子のスピードも速い。剛毅でハイレスポンス。エベーヌ弦楽四重奏団の情熱的な歌いが濃密に伝わる。
(7) パリのフィルハーモニー・ド・パリ。弦楽四重奏曲第3番ニ長調Op.18-3。透明度が高く、繊細。響きもそれほど過剰ではなく、直接音は細身で繊細、表情が豊か。
音楽性とオーディオ性のどちらも堪能できる傑作ハイレゾだ。ぜひ、全曲をダウンロードして聴いてみよう。
チック・コリアの6年ぶりのソロ・ライブ・アルバム。モーツァルト、モンク、ジョビン、スティーヴィー・ワンダー、そして自身のオリジナルまで、西洋音楽とジャズ、POPSの作曲家の系譜を探求した。「2つの曲を並べて弾くのがとても面白いです。まずはモーツァルト、つぎにガーシュウイン。この2つはとても合います」とのMCで始まり、ピアノの音を観客に歌わせるという芸の音からは、まるで今、聴いている自分が、その場に立ち会っているような臨場感を感じる。
そして始まるチック・コリアのモーツァルトのへ長調ソナタの第2楽章「2.Mozart: Piano Sonata in F, KV332」は、メジャーの燦めきとマイナー部の哀しみの感情対比がダイナミックだ。後半は少しジャズ風に崩す。対比として次ぎに演奏されたガーシュウイン「3.Someone To Watch Over Me」は、チック・コリアの本領が発揮されたジャジイな雰囲気を満喫できる。
音もたいへんよい。3つの会場で録音されているが、会場により音のキャラクターが少し違うのが面白い。アメリカ合衆国フロリダ州クリアウォーターのキャピトル・シアターは、響きも多いが直接音が主体で透明感があり、ひじょうにクリヤー(2018年8月17日)。パリのフォンダシオン・ルイ・ヴィトンは、きらきらとした輝きが、チック・コリアのピアニズムをより深く演出する(2018年4月26日)。ベルリンのアポステル・パウルス教会はピアノの尖鋭さと教会ならではの深い響きが両立している。ピアノの立ち上がり/立ち下がりが鋭い(2018年4月28日)。
第2位
『This Dream Of You』
Diana Krall
ダイアナ・クラールの3年ぶりのソロ・アルバム。ダイアナ・クラールはフレーズに込める感情の濃さでは、あまたの歌手を圧倒的に凌ぐ。この未公開音源アルバムでは、そんな悶えるような熱き感情感がたっぷり聴ける。
「1. But Beautiful」の冒頭「LOVE IS FUNNY OR IT'S SAD♪」には、深く心を打たれる。「3. Autumn In New York」の「Autumn In New York♪」を一言聴いただけで、秋のニューヨークの景色が、目の前に浮かぶ。音も素晴らしい。大きな音像のボーカルは、少しの息継ぎまでこと細かに、丁寧に捉え、鮮明で尖鋭だ。バックのピアノ、ベース、ドラムスも音像が立ち、実に明快。レコーディングはロサンゼルスのCapitol Recording Studios。エンジニアは巨匠が担当した。音の透明感、優れたセパレーション、そしてリズムの躍動感というアル・シュミットの音の美質が、100パーセント発揮されている。 これだけの充実したテイクがお蔵になっていた。今回、蔵出しのチャンスがあったことを、ファンは感謝しなければならない。
第1位
『John Williams in Vienna』
Anne-Sophie Mutter、Wiener Philharmoniker、John Williams
ジョン・ウィリアムズとウィーン・フィルハーモニー管弦楽団は初顔合わせ。あのウィーン・フィルが「スターウォーズ」!という意外性が愉しい。ムジークフェライン・ザールで、2020年1月に録音と、コロナ禍直前の滑り込みライブだった。
「スターウォーズ」は映画サウンドトラックのロンドン交響楽団バージョンが有名だが、さすがはウィーン・フィル。柔らかく、しなやかで、艶に満ちたサウンドだ。ハリウッド流の華やかさと、ヨーロッパの伝統が重なった音調。ウィーン・フィルの起用は、大いなる成功を収めている。ムジークフェライン・ザールの豊かなソノリティとウィーン・フィルのグロッシーさが相俟って、映画音楽に深い意味合いを与えている。「13.Raider's March」の冒頭のトランペットはマーラーやブルックナーなどの後期ロマン派の音がする。版元資料に面白い話があったので、そのまま紹介しよう。
リハーサル中に驚きがあった。ウィーン・フィルの金管楽器奏者たちが、スター・ウォーズの「帝国のマーチ」をプログラムに追加できないかと頼んできた。「正直言って、これまで聴いた“帝国のマーチ”の中で最高の演奏のひとつでしたよ」とウィリアムズは振り返った。「彼らは、まるで自分たちの作品を演奏するように演奏しました。プログラムの最後に演奏する機会を与えてくれたことにとても感謝しています」。2020年1月18&19日、ウィーン、ムジークフェライン・ザールで録音。
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