3歳児くんの保護者をしてます盛田諒ですこんにちは。子は誰に教わったのか、お風呂では「全集中!車の呼吸!」と叫び、ファミレスではストローをくわえて「ねずこ〜!」と首を振っています。君は長男なのか妹なのか。
このごろ育休連載「男子育休に入る」を読み返す機会があったんですが、初めての子育てで完全にどうかなっていて笑いました。それにひきかえ最近はテンションが低いというか、普通に育児のグチが増えているというか。当時はまるで新生児に恋でもしていたようでした。ここはBack to the 初心ということで3年前の勢いと文字量で、3歳児との1年を振り返りたいと思います。
●赤ちゃんじゃなくなった
3歳になってからは「もう赤ちゃんじゃないな」と感じることが増えました。1〜2歳のころは10kg程度、「米袋だ〜」などと言っていた体重は14kgを超え、抱っこで腕がパンパンになるほど重くなりました。足腰は鍛えられベビーカーは卒業。子ども自転車「へんしんバイク」にも乗れるようになり、突如ダッシュする子をあわててダッシュで追っかけるようにさえなっています。
家ではまだ親べったり。ですが4歳は友だちとのあいだで社交性が出てきて人間関係が増える時期とされ、3歳は赤ちゃんの名残を感じられる最後の時期かもしれないなあと感じます。「お父さんナントカって言って!」と言われつづけるのはしんどいですが、これも今だけと思うと貴重ですね。
情緒の面では、2歳児よりもさらに主張が強くなってくる時期でした。
こちらの目を引こうと「面白いことするから見てて!」などと言い、よくわからないポーズをとったり、歌ったり踊ったり延々やっています。起きているうちは知っていることをテキトーに組み合わせた作り話をずっとしていて、近所の森には夜恐竜がいるとか、火星にはハムスターが住んでるとか、様々な知見を披露してくれました。満月の夜「月を眺めて走り抜けてく真っ赤なポル●ェ〜」とロマンチックに百恵ちゃんを歌ってくれたこともありました。
2歳まで封印していたテレビも解禁したことで、Amazonプライムビデオやディズニープラスも作り話に生かされています。お気に入りは「カー・SOS」という廃車寸前のクラシックカーをよみがえらせる番組で、司会のティム・ショウになりきった子は「おいおい、こいつはひどいな、エンジンがサビだらけじゃないか」などと言いながらトミカをひっくりかえしています。
2歳児まで「車」「新幹線」くらいだった興味の幅は大きく広がり、「日産GT-R」「N700S」「ディプロドクス」「キラメイレッド」「ミニオン」など口にのぼる固有名詞の数も増えました。「それはパラサウロロフス?」「いや、これはただのテリジノサウルス」といった受け答えもできるようになり、知識の正確さはともかく、普通に意思疎通ができることには驚かされます。
●37歳児としてイヤイヤに向き合う
反面、意に沿わないことには激しく抵抗するようになりました。親の言うことをきかないことが増えるため「イヤイヤ期」とも言われますが、意思を伝えるという人類史上最大の進歩が見られる時期ということで興奮しています。
まだ言葉の使い方がよくわかっていないので「イヤ」の代わりに「嫌い」「あっち行って」と憎まれ口をたたくこともあり、人によってはイラッとくることもありそうですが、個人的にはそんなときこそ保護者の醍醐味があるものでした。子どもにすれば親を悪者にしても譲れないわけがあるもので、大人目線で叱っては子どもの気持ちと世界を台なしにすることになってしまうと、なるべく子どもの気持ちやストーリーにあわせ、37歳児としてリアクションをとるようにしていました。
たとえば夜のリビングを見てみます。寝るより遊ぶほうが好きな子どもは「ねんねやーだ!まだ遊んでるの!」と訴えます。私は「いやだよねえ、もっと遊びたいもんねえ」と伝えた上、強めにハグをして、そのままオリャー!とふとんに転がりこみ、「こちょこちょ恐竜がきたぞ〜!」とくすぐり、勢いで絵本の読み聞かせに入っていきました。ご覧ください、37歳児です。
たまにどこで攻撃方法をおぼえてくるのかエイエイ蹴ったりぶったりしてくることもありましたが、「ハッハーンこれは愛されているか確かめるタイプのやつだな」ということで、「ええっお父さん蹴ったらだめでしょう!?」と言いながらここぞとばかりぎゅうぎゅう抱きしめたり転がりまわるようにしています。傍目にはイタいやつですが、家の中では恥も人目もないので大丈夫です。
注目を集めたいがため、子がうんこだのおしっこだの汚いことを言ってみたり、「これはポイだよ」と言っておもちゃやスプーンなどを投げてみたり、わざといけないことをしたり、ふざけてみせるようになったのも最近です。大人からすれば困ったちゃんですが、自分にできることを試しているのだろうなと思うとかわいいものです。もちろんダメなことを教えるのは大切なのですが、こういうとき子どもを単純に「悪い子」でくくって叱るのは若干違うなと感じてしまいます。
といっても、外にいるときや、子どもが眠いとか腹が減っているとかでほんとに機嫌が悪いときはどうしようもなく、活きのいいマグロを抱えるようにしてその場を終わらせるしかないのですが。勢いよく泣いている子どもを抱えて保育園に連れていったり、ジャバーンとお風呂に入れたりすることもありました。おそらく多くの親たちと同じように、本当はこっちだってこんなことしたくないんだけどなあというチクチクした気持ちを抱えながら。
そんなときは「君の愛にこたえる気持ちに偽りはないぞ」と胸中つぶやき、チクチクとした痛みをやりすごしたものです。
●やればできることがわかっていく
イヤイヤの激しい主張とともに、本人の自主性にまかせる楽しさが出るのも3歳からでした。なんでも「はるくんがやってあげるからね!」と手を出したがり、包丁で野菜を切るなど危なっかしいことをやりたがるのが3歳児です。
ボタンつきパジャマを自分で着たり、食べ終えた食器をシンクに持ってきたりといった上品なお手伝いもありがたいのですが、ヒヤヒヤしながらさつまいもの皮むきをまかせてうまくいったときは達成感も大きかったですね。皮をむいたさつまいもを素揚げにして食べたことはいまだに子の記憶にあるようで、「あれめっちゃうまかったね!」と事あるごとに言っていました。
保育士さんのすばらしい教育の成果により、トイレに行ったり、着替えをしたり、おはしを使えるようになったことには感銘をおぼえました。読み書きやおもちゃの片づけはまだ習慣づいていませんが、まだ人間始めて3年なので焦らんでもいいよねと思っています。私だって整理整頓が趣味になったのは社会人になってからだし、それより小さくてもできることをどんどん増やして「大抵のことはやればできるようになる」という肌感をつけてほしいと思います。
●3歳児はまだ夢の中
1年をざっと振り返ると、体つきがしっかりして、口が達者になり、できることが増え、それなりに話ができる「小さな人」になってきた時期。主張が強くなったぶん、大変なことと楽しいことは同じだけ増えていきました。
子の性格も大分わかってきました。三つ子の魂百までと言いますが、あれは「3歳までにしつけをしろ」ということではなく、人の性格は子どものころから変わらないもんだねということで、人間なのか動物なのかという時期を過ぎ、ひとりの人になってきたんだなと感じます。
とはいえまだ時間の概念が「今日」「明日」に限られていたり、話の脈略がなかったり、ひらがなさえ読めなかったり、夢の中に住んでいるようなところもあり、そのどっちつかずなところが楽しい時期でもあります。むしろ3歳児と話をするこっちが夢を見せてもらっているようなところもあり、考えたら恋みたいなものかもしれないですね。実際、保育園が終わる時間が近づいてきた今もまた、子どもの声と顔がしぜんと浮かんできています。さて今日はどんな作り話をしてくれるかな。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。3歳児くんの保護者です。Facebookでおたより募集中。
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