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建設業は働き方改革とICT活用で人材確保が急務

修繕が必要な道路橋の6割は未着手か、背景に建設業の人手不足

2020年11月25日 11時00分更新

文● 貝塚/ASCII

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リソース確保は急務、しかし人手不足は深刻

 老朽化する道路インフラの整備が遅れている背景の中でも、建設業界の人手不足は深刻。「国土強靭化基本法」に基づき、国の土木建設投資額は増加しているが、就業者数は減少を続け、高齢化も進んでいる。グラフを参照すると、建設業界の就業者数のピークは1997年。その後も右肩下がりに下がり続け、2010年頃からは減少が落ち着いたものの、微増と微減を繰り返す横ばい傾向だ。

 道路建設に関わる企業で構成され、国内の道路に広くかかわる一般社団法人 日本道路建設業協会(以下、日本道路建設業協会)は、10年後には高齢化の影響で大量離職が見込まれる中、若手入職者の数は、それを補うのに不十分な状況だと分析する。

「厳しいイメージ」を払拭、建設業界の取り組み

 建設業界について、「他産業に比べて就労環境が厳しい」イメージを持つ人が多いことも、就業率の低さにつながっているだろう。「きつい、危険、給料が安い、休暇が取れない」など、ネガティブな言葉で語られることも多い。

 2018年6月に労慟基準法が改正され、建設業については、2024年4月1日から罰則付きの時間外労働規制も適用される。これも手伝って、現在、建設業界でも「働き方改革」をテーマに、現状を改善し、「魅力ある建設現場」「ライフプランや夢が描ける環境」と、「給与が良い、休暇が取れる、希望が持てる」という新しい建設現場の実現を目指しているという。

 過去10年、建設業における総実労働時間の平均は、年間2050時間付近で、ほぼ横ばいで推移していた。同時期の全業種の総労働時間は、1750時間から1050時間のゆるやかな減少傾向であり、比較すると、建設業の労働時間が長いことは明らかだ。

 2018年以降は、建設業の総実労働時間も減り始めており、2019年には、10年前と比較して30時間ほど減っている。完全週休2日制より休日日数が実質的に多い制度を取り入れている企業の割合は、2019年時点で、全産業平均では52%だが、建設業は28.6%。労働時間に関しては、やはり他産業に遅れをとっているのが現状だ。

 この対策として、日本道路建設業協会では、2018、2019年度の2年度について、毎月第2土曜日の閉所運動を展開。現在は、2022年までに業界として年間の時間外労働時間を720時間以下にすることを目指しているという。

 また、建設産業における女性の定着促進に向け、国土交通省は「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」を策定し、2020年1月に発表。女性の活躍も人材の確保に向けた重大なテーマとなっている。

現場だけでなく、キャリアアップにもITを活用

 建設業界では、働き方改革の実施と合わせて必須となる、生産性を向上させる取り組みとして、ICT(情報通信)技術の建設現場への導入促進、年間工事消化量の偏りの平準化、安全、品質、トラブル防止などの取り組みについても、併せて推進している。

 国土交通省では、2016年から、建設現場におけるICT(情報通信技術)の活用や施工時期の平準化等を推進する「i- Construction」というプロジェクトをスタートさせている。日本道路建設業協会でも、ICTを積極的に活用する舗装工事を「i- Pavement」と呼称し、推進本部を設置。会員企業の技術的サポートなどの活動に注力しているという。

 たとえば、地上型レーザースキャナーやトータルステーション、地上移動体搭載型レーザースキャナーなどを用いると、起工時や各工種完了後の出来形を、3次元データとして測定できる。このデータを活用すれば、「面」を計測する作業が効率化でき、また、施工時にもデータを活用したマシンコントロールが可能になる。

 労働時間を減らし、「休暇が取れる建設業界」を目指しながら、ICT技術を活用することで業務を効率化し、生産性も向上される。この動きは、建設業界に限らず推進されているが、建設業界でも、その実現に向けた取り組みが進んでいると言えるだろう。

 建設業界でのICTの活用事例としてユニークなのは、国土交通省が主導する「建設キャリアアップシステム(CCUS: Construction Career Up System)」だ。

 2019年4月にスタートしたシステムで、内容としては、建設現場で働く作業員の就業履歴や、技能のデータベースをシステムに蓄積するという仕組みになる。

CCUS公式サイトより

 対象はおよそ324万人の建設技能労働者全員。建設技能労働者に、身分証となるカードを保有してもらうことで、さまざまな工事現場を渡り歩く労働者の就労履歴を記録し、管理できるようにするシステムだ。

 目的としては、「作業員一人一人の経験と技能を見える化」し、「正しく評価」すること。カードには、現場での就業履歴などに加えて、保有資格なども記録。初級技能者、中堅技能者、職長、高度なマネジメント能力を有する者という4段階で評価する。

 国土交通省の調べによれば、建設現場の生産労働者(技能者)の賃金は、45〜49歳でピークを迎えている。これは、体力のピークが賃金のピークになる側面があることを意味し、長年の経験や、マネージメント力が十分評価されていないという、業界の実情が見えると日本道路建設業協会は指摘する。

 国土交通省では、初年度に普及率およそ30%の100万人、5年後に普及率100%を目標としているが、初年度の目標は残念ながら未達となった。

 過酷な職場環境のイメージが強い建設業で、能力の適正な評価と、処遇改善につながるシステムということもあり、今後の認知度の向上や、スムースな運用が求められる。

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