思いのほか強力な動画撮影
次に動画撮影をチェックしてみよう。デジカメの世界同様、スマートフォンでも動画撮影機能は重視されつつある。本機では、背面カメラでは最大4K/60p、インカメラでは最大FHD/30pでの撮影が可能だ。
現在スポーツカメラを中心に、強力な手ブレ補正を搭載する傾向にあるが、本機の場合、撮影シーンに合わせて4モードもの多彩な手ブレ補正を搭載している。
「標準」がデフォルト設定になるが、通常のフィックス撮影ならこれで十分だ。歩きショットでは歩行感が出るが、補正なしよりも安定しつつ、それほど不自然にならない映像となる。
「ロック」は2倍ズームとなり、遠景を手持ち撮影する際に使用する。撮影開始前は効果がOFFだが、撮影を開始するとピタリと留まる。今回のサンプル動画では三脚は全く使わずすべて手持ち撮影だが、異様にぴったり留まっているのは「ロック」モードのおかげだ。
「アクティブ」はカメラ側が激しく動く場合の補正機能だが、走って撮影しても、多少の上下感があるだけで異様にぴったりセンターに留まっている。ただ「アクティブ」で撮影すると解像度がFHDに落ちてしまう。
そのほか手ブレ補正の一環として、「シネマティック撮影」がある。これは手ブレ補正を効かせながら、さらに50%スローで撮影するというモードだ。スローにすれば細かいブレがあっても動きが遅くなるので、見苦しくはならない。だが、かなり力づくと言えば力づくである。またスロー撮影ゆえに、音声収録はOFFになる。コンテンツの中に入れるとそのカットだけ無音になってしまうので、音を後付けで付けられるビデオ編集ツールが必要になる。
手ブレ補正比較
一つ注意点として、「アクティブ」と「シネマティック撮影」では、mp4/H.265のコードIDが「hev1」に設定されるため、macOSやAdobe Premiere Rushで扱えないなど相性が悪い。動画編集する場合は、設定で「動画の保存容量を節約」をOFFにするとH.264での撮影となるので、互換性が高くなる。
タイムラプス撮影は、1倍速から120倍速まで設定できる。1倍速はいらないんじゃないかと思うのだが、ちょっとその真意が測りかねる。
航空機の着陸までを5倍速で撮影
今回は晴天の午前中に撮影をおこなったが、ディスプレイがOLEDで高コントラストな上に輝度も高く、撮影に不便は感じなかった。多彩な手ブレ補正のおかげで様々な撮影シーンに対応できるが、それぞれの特徴を把握しておかないと編集の時が面倒なのが残念だ。
4K/60pで撮影した
そもそもグーグル謹製スマートフォンのおもしろさは、たとえ写真や動画と言えども、ソフトウェア・パワーでゴリゴリに押し切っていくところだが、そうした方向性をよく体現しているのが本機である。また動画に関して4Kは撮れるが、HDRには全然興味がなさそうなのがいかにもグーグルっぽい。
マニュアルで細かく絵づくりができるスマホカメラと言えば、αと同じ設定ができるソニーXperia 1シリーズを思い浮かべるところだが、本機は真逆の立ち位置だ。つまりソフトウェア処理やAIで極力自動化して、誰でも簡単にいい絵が撮れるところを目指している。
中級機ながらも、今のグーグルの技術のおもしろさを十分体験できるスマートフォンである。
※この記事に使用した機器
・スマートフォン:Pixel 4a(5G)
・OSのバージョンAndroid 11