エクイニクス・ジャパンは5月に代表取締役社長に就任した小川久仁子氏によるビジネス説明会を開催した。小川氏は、現在の国内での課題やエクイニクスの実績を改めて解説しつつ、データセンター事業者からの進化を図る同社の方向性について説明した。
DXにおけるインフラの重要性をインプットしていく
新社長の小川久仁子氏は、1989年の入社以来、20年以上に渡って日本IBMに在籍。その後、ユーザー企業での経験を積むべく2015年にマクロミルの執行役グローバルCTOに就任し、コロナ真っ盛りの5月にエクイニクス・ジャパンの代表取締役社長に就任している。
小川氏は、デジタル競争力のランキングが低い日本の現状について説明。IMD国際競争力研究所のランキングにおいて、「ビッグデータ」「デジタル人材のグローバル化」「企業の変化の迅速性」という3分野は63カ国中、最下位になっていると指摘した。また、コロナ禍において対面や接触が避けられる中、デジタルトラフィックが激増している現状についても言及した。
小川氏は国際競争力の強化やデジタル化などの課題に対応するためのインフラの重要性を説く。「DXにおけるさまざまな選択で決してインフラが最優先事項でないことはもちろん理解している。でも、たとえばモバイルアプリでも、いったん遅いと感じたら、お客さまはもう使ってくれない。以前よりインフラの位置づけが重要になっていることを、正しくインプットしていきたい」(小川氏)。
続いて説明したのはこれまでのエクイニクスの実績だ。1998年に設立されたエクイニクスは、もともとは複雑だったインターネットをシンプルにすべく、ネットワークをつなぎあうインターコネクションの場所を提供していた。この相互接続拠点にサーバーやネットワーク機器が置かれることになったことで、結果的に電力とスペースが必要が必要になり、IBX(International Business Exchange)と呼ばれる同社のデータセンターが生まれた。「IBMでアウトソーシングのビジネスを担当してときに、データセンター同士をつなぐべきだと主張していたが、当時は運用にプライオリティが置かれていた。でも、エクイニクスはデータセンターの相互接続を長らくやってきており、私もようやくやりたかったことが実現した思い」と小川氏は語る。
現在、エクイニクスは世界26カ国・56都市圏に、214以上のIBXデータセンターを運営しており、ユーザー企業は世界で1万社を超える。また、創業以来70四半期連続で増収という継続的な成長を遂げ、年間の総売上は約6000億円を超える。コロケーションカテゴリでのマーケットシェアも世界一で、2位にデジタルリアルティ、3位にNTTが続く。
ハイパースケーラー向けデータセンターは予定通りスタート
日本では2015年にビットアイルを買収したことで拠点を一気に増やし、現在は東京に11拠点、大阪に2拠点のデータセンターを有する。「2001年当時、できたばかりのTY1を見に行ったことがある。20年経って、ここで説明しているのは運命的なものを感じる」と小川氏は語る。
ネットワークとサービス事業者、顧客企業を相互接続することで、長らく成長を続けてきたエクイニクスだが、近年は大きなビジネス変革に乗り出しつつある。
まずはクラウドシフトの加速に対応したハイパースケーラー向けデータセンターへの投資だ。ここで言うハイパースケーラーとは、エクイニクスとパートナーシップを結んだAWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platformなどのパブリッククラウドを指しており、ロゴとしてはServiceNow、Oracle、IBM、Dropbox、SAP、Alibaba、Salesforceなども挙げられていた。
これらのハイパースケーラー向けのデータセンターは、既存のデータセンターに比べて電力容量が非常に大きいため、ハイパースケーラー専用の「xScaleデータセンター」として提供する。具体的にはシンガポールの政府系VCであるGICとともに1000億円以上の合弁投資を行ない、東京で2カ所、大阪で1カ所のxScaleデータセンターを建設している。TY12xと呼ばれるxScaleデータセンターはコロナ禍でも順調に建設が進んでおり、12月にはサービス開始の見込み。大阪のOS2xは2021年のQ4に開設見込みとなっている。
デジタルインフラ企業としてベアメタルクラウドの提供を開始
さらにデータセンター事業者からグローバルなデジタルインフラストラクチャー企業へとリブランディングも行なっている。「今まではわれわれ自身もデータセンター事業者と言っていたが、今後はITインフラに必要なものをすべて準備できるデジタルインフラ企業になっていく」と小川氏は語る。
具体的には今までのデータセンターやインターコネクション、クラウド接続といった今までのサービスに加え、ベアメタルクラウド「Equinix Metal」をデジタルインフラの構成ブロックとして提供する。
ベアメタルクラウドのEquinix Metalでは3月に買収したPacketのAPI、ハードウェア自動化、プロビジョニングなどの技術と、エクイニクスの技術を組み合わせたことで、高性能なサーバーを迅速にデプロイできる。ユーザーはユーザーインターフェイスからクリックするだけで、設定済みのグローバルネットワークに接続でき、APIや共通ライブラリを用いたプロビジョニングやオープンソースソフトウェアの活用も可能になるという。
現在は世界4カ所のIBXデータセンターで展開されているが、2021年の初頭までには14の都市で利用可能になる予定。小川氏は、「エッジに必要なものはすべてそろえていく。ITリソースをオンデマンドで迅速に提供できる環境を実現する」と新しいプラットフォームサービスについてアピールする。