音声を有名人風に変換して出力
チャット相手を驚かせたり、詐欺事件の発生も!?
さらに、SOGOU輸入法(IME)の変わった機能として、ボイスチェンジャー機能がある。ただし、単なるボイスチェンジャーではない。吹き込んだ音声をAIによって老若男女、あるいは別の著名人の話し方に変更するものだ。たとえば、クレヨンしんちゃん中国語版の声優(といっても、これがまた日本のしんちゃんの声に似ているのだが)に変えたり、中国ネット業界を代表するAlibaba(阿里巴巴)のジャック・マー(馬雲)氏のような話し方に変えてくれる。音声を変えた上で中国で国民的人気のSNS「微信(WeChat)」にその音声を音声メッセージとして入力できるというものだ。
つまりSOGOU輸入法を入れれば、あたかもジャック・マー氏になったかのようなボイスメッセージをWeChatのチャット相手に送ることができるというわけだ。筆者の非ネイティブの中国語を話してみても、いかにもジャック・マー氏が語りそうなしゃべり方に変換してアウトプットしてくれる。男性、女性、子供、老人、クレヨンしんちゃん、そのほか中国の有名人にも筆者の声を変えてくれる。
ボイスチェンジャー機能は最近追加された機能だ。機能追加時にはネットの反応として「ジャック・マー氏ライクなニセボイスでの詐欺事件が多発する! 投資詐欺待ったなし!」なんて声が出てきたのは中国らしい。なにしろGoogleストリートビューやGoogle Earthに似たサービスが中国で登場したときは、「家々がさまざまな角度から丸見えで、泥棒に悪用される!」なんて話があったくらいなのだ。
iFLYTEKの「訊飛輸入法」では、あくまでジョークツールとしてだろうが、有名大学の学生証や、有名企業の社員証、それに結婚証明書など身分証明書類のフェイク画像の作成が可能で、それを画像として出力する機能がある。これもまたジャック・マーの音声再現のようなわからない人は騙されてしまうようなジョーク機能だ。実際ニセの名門大学合格証により、村人が信じて村中お祭り騒ぎになったニュースもあるくらい。とはいえそんな機能を出してしまうくらい、活発な動きがIMEにはあるわけだ。
変わったところでは暗号文変換という機能がある。文字を入れると、意味をなさない文字や絵文字の羅列に変換されて出力され、それを他の人が訊飛輸入法を使うと復号して本来の文字が表示されるというもの。文字関係では、慣用句などで体や動物などの文字がよく入るが、絵文字にある漢字を入力した場合、自動的に絵文字に変換してくれるという機能もある。例えば馬耳東風と書いたら馬と耳がそれぞれの絵文字になるといった具合だ。
WeChatで使うためのさまざまな面白機能がIMEに盛り込まれる
日本のIMEもかな漢字変換以外の進化はあるのでは!?
細かくいえばまだまだいろいろあるが、3社のIMEの変わった機能を紹介した。WeChatがネットの中心にある中で、WeChatに入力するための音声や(GIF)画像、挨拶の長文テキストを手間なく入力できるよう、IMEアプリは成長していた。
さらにIMEにはミニプログラム機能がついていて、このIMEのゲームから別のミニゲームを読み込んで遊べたり、電卓など簡単なユーティリティーがあって使えたりできる。誰もが使うIMEをポータルにして、ユーザーの囲い込みをしていくのかもしれない。ガラパゴスな進化を遂げる中国IMEアプリだが、学べるところは学んで何かの製品作りの役に立ててほしいと思うところだ。
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