アスキー家事育児担当の盛田諒ですこんにちは。先日、掃除中のルンバを何気なく見ていたところ、突如進路を変え、こちらに向けて走ってきたことがありました。まるで、天面のカメラセンサーがこちらの視線に気づいたかのように。延々続く在宅生活で人間側のセンサーが壊れはじめているのかもしれませんが、もしかしたらそのうち、本当にそんなことが起きるかもしれません。
アイロボットジャパンが8月26日、ロボット掃除機で使えるアプリのメジャーアップデートを発表しました。そう言われると「ほーアプリの更新ね」とスルーしてしまいそうですが、今回は雰囲気が違います。同社では「史上最大のデジタルアップデート」と位置づけ、同社創業者のコリン・アングルCEOは「iRobot Genius Home Intelligence」と名付けました。天才とは。
●家具を自動で認識するように
8月25日配信開始の「iRobot Home バージョン5.0」はデザインがガラッと変わり、「CLEAN」ボタンがドカンと出てくる爆破スイッチのような画面から、様々な機能を使うボタンを配した、コントロールパネル的な画面になりました。デザイン変更に合わせて、様々な新機能が加わっています。
●新機能
1.部分清掃エリアを作成して清掃する対象物やエリアを指示
2.清掃のルーティンを「お気に入り」として作成・保存
3.ルンバとブラーバを連携させた「Imprintリンク」のスケジュール管理
4.家を離れたら清掃を始めるようにするスケジュール機能
5.スマートマップ機能の向上
6.利用者にあわせたおすすめ清掃の提案
最大の新機能は、掃除する部屋を指定する「スマートマップ」で、掃除させたいところを選択できる「部分(エリア)清掃」機能。
さらにルンバs9+やルンバi7+など上位機種天面のカメラセンサーを使って家具を認識、オブジェクトとして登録して清掃する「家具認識」機能も使えるようになりました。家具認識機能はロボット掃除機業界としては初です。
技術的には、カメラセンサーが取得した画像データと、クラウドに蓄積された画像データを照合して、マップに「家具」としての情報を書きこんでいくもの。利用頻度にあわせ精度も上がります。最初はダイニングテーブル、イス、ソファ、キッチンカウンターを自動的に認識するようになっていて、今後、3ヵ月ごとのソフトウェアアップデートにあわせて対象物を増やす予定です。
たとえば食後にダイニングテーブルの下をルンバに掃除してもらったり、キッチンカウンターの前にこぼしたジュースをブラーバに拭いてもらったりできるようになります。これまではスティック掃除機や床ぶきシートで拭いていたようなちょっとしたごみや汚れまで対応可能。スマートスピーカーも対応しているので「OK Google、ソファを掃除して」で掃除できるようになります。
●掃除をさせたい場所は「お気に入り」で
次に大きな変化は「お気に入り」。掃除するエリアを指定し、名前をつけて登録できるようになりました(現在名前に使えるのはアルファベットのみで、24文字以内まで)。登録しておいたお気に入りは、アプリからショートカットボタンのようにタップして使えます。家具認識機能と合わせ、例えばダイニングテーブルの下をショートカットとして登録することもできます。
お気に入りには曜日や時間も割り当て可能。たとえば犬を散歩に連れていっているあいだにケージのまわりを掃除するルーティンを登録することもできます。生後8ヵ月の娘がいるというアイロボット担当者は、離乳食を食べたあとキッチンとダイニングテーブルの下を掃除する「離乳食」というショートカットを作り、スマートスピーカーに毎朝「離乳食!」と叫んでいるそうです。
ほかにIFTTTやスマートホームと連携して、「家を出たら掃除を開始する」といったルーティンを組むことも、アプリからできるようになっています。
家具認識機能とお気に入り機能は、高性能のチップを積み、カメラセンサーを備えたルンバs9+、ルンバi7/i7+、ブラーバジェットm6のみ利用可能です。
●コードの多い場所は「侵入禁止にしませんか」と提案
機械学習を使い、掃除にまつわるレコメンド、提案機能も備えました。
例えばケーブルがたくさんある場所など、よくエラーを起こして止まってしまうところを認識すると「侵入禁止エリアに設定しませんか」と提案します。
スケジュール面では、清掃履歴をもとに、たとえば火曜・木曜の夜にいつも清掃していると認識したとき、「スケジュールに追加しませんか」と提案。
さらに利用者の位置情報をもとに、花粉の季節、ペットの毛の生え変わり期などから「掃除の頻度を高めませんか」などと提案する機能も備えます。
提案機能は、カメラセンサーが必要になる侵入禁止エリア以外に限って、ルンバ900、ルンバ e5/600などでも利用可能です。
●今後のアップデートが気になる
アイロボット天才プロジェクトのねらいは、利用者のことを理解し、その人ならではのはたらきをさせること。最大の注目点は今後のアップデートです。3ヵ月に1回の更新で、どんな機能が追加されるのかがとても気になります。
たとえばパナソニックのロボット掃除機「ルーロ(Rulo)」には、利用者の足をセンサーで認識し、利用者の後をついてきて、指定の場所を掃除させられる「otomo機能」があります。今回ルンバが搭載した「家具認識」機能はカメラセンサーを利用するため、原理的には、人物のように動くものも検出可能。ルーロと同じように利用者の後をついていったり、逆に利用者の足元を避けて掃除をするようなアップデートも、可能性としては考えられます。
高性能な目をもったルンバは、やがてあなたの生活をすみずみまで知りつくし、誰よりもよく、家のことを知っている存在になるかもしれません。そのときにはあなたがルンバに掃除を頼むより、「掃除しますか」と呼びかけられて「うん」と答える回数のほうが多くなるでしょう。同居人のようになったルンバの視線を感じながら暮らすのも、やがて普通のことになりそうです。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。3歳児くんの保護者です。Facebookでおたより募集中。
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