自前のOSを自前のCPUで動作させる
スマートディスプレーを中心にしたユーザー囲い込み
ところでファーウェイの製品といえば、新製品についてGoogle Playやそのほかのグーグルのサービスは使えなくなり、また半導体の製造委託が困難になるなどの報道がなされている。同社はこれらの問題を解決すべく、スマートディスプレーには自前でOSとCPUを用意している。
ファーウェイのスマートディスプレーには、独自OSとして昨年大きく報道された「鴻蒙操作系統(HarmonyOS 1.0)」を搭載している。この鴻蒙操作系統には、動画サービスのアプリがプリインストールされているが、それではコンテンツが足りないとばかりにヘビーユーザーがAndroid用アプリを入れる手法を編み出しているあたり、実はAndroidとの何らかの互換性があるようだ。また、スマートフォンの映像をそのままディスプレイに映し出すという手法であればYouTubeも見られるわけだ。
栄燿智慧屏と多くの華為智慧屏のモデルにはファーウェイ傘下のHiSilicon製SoC「鴻鵠(Honghu)818」が、有機ELモデルの華為智慧屏にはOLED向けに特化した「鴻鵠898」が搭載されている。
鴻鵠818も鴻鵠898も、28nmプロセスによる製造で、CPUがCortex-A73×2+Cortex-A53×2、GPUがMali-G51。鴻鵠898には6GBメモリー、128GBストレージが組み合わされる。独立したビデオデコーダーにより、静止画は64メガ、動画は8K/30fpsまたは4K/120fpsの処理が可能。また、動き予測と動き補償(MEMC)、HDR、超解像処理、ノイズリダクション、ダイナミックコントラスト強化、自動カラーマネジメント、ローカルディミングを含む7つの高度なプロセッシングテクノロジーを搭載し、映像を最適化するのだという。
ファーウェイのスマートディスプレーは、スマートスピーカーのように同社のスマート家電製品をコントロールできる機能がある。近年ファーウェイはスマートデバイスのラインアップを強化しており、最近栄燿(Honor)ブランドのほか、同社のスマートホーム用プロトコル「HiLink」対応製品が、50社以上から、照明やセキュリティや自動化製品など100製品以上リリースされている。
対応製品を充実させることで、いつ中国国外から突然サポートを切られても使えることになる。あるいは中国国内で他社製品がファーウェイ製品からの接続を切っても生き残れるようになる。「そんなことはないだろう」と思うかもしれないが、中国でネット大手が他社への接続を突然切るということはよくあるニュースであり、IoT製品とて自社エコシステムで固めることは正しい判断なのだ。
ファーウェイに対し圧力がかかっている中で、ファーウェイはそれでも使える新製品を提案してきた。それはただただすごいと言わざるをえない。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で、一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立」(星海社新書)、「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)、「中国S級B級論 発展途上と最先端が混在する国」(さくら舎)などを執筆。最新著作は「中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか? 中国式災害対策技術読本」(星海社新書、Amazon.co.jpへのリンク)
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