家庭の床のゴミを集める掃除ロボットは、すでに身近なロボットとして普及期に入っていると言える。しかし、同じ掃除でも公園などで働くロボットはまだまだ希少な存在だが、そんな掃除ロボットや芝刈りロボットを採用しているところがある。それが高速道路のSAだ。いったい、どのようなロボットなのかをチェックしてみたい。
7月6日、NEXCO東日本は、東北自動車道・蓮田SA(上り)への芝刈り機ロボット導入を記念する「発進式」を開催。蓮田市長や地元蓮田市のマスコットキャラクター「はすぴぃ」などが参加する前で、自動芝刈り機「グリーンパト」がお披露目された。
蓮田SA(上り)は、従来の場所から約2.5㎞東京よりに移転し、2019年7月にオープンした比較的新しいSAだ。移転にともない敷地面積は3倍以上になり、東日本エリアのSAとしては最大級のものとなった。駐車場が広いだけでなく、食事を提供する店舗も多い。さらには、敷地内に芝生を植えた散策スペースもたっぷりと用意されている。
「蓮田SA(上り)は東日本最大級のSAとなっていますが、その広大な施設や敷地の維持管理効率化のため、令和2年1月にトイレにロボット自動床面洗浄機を導入するなど、ロボット化の導入を進めています」と導入を行ったNEXCO東日本の担当者は説明する。
人ではなくロボットが芝刈りを行なうことで「管理コストの低減」「作業員不足への対応・安全確保」「お客様の安全確保」などのメリットがあるというのだ。
では、実際の芝刈りロボットは、どのようなものなのであろうか。まず、ロボットを開発・販売したのはスウェーデンのハスクバーナ社だ。チェーンソーなどを扱う農林造園機器メーカーで、数多くのロボット芝刈り機をリリースしている。今回、導入されたのは2020年1月に発売されたばかりの最新モデル「Automower(オートモア)435X AWD」となる。
この市販モデルに、NEXCO東日本のパトロールカーをイメージしたオリジナルのカラーリングが施されている。クルマということでナンバーもあり、その数字は「9374(クサナシ)」。蓮田市のマスコットキャラである「はすぴぃ」も描かれているなど、愛嬌も十分だ。ちなみに「グリーンパト」という名称は、蓮田SAを管理する、NEXCO東日本の加須管理事務所グループ内で応募のあった58の候補から選ばれたものだという。
ロボットとしての特徴は名称にもあるようにAWD(オール・ホイール・ドライブ)であること。つまり、4輪駆動だ。ボディー寸法は全長93×全幅55×全高29㎝、重量が17.3㎏。前後に分かれたボディーにそれぞれ2輪が備わっており、後輪がステアする。4輪駆動ということで、最大35度もの傾斜を上ることができるという。芝刈りは数mmずつ行ない、刈られた芝草はそのまま放置されることで芝の肥料となる。そのため刈った芝を捨てる作業が必要ないというのもメリットだ。
芝を刈るエリアは、地中5㎝ほどに埋設したワイヤーで区切られている。そのワイヤー内側を芝刈りロボットがランダムに動き回って芝を刈ってゆく。GPSの受信装置を使うことで、刈りムラができないように動くようになるという。具体的には、設置から2~4週間をかけて走行軌跡を記憶し、芝刈り対象エリアのマップを作成して、より刈りムラがないように動き回るのだ。
ちなみに人や障害物が近づくと、超音波センサーで検知し、衝突を避けるようにスピードを落とす。衝突したときは、すぐに止まって向きを変える。芝刈りのブレードは車体下の手の届きにくい場所に設置されている。フル充電で最大100分ほど稼働し、充電が必要になると自動で充電ステーションに格納されるのだ。充電ステーションは蓮田SA(上り)の駐車場横の散策エリアの端にあり、柵もなにもないため、間近で芝刈りロボットの作業を見ることができる。
作業中の芝刈りロボットの動きは緩慢だ。しかも、派手にカラーリングもされているし、作業音もある。その存在に気付かずにぶつかるという人はほとんどいないはずだ。動きは遅くとも、休みなく動き続けるために、その移動距離は意外なまでに大きい。カタログスペックでは、最大で1日に3500平米のエリアを芝刈りできるという。まさに働きモノだ。ここで芝刈りロボットが問題なく運用できることが確認できれば、さらにロボットの採用は広がることだろう。近い将来、街で働くロボットが普通になる日を予感させる「グリーンパト」であった。
筆者紹介:鈴木ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。