デスクサイドにジャストフィットする小型機
A80は、D/Aコンバーター内蔵のパワードスピーカー。幅140×高さ255×奥行き240mmとコンパクトなボディーに、振動版素材やアルミ合金を用いた11.5cmウーファーとリボンツィーターを各1基搭載する2ウェイ機だ。18mm厚MDF材のキャビネットはチーク調の突板仕上げで、どのようなインテリアにもマッチするだろう。
サイズも一般的な22~23インチのHDディスプレーの横はもちろんのこと、13インチのノートPCの両サイドに置いてもちょうど良い大きさといえる。脚部には硬質ゴムの丸脚が4個ついているので直置きしても問題はない。さらにニアフィールドリスニング(近接視聴)用にスポンジ製の置台が付属し、仰角をつけての使用も可能だ。
ツィーターにリボン型を使っているのが特徴のひとつ。リボンツィーターは振動板がきわめて軽く、電気信号から振動へとエネルギーが変換される際のロスも少ないので、微細な電流の変化、つまり高域の再現性に秀でている。AE1はマグネシウム合金製ドーム型ツィーターを採用していたが、その後に誕生したAADからリリースされているコンパクトモニタースピーカー「7001」ではリボンツィーターが採用されていることから、フィル・ジョーンズはリボンツィーターが小型スピーカーに適していると考えているのだろう。AADのホーム用スピーカーはドーム型ツィーターを採用していることから、A80は単なるPCの横に置くスピーカーではなく、DTMをはじめとする音楽制作におけるニアフィールドモニタースピーカーとしての利用も視野に入れた設計といえそうだ。
端子類は右チャンネル側の背面に用意。2系統のアナログ入力のほか、光デジタル入力(TOS-LINK)、そして残念ながらDSDには対応していないものの、サンプリングレート192kHzまで対応するUSB入力を備えており、エンクロージャーにはハイレゾマークが貼られている。USBオーディオドライバーは定評のXMOS。Windows OSの場合は専用ドライバーを組み込み、macOSは接続するだけでハイレゾ再生が楽しめる。またBluetooth受信用としてaptXに対応するQualcommのチップセットも搭載している。
低域と高域のトーンコントロールも用意されている。この手のイコライザーはドラスティックに効くものが多いが、A80の可変幅はプラスマイナス3dBと、あくまでルームアコースティックの補正用程度。もし「さらなる低域が欲しい」という方には、サブウーファー出力を用いて、サブウーファーを追加することができる。
このようにシステム拡充ができるのもA80の魅力である。コントロールパネルの上には、風切り音の低減に配慮したバスレフポートが設けられている。使いこなすうえで、壁に密着しての利用は避けた方がよいだろう。
パワーアンプ回路は、TI製のTAS5754というデジタル入力対応クラスDアンプを2基搭載。ウーファーとツィーター専用に回路は分けられており、ブリッジモードで接続しているようだ。出力はウーファーが40W+40W、ツィーターが10W+10Wと必要にして十分。
スピーカー内部配線には、ハイエンドオーディオでは知られた存在である米トランスペアレントのケーブルを採用。パワーアンプ回路とスピーカーユニット間は圧着端子を使わず、ハンダ直付けという念の入れようだ。左チャンネルの背面に、誇らしげにロゴが取り付けられている。ちなみにトランスペアレントのケーブルは、USBケーブルのTRUSB 1 (1m)ですら税抜6万9000円で、フラグシップのスピーカーケーブルになると超高級車がゆうに買えるほど高価なもの。実際に内部配線材に使われているのは、そこまでの高価なグレードではないだろうが、そのようなメーカーのケーブルが使えるのもフィル・ジョーンズの名が知られた存在ゆえのことだろう。右チャンネルと左チャンネルは付属のDINケーブル(長さは3m程度)で接続する。